僕がセガに在籍している間に発売されたので、確か社内テストプレイ筐体で遊んだことがある。
たしかAM3研(当時)のゲームなので、僕はちっとも知らないです。
なのになぜ書くかというと、Twitter でジュラシックパーク(1994)の話題が出ていて、そこで参考にされたページを読んだから。
このページ見ると、ガンシューティングとして「やりがいがない」という評価。
理由として次のような説明になっています。
シューティングゲームの醍醐味と言えば?
ハイスコアにタイムアタック…様々あるが、その答えの前提にあるのはノーダメージやノーコンティニュー、すなわち ワンコインクリア ではないだろうか。
(中略)
だが、この「ジュラシックパーク」というゲーム
どう足掻いてもダメージを回避出来ないポイントが存在する。
それも一カ所、二カ所ではなくいくつも。
敵の攻撃力自体はそれほど高くないものの、1Pの場合は 明らかにこちらを殺しに来てるとしか思えない数の敵が押し寄せてくる 上に、攻撃を回避する手段は存在しないため、ワンコインクリアは 不可能。
これは紛れもない事実です。その意味では、残念ながらガンシューターの人から「つまらない」と言われても仕方がない。
もう一つ、上のページにも書かれていますが、ジュラシックパークは「レールチェイス」というゲームが元にあります。
レールチェイスのゲームシステムで、当時話題の映画とタイアップしたのがジュラシックパーク、と考えていい。
じゃぁ、そのレールチェイスの評価はどうかというと、こんなページがありました。
アーケードゲームでの醍醐味、1コインクリアが絶対にできないという鬼畜な難易度…というか致命的な欠陥。1人プレイだと反対側の端まで照準が届かず、敵を必ず撃ちもらす。
絶対クリアできない、という点を除いて考えてもゲーム自体の難易度は半端ではない。兵隊は早めに始末しないと勝手にダメージを受ける(ビーストバスターズと同じ)。しかし1回しか攻撃しないので大したことは無いと思いきや、これが面が進むごとに大量に出て来て、ひどい時には2人プレイでさえも捌ききれない勢いとなる。しかも時によっては障害物や、爆弾などと重なって余計回避不能なことになることがしばしば。
酷評されています。
実際、どちらのゲームもゲームが好きな人の間での評価は低いですし、僕も社内テストで遊んだ際に「面白くないゲーム」という印象でした。
でも、レールチェイスは評価の高いゲームで、後に2などのシリーズも出ています。
(これも社内で遊んだ覚えあり)
ジュラシックパークもレールチェイスの人気があったから作られたゲームで、やはり結構高評価だったはず。
ここでいう「高評価」というのは、ゲームマニアの評価じゃないです。
マニアからの評価は、上に挙げた通り散々なもの。
でも、ゲームっていうのはマニアだけの文化じゃないです。
そして、後々まで語るのはマニアだけです。
だから、誰かが記録しておかないと、後に「評価が低かったのになぜか繰り返しシリーズが出た作品」とされてしまう。
これが、自分が一切かかわっていないし、開発過程を見てすらいないのに急に記録しておこうと思った理由です。
レールチェイスの宣伝チラシがネット上にありました。
裏面の説明を読むと「アベック客やグループ客をターゲットとした」という文章から始まります。
下の方にも、大きめの赤い文字で同じことが書いてあります。
ジュラシックパークの宣伝チラシも、同じサイトにありました。
ここにも「カップルで楽しめる2P同時プレイ」「カップルやグループ客のリピート性を高める」と書かれています。
チラシに明記しちゃうくらい、アベック・カップル狙いです。
当時はゲームセンターは「誰でも遊びに来られる明るい場所」を目指していましたし、実際デートでゲームセンターに来る人もいました。
でも、ゲームセンターに来ても実は遊べるゲームが少ない、というのが問題だったのね。
当時の人気は対戦格闘。もちろん、カップル共にゲーム大好きなマニアだというのなら、二人で格闘ゲームやってもかまいませんよ。
でも、先に書いたように「誰でも遊びに来られる」場所を目指しているのだから、彼はゲーム好きでも、彼女はそうでない、という場合のほうが多かった。
ジュラシックパークが狙っているのは、こうしたお客様。
先に書いた通り、初めて遊んだときは「面白くないゲーム」という印象でした。
たしか周囲にそう言ったんじゃないかな。
