2011年05月09日の日記です


しんぶんし  2011-05-09 13:06:17  その他

購読する新聞を変更した。


震災以来の日記に、いろいろと強い主張を書いているが、これは購読していた新聞の論調に対する反論、という側面が半分くらいあった。


別に言論の自由を阻害したいわけではない。

新聞各社にだって論調はあり、その論調が自分の考えと食い違ったとしても、怒らない。



でも、余りにも事実と違う報道がなされているのは、害悪だ。

明らかにおかしな記事を読んだ場合、僕はネットで別の新聞社の記事も調べ、裏を取るようにしている。

ところが、他の新聞社も同じ報道をしていたりする。


この場合、「自分が間違えていたことに気づいた」のなら、単に恥ずかしい話ですむ。

ところが、新聞各社の報道内容が同じであるにもかかわらず、より「一次情報ソース」に近い部分での話と食い違っている場合は、ちょっと問題がある。


通常はこのようなことは起こらないのだが、震災後の1ヶ月は、情報が錯綜していて頻繁に起こった。


地震や原子力をはじめとする発電方法、電気送信システムの仕組みなどは、どちらかといえば理工学系に属する話題だ。


ところが、新聞記者のほとんどが自分が文系であることを標榜しており、「理系の話はわからない」と理解の努力もしようとしない。

結果として、紙面は「政府がそういった」とか「偉い学者さんがそういった」というような伝聞記事ばかりになる。新聞社に対して求められている「情報の検証・編集」はなされない。




注:理系・文系というわけ方は無意味だが、世の中には、自分をそのような型で分類しようとする人間が多い。

…それどころか、自分の理解がおよばないことの言い訳にする人が多い。

そのため、あえて「新聞記者は文系」という文脈で書いた。

本当は、文系だから理解できない、のではなく、怠惰で(もしくは取材で忙しいのを言い訳に)理解の努力をしていないだけだ。

実際、震災直後は新聞記者は忙しかったかもしれないが、いつまでもそれを言い訳にしているのは、情報を扱うプロとして恥ずべき行動だと思う。





先に書いたとおり、ネットを使って震災後しばらくの記事を比較検証した結果、自分の購読していた新聞の報道姿勢は、残念ながら「比較的ひどい方」だった。


…どこの新聞かは、あえて言わない。

好きで読んでいる人もいるだろうし、「ひどい」と気づいていないなら、知らないままの方が幸せだ。


この新聞を、以降「A新聞」と書くことにする。



比較的、と書いたのは、他にもひどい新聞社があるから。先に書いたように、自分の購読していた1紙がひどいだけなら、黙って解約して終わりだが、同様の新聞が数社あったために、普段は日記に書かないような強い論調の記事を書いたのだった。



で、震災後1ヶ月を目処に、新聞を切り替えることにした。

ここまでにある程度記事比較はできていたので、比較的まともだと考えた新聞社を購読することにする。

以降、購読を決めた新聞を「B新聞」と書くことにする。



まず、B新聞のWEBページに行ってみたところ、1週間無料で試読できるらしい。

ただし、朝刊だけ。とりあえず申し込む。


そしたら、すぐに家に販売員が来て、「とりあえず」夕刊を置いていった。対応が早い。

約束どおり、翌日からは朝刊だけだったが、1週間を過ぎても届き続ける。


1週間で販売員が来て、購読を迫られると思っていたのに。




そこで、B新聞の購読を本格的に決める前に、それまで購読していたA新聞を解約することにする。

解約を販売店に告げるのは気が重い。実は、震災直前に1年間の延長契約をしてしまっているのだ。


延長時に「契約とはいっても、何かあれば解約できますから」といわれていたが、解約を渋られる可能性もある。

そこで、ネットで解約できないか、検索。



…ここで知った。震災後、A新聞を解約する人が急増しているようだ。


その解約理由のほとんどが「関連会社の震災後の態度が気に食わないから」。



関連会社を詳しく書くと新聞社名もバレるので、あえて書かない。

でも、新聞の報道内容と関係なく、関連会社にムカついたから新聞を解約する、というのも、新聞社が少しかわいそうな気はする。

これも風評被害の一種ともいえる…のか?


