IHについて
うちはオール電化にして、IHとエコキュートを使っています。理由は単純に「エコノミーだから」。別にエコロジーだとか思っていません。
利点も欠点もあるので、好きにすればいいと思うんですよ。でも、未だに十分に理解されていないのか、WEB上で間違った情報を良く見かけます。しかも、それが宗教論争のように、間違えた情報に立脚して論争になっている。
ここでは、少しでも正しい情報を知ってもらいたいので、使っているものの立場から情報を書かせてもらいます。
これが、現在購入を検討している人への「正しい導き」になればよいと思います。
最初はひどい内容だったのですが (^^; 自分でも整理しているうちに、怒りも収まってきて、なんとか見られる内容になったかな、というところ。
もしかしたら、ところどころで当初の「怒り」が残った記述があるかもしれません。ご容赦ください。
目次
IHの使い勝手
まず、論争で良く取り上げられるいくつかの点について整理しておきましょう。
だいたい、この3つの点に立脚して「だからIHは駄目だ」と主張する人が多いようです。
というわけで、ひとつづつ論理的に崩させてもらいます。
IHは火力が弱い?
イメージで話をしている人が居ます。電気コンロなんて火力が弱いに決まっている、と。
これはもう論外ね。電熱線ヒーターは確かに火力が弱いですが、IHはそもそもの発熱方式が違うので、同じ話だと考えているのが大間違い。
多少良心的な人は、卓上型のIHヒーターを購入して使ってみて、火力が弱い、と断じているようです。
ただ、その論点は、卓上型のカセットコンロは火力が弱いからガスなんて駄目だ、というのと一緒です。ブタンガス、都市ガス、プロパンガスを一緒にして論じたらおかしなことになるように、100V の卓上型IHと、200V の据え置きIHコンロを一緒にしてはいけません。
と、ここで公平を期すために、実際の「火力」を調査しておきましょう。
一般的なガスコンロは、1口 3600kcal/h 程度の熱量です。最近では、炎を内側に向け、鍋の底だけを集中して暖めることで効率を上げたタイプ(内炎式)もありますが、これだと 4000kcal/h 程度出ます。これに対し、カセットガスコンロは 2500kcal/h 程度です。
ガス業界の自主判断により、「すべての」ガスコンロに、温度センサーをつけることになりました。
炎の噴出口の中央にセンサーを設け、鍋に直接当てて温度を測ります。
これにより、鍋の空焚きなどによる火災を未然に防ぐことが期待できます。
しかし、内炎式では温度センサーに直接炎があたり、正確な温度が測定できなくなります。このため、内炎式は製造できなくなりました。
情報が遅く申し訳ありませんが、このページを作成した 2009年時点では、すでに内炎式の製造は終了していたようです。
(このページは、自分が家を立てた時点での知識を元に作成したため。最新動向の調査不足でした。)
以下の記述では内炎式について言及していますが、「IHの火力をガスと比較する」ことが趣旨であるため、このまま残しておきます。
IHの場合、普及初期は 2.0kW でしたが、普及期からは 3.0kW 以上のものが一般的になっています。卓上型は 1.2kW 程度。
…はい、単位が違うので比べようが無いですね。でも大丈夫。1W=0.86kcal/h という変換式があります。これで変換すると、IHコンロは 1.2kW = 1032kcal/h 、2.0kW = 1720kcal/h 、3.0kW = 2580kcal/h 、となります。
「なんだ、やっぱガスのほうが強いじゃん」と考えるのは早合点。このエネルギーのどれだけを、目的となる仕事(=鍋を熱すること)に変えられるか、という熱効率というものがあります。つまり、「無駄な光」や「無駄に室温を上げる」ことが少ないほうが、熱効率がよいのです。
IHの場合、熱効率はおよそ 90% 。ガスの場合、 40% ですが、内炎式では 56% 程度まで上がるそうです。この係数をかけて、それぞれのコンロの「火力」を比較すると次の表のようになります。
ガス | IH | |||
---|---|---|---|---|
スペック | 実効熱量 | スペック | 実効熱量 | |
卓上型 | 2500kcal/h | 1000kcal/h | 1.2kW | 928kcal/h |
据え置き | 3600kcal/h(通常) | 1140kcal/h | 2.0kW | 1548kcal/h |
4000kcal/h(内炎式) | 2240kcal/h | 3.0kW | 2322kcal/h |
「ハイパワー」なガスなら、「ローパワー」なIHに勝っています。卓上型でも、火力が弱いといわれるガスよりも、さらにIHのほうが弱いくらい。でも、「通常の」ガスコンロは「現在普及型の」IHに勝てない。
実際、ガス会社は比較の際に、好んで「最新型の」ガスコンロ(4000kcal/h=4.65kW)と、「旧型の」IH(2.0kW)で比較したがります。これだと「お湯を沸かしても同じか、ガスのほうが早いくらいの時間」になりますが、比較がフェアでないので注意しましょう。
上でリンクした「比較」のページが書き換わっていました。
旧ページでは、内炎式ガスコンロと IH 2.0kW でお湯を沸かし、その時間を比較して「ガスなら高火力」と結論づける内容でした。
どうやら、少し上に書いたとおり、内炎式が販売できなくなったため、内容を削除したようです。
ただね、IHを使った経験から言うと、3.0kW は湯沸しにしか使いません。火力が強すぎて、煮物では吹きこぼれるし、フライパンなどに使ったら熱で変形します。(変形させた経験済み)
通常使うのは 2.0kW で十分で、これでも特にハイパワーでないガスコンロよりも火力が強いのです。
ついでに書いておきましょう。ガス会社は「IHは3口、または4口同時に使用できない」ことを言いますが、確かにフルパワーでの使用は出来ません。過電流を防止するため、どこかのパワーがセーブされるか、使用できなくなります。
ただ、ガスだって全部をフルパワーで使用しようとすると、「元栓の太さ」が制限となって、全体の火力が落ちます。コンロのカタログなどを読んで、1口づつの最強火力の数値の合計と、全体を最強でつけた場合の数値を比較してみればわかります。
もうひとつ、料理文化の違いを理解しないで比較して「IHは弱い」と断じる人がいます。
これについては、勉強してください、としか言いようがありません。世の中、料理は中華料理だけではございません。フランス料理の「ストーブ」のように作られたIHで、中華料理の「ガスコンロでの」技法を使おうとすれば、うまく行かないのは当たり前でしょうね。
でも、それは中華料理が作れないということではない。中華料理の鉄人こと、陳健一さんもIHのほうが便利だと、お店でも全面的に採用しているのですから。
悪いのはガスとかIHとかいう「道具」ではなく、使う人の腕なのです。
IHはエコロジーではない
そうですね。僕はエコロジーかどうかはともかく、エコノミーで選んで買いました。
エコロジー、という言葉は曖昧で、人によって考えが異なるため、宗教論争のようになりがちです。そのため、まずは比較を可能とするための定義から入らなくてはならないのですが、これに関しては長くなるため、別ページにまとめました。
IHそのものがどうか、という話を離れた波及効果としては、IHは周囲の熱を上げにくい、ということがあると思います。
先に書いたように、ガスの仕事効率は 40% 程度。一部機種でしか採用されていない内炎式でも 56% です。余分のエネルギーは、一部は光に変わりますが、ほとんどが「部屋の空気を温める」ことに使われます。
夏場の台所が暑い、というのは誰しも経験したことがあるでしょう。最近流行の対面式キッチンだったりすると、ダイニングとキッチンの間に壁が無いため、ダイニングの室温まで上がることになります。
これをクーラーで冷やす、ということを考えると、無駄なエネルギーを使用することになります。