ちょっと思うことがあったので、政治思想的な(?)ことをつらつらと。
多分、読んで嫌悪する人もいるとは思いますが、「臭いものにふた」で済む問題ではないので、深く考えないといけない。
僕の主張と違う意見を持っても構いません。というか、むしろどんどん違う意見が世に出たほうがよい。
「世の中がもっと多様性を持つこと」が重要だと思っています。
▼第1。LGBTについて。
もう10年以上前、2003年に、「性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律」というものが作られています。
性同一性障害、つまり、生物学的には男だけど心は女性、生物学的には女だけど心は男性、というような方に対する法律。
おかま、おなべ、ニューハーフ…などなどの言葉で呼ばれることもありますが、ここではあえて「第三の性」と書かせてもらいます。
さて、日本の憲法では、男女平等の権利が認められています。
しかし、これは「男女」という2つの性についてのみで、「第三の性」を想定していませんでした。
法律制定上の「穴」であり、第三の性は平等の権利を有さないのです。
一方、法律は男女のみでなく「すべての国民が」平等の権利を持っていることも謳っています。
第三の性が平等の権利を持たない、というのは憲法違反の状態でした。
そこで作られたのが前述の法律です。
男女のいずれかしか想定していないことによる不都合があった際、この法律による権利が発動し、「特例」を生じさせることができるようになっています。
ここでは、「性同一性障害」としています。
先に書いたように、生物学的な性と自認する性が一致しない状態。
ただ、実際には「男・第三の性・女」だけでなく、この間は無段階のグラデーションです。
この際、「生物学的な性と、自己認識する性」だけの問題ではなく、さらに「恋愛対象とする性」という要素が加わります。
最初に、一般的と思われる定義を挙げておきましょう。
生物学的な男は、自分を「男」と認識し、恋愛対象に「女」を選ぶ。
生物学的な女は、自分を「女」と認識し、恋愛対象に「男」を選ぶ。
これが世間一般の「男と女」の認識です。
でも、「 」の部分は、実は自由に入れ替え可能で、入れ替えると様々な「第三の性」が作りだせます。
まず、恋愛対象はさておき、「自己認識が生物学的な性と異なる」場合。
先に書いた「性同一性障害」ですが、トランスジェンダー(性を超えたもの、の意味)と呼ばれます。
次に、生物学的な性と自己認識する性が同じ場合。
男だけど、恋愛対象に男を選ぶ人はゲイと呼ばれます。
女だけど、恋愛対象に女を選ぶと、レズビアン。
ゲイとレズをまとめて「ホモセクシャル」と呼びます。
日本ではホモと言う言葉が誤用されてきた歴史がありますが、今は詳しく扱いません。
恋愛対象の枠は実は「男も女も」というのもありです。この場合、バイセクシャルと呼ばれます。
これ、「性癖」だと思っている人も多いのですが、性癖とは違うので注意。
性をどのように自己認識しているか、という問題、つまりは性別の一つです。
「男だけど心は女性で、女性なので当然男が好き」の場合は、どう扱うのでしょう。
すみません。僕がこの分野にそれほど詳しくはないので、あまり細かなことになるとわかりません。
先に書いた通り、生物学的な性と自己認識が異なるので、トランスジェンダーではあるのですが、この中の区分もさまざま、ということ。
性別って、単純に分離できるものではないのです。
レズビアン・ゲイ・バイセクシャル・トランスジェンダー。
この四つをまとめた言葉が、LGBTです。
先の法律では「性同一性障害」、つまりTの部分のみを扱っています。
しかし、先に書いた通り性別は単純に男女にのみ分けられるものではありません。最近は「男女に単純に分けられない人々」をLGBTと総称するようです。
LGBTは、人口比にして 5% 程度はいるという調査があります。
人口比 5% ということは、学校でいえば「クラスに1人は必ずいる」ということです。
4種まとめて5%ですから、細かな分類をすれば圧倒的少数ですが、無視できない数だと言えるでしょう。
実際、いじめや不登校の理由としてLGBTが報告されているケースがあります。
文部科学省も問題意識を持っており、学校の現場でLGBTについての教育がなされることが望ましい、と考えています。
2013年には法律が作られて10年目ということもあり、大規模な調査が行われたようです。
この結果が2014年夏ごろにはまとまり、報じられていたようですが、僕は最近知りました。
結果は、残念ながらほとんどの学校でLGBTに対する取り組みは行われていない、とのこと。
…まぁ、ここはわからないでもない。僕が先生の立場なら、急にLGBTに対する意識を啓蒙するような授業は行いにくいでしょう。