もっとも、実際に解約されて困るのは「新聞販売店」なので、僕のように記事内容に憤りを感じて解約するのも、結果としては同じことかもしれない。


(願わくば、解約が急増している事を受けて、新聞社が姿勢を正してくれると良い。たぶん、僕と同じように「報道内容に問題を感じる」ために解約する人もいるだろうから。しかし、そのくらいの良い姿勢があれば、最初から問題のある報道はしないはず。きっと、社内的には関連会社のせいにして終わりなんだろうな…。)




ネットで解約はできないとわかったので、販売店に電話をかけ、解約を告げる。


理由を聞かれた。報道内容に問題を感じる、と答える。

料金は引き落としで払っているので、区切りのよいところまでは届けてもらいたい、と伝えると、区切りの日付については、調査して折り返し連絡する、といわれた。



ともかく、解約できそうだとわかったので、新しい新聞の購読も申し込んでしまう。

販売店の人が来てくれると思っていたのに、連絡先もわからない。


仕方なく、ネットで購読申し込み。この場合、4日後からの購読しか申し込めないらしい。

もし、明日から今までの新聞が来なくなったらどうしよう。



今までの新聞販売店からは、翌日連絡あり。

月末で区切りだったから、4月いっぱいまで届けます、とのこと。


で、「あと1ヶ月か、2ヶ月でいいから購読を続けてもらえませんでしょうか」との懇願。

解約が多くて困っているのだろう。でも、申し訳ないがここはキッパリと断る。



とりあえず、新聞が読めないブランク期間なしに解約できてほっとした。

そして、しばらく読み比べられる期間ができた。




これを書いている今は5月であるため、既にB新聞しか届いていない。

しばらく読み比べられる期間があったので評価しておく。



A新聞は、震災以前からも、科学記事が余りにも弱いのが気になっていた。

また、1面コラムの内容が以前からひどかった。1面コラムは、新聞の顔、社説と同じくらい大切なのに。


もしかしたら、この新聞社は1面コラムは重視しておらず、新人社員の練習とかに使っているのかな?

…と思った時期もあったが、そうではなかった。ベテラン記者が一貫して書いており、新聞の広告などでも時々引用するほど「新聞の顔」として使われている。


でも、その内容が残念至極。読むといらいらするレベル。論理性がまるでなっちゃいない。



先の日記に書いたのだが、A新聞は、記事を「新聞社の記事」として一貫して書いている。

個々の記事を誰が書いた、と言うような署名は、基本的にない。


それが故、先に書いた震災直後の報道のように「Twitter は善でメールは悪」と言うような論調の記事を一度載せてしまうと、その後の他の記事もその論調で統一されてしまったりして、報道姿勢に問題があった。


つまり、科学記事が弱いこと、コラムの論理性がおかしいこと、記事の論調を無理に統一しようとして破綻することなど、全て含め言えばA新聞は「論理性がおかしい」のである。





新しく購読を始めたB新聞は、個々の記事が署名記事で、「新聞社の主張」としての記事は少ない。

(一面トップ記事や社説は、新聞社の主張として記名しないようだ)


個人の裁量をかなり許しているようで、すぐ隣にある記事が、同じ事を違う視点から論じているために、整合性が取れていないこともある。

震災後は各界の有名人が今後の日本について論じる連載を行っているようだが、ここの論調も全くバラバラだ。それぞれがそれなりに根拠のある事を言っているので、読む方に知識のベースが無いと混乱することは必至。


でも、個々の記事の中では論理性はしっかり取れているし、バラバラな事を書いているのも「切り取られた事実」であることがわかるようになっている。


ただ、記事が切り取られた事実であるなら、全体がどうであるかを想像するのは読者の役目。

それができないと、記事ごとの内容がバラバラで、おかしいように見えてしまう。



ここら辺、好みが分かれるところなのだろう。

僕としては、整合性を取るために歪んだ情報を伝えるよりも、いろいろな視点で書かれた記事があるほうが良いと思っているので、これでよい。




もともと、B新聞を購読するに当たり決め手となった、科学記事に対する正しい報道姿勢は輝いている。


たとえば、毎日のように全国の放射線量が報道される。


A新聞では、「最新の」放射線量が明示される。まぁ、これでも十分な報道だ。

B新聞では、最新に加えて、過去2日間と、「震災以前の標準値」が明示される。


ただでさえ限りのある紙面で、大きな表を掲載し、しかもそのほとんどが数字の羅列、というのは、見るのも嫌になる人もいるかもしれない。

でも、値だけ載せても意味が無い。その値が「異常かどうか」を見極めるには、過去のデータもなくてはならない。「過去の新聞を引っ張り出せばわかる」ではなく、その場ですぐデータが見れることが大切。