そうしたら、その時一緒にいた企画の先輩が「このゲームは、狙ってこうしているからこれでいいんだよ」と理由を教えてくれました。
▼ゲームが好きな人は、上達によって「長時間遊べるようになる」ことを喜ぶ。
でも、ゲーム初心者は、激しいゲームを長時間遊ぶと疲れを感じる。
だから、短時間に楽しさを凝縮し、プレイ時間は誰がやっても同じ程度、という方がいい。
▼「ゲームを遊んだら面白かった」と感じることが重要で、上手下手はどうでもいい。
だから、激しく敵を撃ちまくる、という「体験」が中心で、敵からの攻撃を相殺するとか避けるといった概念はなくていい。
ゲームの上手下手に関わらず、ゲームオーバーになる地点も大体同じ。
▼ゲームが上手な彼氏だけプレイが続いて、彼女は隣で見ているだけ…という状況は、見ている側も遊んでいる側もつまらない。
だから、プレイヤーごとのライフとかはなくて、一蓮托生。終わるときは二人同時にゲームオーバー。
(普通のガンシューでは、プレイヤーごとに「ライフ」があり、なくなるとゲームオーバー。
しかし、このシリーズでは二人共通なので、自分のあずかり知らない理由でゲームオーバーになる)
▼こんな内容だから、1P側と2P側で「難易度」が違うのも当然。
2人同時プレイの場合、理想的には2人が対等な立場であるべきだが、このシリーズは2P側が極度に優遇されている。
ゲームっていうのは、達成すべき目的があって、その目的に立ちはだかる障害があれば成立する。
…これは僕の持論なのだけど、そう思っています。
その観点でいうと、実はジュラシックパークやレールチェイスは、ゲームではない。
ゲームなのだから「ゲームオーバーにならないこと」を目的だと考えると、1コインクリア不可能、つまり絶対に目的を達成できないのでは、ゲームとして成立しない。
でも、先輩の話をきいた上でこのゲームを「再分析」すると、目的の「読み取り方」を勘違いしていたとわかります。
レールチェイスは「レール」の名前の通り、ジェットコースターなのです。
デートで遊園地に行って、カップルでジェットコースターに乗る。それを気軽に街角のゲームセンターで体験させてくれるのが、レールチェイスです。
だから、遊園地のジェットコースターに「ゲーム性がない」と怒る人がいないように、レールチェイスにゲーム性を求めることが間違えている。
もちろん、ゲーム風の味付けはありますよ。
でも、それは「ゲームを遊んでみたい」という、ゲーム慣れしてない彼女に満足してもらうためのもの。
つまり、「彼女の接待」がゲームの目的です。ゲーム自体は手段にすぎず、目的ではありません。
だから、「ゲーム風」ではありますが、マニアが喜ぶようなものではないのです。
誰が遊んでも同じあたりでゲームオーバーとなってしまう、というのも、ゲーム慣れしていない人には激しい展開が続きすぎると疲れてしまうから。
ちょっと物足りないくらいでゲームオーバーにすると…もう少し続けたい、と彼女が言って、彼氏が財布を出してコンティニューするでしょう。
どんなに下手な人でも、一定時間は遊ばせてくれるゲームなのだから、お金を出すことにも安心感がある。
たった 100円の追加投資で楽しい時間を共有できるというのはカップルにとってうれしいことですし、収益が上がるお店にとってもありがたいこと。
無限にお金がかかるんだったら彼氏にとっても痛い出費ですが、ゲーム自体にはエンディングがあるため、投資額の上限も見えています。
つまり、誰もがうれしい構造。
これが、このゲームが高評価で、シリーズが続いた理由です。
残念ながら、現在はテレビゲーム文化は下火だと思っています。
デートコースにゲームセンターを組み込む人もあまりいないので、こうしたゲームは出てこなくなった。
でも、「文化」を維持するには、多様性こそが重要だと思っています。
特に、ゲームは遊びなのだから、皆が同じ方向を向かない、遊び心こそが一番大切。
すべてのゲームが「マニアが満足する構造」を目指すようになってしまったら、それこそ文化の終焉です。
ジュラシックパークのようなゲームが「つまらないゲームだった」というマニア目線だけで語られることのないように、この記事を残しておこうと思います。
#つまらない、と語る記事を揶揄するものではないです。
マニア目線で「つまらない」という事実を残しておくのだって大切。
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