でも、「LGBTへの差別を助長するような」教育が行われているような例が非常に多く見つかっている、というのは問題です。
そして、その問題の原因としては、教師側の理解不足が挙げられています。
勘違いしないでほしいのですが、教師が悪い、というのではないです。
教師だって僕らと同じ、普通の大人。先生だから何でも知っていろ、なんて無理な話。
つまり、解決方法は教師の意識改革ではなく、「すべての人が、もっとこの問題を考えること」なのです。
これが、今日の日記を書き起こした理由。
前置きだけでずいぶん長くなりましたが、ここからやっと本題に入れます。
▼第2。ティム・クック Apple CEO
ティム・クック Apple CEO が、ゲイであることをカミングアウト(秘密の告白、の意味)して話題になっています。
先にLGBTの話を書きましたが「G」ですね。
日本ではLGBTへの理解が低いことを書きましたが、実は世界的にみるとLGBTへの理解が「ある方」です。
日本では、LGBTの人がテレビに出ても…嘲笑の対象とする、という浅ましい部分はありますが、その程度です。
(いや、これで悩んでいる人は多いので、その程度、なんて軽く言ってはならないのですが)
美輪明宏さんとか、池畑慎之介☆さんあたり、笑われるわけでもなく、十分な「自分のポジション」を持っておられる。
それに対し、欧米…ユダヤ教・キリスト教・イスラム教(この3つは共に、旧約聖書を原典とします)の支配権では、LGBTは「絶対悪」です。
神は世界を作る6日目に男と女を作り「産めよ増やせよ地に満ちよ」と命じたのです。
ということは、男女以外の性であるLGBTは、神の命令に背くもの。悪魔の所業です。
日本では「嘲笑」程度で済みますが、欧米圏では激しく嫌悪され、社会から排斥されます。
もちろん、欧米にもLGBTへの支援団体はいます。
しかし、個人レベルでは支援が可能だとしても、社会的になると、難しいのが現状。
LGBTの人間を雇うような企業があれば、保守系の消費者が反発し、不買運動を起こします。
これは、LGBTをカミングアウトすれば、もうどこで働くことも出来ず、貧困層におとされ、生活もままならないということを意味します。
ティム・クックは、数年前からゲイであることを隠してはおらず、同性愛者向けの雑誌などでは「重要人物」として、3年連続で表彰されていたようです。
とはいえ、正式なカミングアウトとなると、社会的な影響は別。
これにより、LGBTへの差別が少しでも減れば、と考えているようです。
僕が見た限りでは、国内のネット上の反応で、次のようなものがありました。
「性癖は個人の問題なのだから、わざわざ公表することに疑問を感じる」
「スカトロマニアやSMマニアの公表でも勇気があると讃えるのか」
その意見、非常に良くわかります。
この3年間、隠すこともせず、しかし公表もしていなかったティム・クックも同じ気持ちだったのではないかと思います。
ただ、ティム・クックは今回のカミングアウトで、「性癖」の話をしているわけではない。
先に書いたように、LGBTは、自己の性別をどう認識しているかという部分の問題です。
「性別」であって、「性癖」ではない。
ゲイと公表したのは「自分は男だけど、男しか恋愛対象に見られない」と言っているのであって、実際にセックスまで行うかどうかは別問題。
そんなもの、それこそ個人的な問題なので、わざわざ言う必要もないでしょう。
もちろん、ゲイの人間だって「男を恋愛対象とする」だけで、無理やり犯すような犯罪はしない。
つまり、恋人にでもならない限り、普通に接していて構いません。社長がゲイだからと言って会社が何か変わるわけではない。
…とはいえ、ティム・クックは用意周到に「社長がゲイであることで何かを変えよう」としている節もありますね。
LGBTであることがばれて働けなくなった人でも、優秀な人材であれば採用すべきだ、という考えがあるようです。
そうすれば、会社にとって利益となります。
一方、キリスト教保守派が反発してアップル製品の不買運動でも起きれば、会社に損害を与えた人物として株主訴訟になるかもしれません。
非常に危険な賭けに出た形ですが、そうしてでもLGBTに対する現状を変えたい、という気持ちが勝ったのでしょう。
▼第3。SMバー。
閣僚の一人がSMバーに出資していた、という問題で世間を騒がしています。
閣僚の問題は、この際おいておきます。
当初は政治資金の一部で出資を行う「投資」を行っていたのではないかと疑われたのですが、この疑惑は晴れたようです。
また、当人は単純に出資を行っただけで、そういう性癖は無い、とのこと。まぁ、性癖があっても構いませんが。
問題は、この問題を追及した側の議員の言動でした。
SMバーを「口にするのもけがらわしい場所」と表現したことが、少し問題となっています。
性癖は個人の自由です。