この意味で、B新聞の方が、値の取り上げ方として正しい。


これは一例。他の記事でも、A新聞は科学的に何が重要かわかっておらず、報道としては正しいのだが、大事な部分を省略してしまったために、疑問が残ることが多かった。B新聞ではそのようなことが少ない。



一方、報道の速度は、B新聞の方が若干遅いようだ。

どうやら、編集方針として「十分な検証」がなされてからの報道を心がけているようである。


ここも、人によって好みが分かれるところ。

僕としては、速報はテレビやネットで良い。新聞は検証と編集を十分に行ってから報じるべきである、と思っている。




最後に書いておくが、この新聞、それほど評判はよくないようだ。だから、人に購読を薦めるものではない。


評判がよくない最大の理由は、やはり、「論調がバラバラ」なところにあるだろう。

事実を切り取り、できるだけフィルタも通さないで報道しているわけだが、それは「背景を知らない人には理解しにくい」ことでもある。

新聞を読むだけでなく、その「隙間」にあるものを自分で考えないと、論調がバラバラであることに混乱してしまう。


実のところ、この「混乱」は新聞のせいではなく、世の中は複雑である、という当たり前のことに基づいている。

でも、新聞を「なんとなく」読む大多数の人にとっては、余りにも不親切な編集方針である。これが不評の最大の理由と思われる。



元々不評なので、叩かれやすい。


震災直後の週刊誌では、記事内容が「他の新聞や週刊誌」と違う、と言う理由で叩かれていた。

(今まで購読していた新聞の、週刊誌の広告で見出しを見ただけだが。内容は、原発トラブルに対する論調を問題視するものだった)


実際、購読を決めるに当たり、その見出しのことも頭をよぎり、躊躇した。

しかし、ネットで記事を読む限り、記事内容が違った理由も「他のマスコミ各社より、科学的な素養のある記者が多いため」だという気がしたので購読に踏み切った。



ゴシップ中心の週刊誌で書かれたような「評判」を、どの程度の人が信じるのかわからない。


でも、震災から2ヶ月たって検証する限りでは、B新聞の報道内容が他の新聞社と違ったことは、問題なかったように思う。



原発トラブルに関しては、A新聞などでは、不安を煽るような内容が書き連ねられていた。

この原因の一つは、不勉強で放射線に対する知識がいないため、「記者自身が」無用に不安になっていたためだ。

しかし、しばらくたって記者も勉強した。それから風評被害を問題として、「実際には不安はない」ことを伝えようと努力していた。


B新聞はこれに対し、事故の内容は当然伝えつつ、科学記事に強い記者が多い事を活かして「不安はない」ことを全力で伝えようとしたようである。

とはいえ、全く安全とも言い切れないため、後に時間をかけて詳細な解説記事を載せ、「放射能を正しく恐れること」を啓蒙しようとしている。



A新聞が間違っているとは言わない。

何らかのリスクがあるときに、とにかくすぐ逃げろ、と言うことは間違いではない。

新聞を読む一般市民は放射線に対する知識を持っていないので、その視点に寄り添うことも必要だろう。


でも、B新聞のやり方も間違っていない。

妙な不安を煽るより、まず落ち着かせてから、正しい現状を把握させようとする、というのは良いやり方だ。




ところで、B新聞を叩いた週刊誌は…というより、週刊誌各誌は、不安を煽り続けた。

うがった見方だが、定期購読されている新聞と違って、週刊誌は不安を煽った方が売れ行きが伸びるからだ。

(人は、不安になれば情報を求める。不安にさせておけば、次号も買ってくれるだろう)


だとすれば、「不安はない」と断言するB新聞は週刊誌にとって邪魔な存在であり、叩きたくなる気持ちも理解は出来る。




もっとも、僕はこの「叩かれた時」のB新聞を直接読んでもいないし、叩いた週刊誌も読んでいない。

もしかしたら、叩かれるに値するような、もっと別の理由がある可能性もある。





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【通りがかりです】 具体名が書いてないのであれですが、私もそうです。最初は余震で手がいっぱい。原発など考える余裕もなく過ごしましたが、あとから深刻なんだなあと。その後社説で脱原発と決別をなんて書かれたのでちょっといが悪くなりまして、Aに変えました。前のYは気に入っていましたが、流石に堪えられないので。あなたも同じですか。 (2012-08-23 20:54:50)


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