公衆の面前でセックスするようなことがあれば問題がありますが(公衆猥褻なので、閣僚の順法精神としても責任を問えるでしょう)、そうでない限り、夜の密室でどのような行為を営もうと許容されるべきでしょう。
しかし、追及する側の議員は、論理を超えて「口にするのもけがらわしい」という言葉で表現しました。
自分の理解できないものは許せない、という態度でした。これが問題視されています。
これ、LGBTの問題と別物ではない、と思うのです。
一般的な認識としての「男女」の性を超えた人々を、理解できないからと排除しようとする。
もっといえば、LGBTに限らないですね。自分が理解できないものは排除する。いじめ問題です。
「理解しよう」なんてきれいごとは言いません。
僕だって、最初にLGBTの説明する中で、「詳しくないので知らない」ってあっさり書きました。
当事者じゃないから理解なんてできてません。
でも、「理解できないから排除しよう」とは思わない。
…いや、この言い方は正確ではないです。非常に微妙な問題なので詳細に書きます。
残念ながら、身近にLGBTの方はいません。
もしかしたらカミングアウトできないだけかもしれませんが、実際に近くにいないので「思わない」とは軽々しく言えません。
「思いたくない」が正確な表現です。
僕は、男女平等論者です。平等論者にもいろんな人がいますが、僕は「性差で差別があってはならない」と考えています。
ならば、LGBTという第三の性であっても、差別があってはならない。自分が差別するようなことはしたくない、と強く思います。
(もし、僕に対して本当にカミングアウトされたとしたら、驚くかもしれません。
その驚きで傷つけてしまうのではないか、という心配はありますが、それでも差別はしたくないのです)
▼第4。女性の権利。
さて、男女平等論者、という話を出したところで。
現実問題として、現在の日本では女性は差別されていると思います。
差別されているから、その対価として「優遇」しないといけない場合がある。誤差補正として逆方向に強く振れさせるのですね。
でも、これをやると男が「逆差別だ」と言い出すことがある。
僕は、これは許容しています。
実際問題として女性に不便があるのだから、一部が逆差別になったとしてもまだ女性不利。
女性の権利がもっと認められたときには、もちろん逆差別部分は無くさねばなりません。
でも、それはもっと先に考えればよいこと。目の前の「当面の対処」としての逆差別は許容する、という意見です。
現代社会は男を中心に回るように構築されました。
数百年かけて男中心に作ったものを、女性にも門戸を開こう、と始めてからまだ数十年しかたっていない。
男と同じように女を働かせる、というのが平等なのではないです。
女は男よりも一般的に筋力が弱く、背が低い…格闘に向いていない、という事実がある。
この事実を元にすれば、夜遅くまで女性を働かせるのは危険で、早く家に帰さないといけない。
すると「女だけずるい」という話になる。
でも、実は女でも「もっと働きたいのに、男だけ残業が認められてずるい」と思っている人もいます。
そして、夫婦共働きの場合、女が先に帰ることになるので家事を全部任される、なんて話にもなる。
女だから家事をするというのは困った偏見で、男だって家事をする方がいい。
#この部分については「男が全部やるべき」と思っています。先に書いた逆差別なのだけど。
実は、現状では「女がやるべき」と言う教育があって、男は家事のやり方もわからない部分がある。
全部やるつもりでも最終的に女に頼らねばならない部分が出てきて、やっと半分分担できる、ということになりやすい。
(一応、兼業主夫のつもりでやっている経験談)
さて、男も平等に家事を、となると、女性だけ「残業しない」のではなく、男性も残業しないが当然です。
…実のところ、残業が常態化している状況っておかしいよね。
普通は帰る、という前提があるから「残」なのです。みんな夕方5時で終わりにしようよ。
▼まとめ。
最近の時事ネタ3つ+αで話をしましたが、すべて問題は繋がっていると考えています。
男女平等だ、と思うのであれば、性別の延長としてのLGBTも認めないといけない。
LGBTを嫌悪する人は、男女平等とLGBTの整合性をどうとるか、自分でも考えてみてください。
まぁ、見直した結果、男女平等に懐疑的になったりしても、僕は構いません。
僕は男女平等論者ですが、それ以上に「多様性を認めたい」と思っています。
男と女とL・G・B・T…さらに「それは許せん」と主張する人も、全部許容できる社会がいいと思う。
言っていること矛盾しているかもしれないけど、世の中なんて矛盾だらけ。
皆が「許容できる」落としどころがあるといいな、と思っています。
思った以上の反響だったので、翌日に追記を書きました。
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