メーカー廻り(2)

いろいろな情報をあつめ、あーでもないこーでもないと考え、モデルハウスを見てはどこのメーカーにしようかと悩む…

そんなことを繰り返していたある日、ある住宅展示場の前で看板を出していた工務店が気になり、ちょっと入って見ることにしました。

もう夕方で仕事を終わる前だったようなのですが、心よく応対してくれ、パンフレットなどを多数くれました。


家に帰ってパンフレットを熟読します。どうやら、断熱性能にこだわった工法を得意とした工務店のようです。

ずっと「夏に涼しい家が欲しい」と考え、風通しの良い家を作ろうと考えていたのですが、このパンフレットを読んで考え方が変わります。


僕は、断熱性能は冬場に効果を発揮するものだと思っていました。断熱は冬の住みやすさを保証し、風通しのよさが夏の住みやすさを保証する。

その昔、吉田兼好は言いました。「家のつくりやうは夏を旨とすべし」と。これはつまり、暑い日本では夏に快適に過ごせる家こそがいい家だ、という教えです。

だから僕も、断熱などはそれほど必要ないと思っていたのです。


しかし、工務店でもらったパンフレットには、違うことが書いてありました。暑い日本だからこそ、断熱をしっかりしておきなさい。そうすれば、熱が家の中に入ってこず、涼しくすごせます。

もちろん家の中で発生した熱は、クーラーで外に出す必要があります。しかしこの場合でもクーラーは最小限のパワーでの運転になるので、風が冷たくて嫌だ、と言うこともありません。


目からウロコ、とはこのことでした。僕は涼しい家を求めていたので、冬のための断熱はそれほど必要ないと考えていました。しかし、断熱は夏にこそ重要だというのです。


後日、ふたたび工務店を訪れ、モデルハウスを見させてもらいます。

暑い日だったのですが確かに部屋の中は涼しく、クーラーをかけていることなんてまったく感じられませんでした。


これからしばらくは、すっかりこの工務店のとりこでした。

見学会があると言えば参加し、社長が書いたという本を借りてきては熟読します。


ただ、しばらくたったら欠点も判ってきました。

断熱性が非常に高いという硬質ウレタンフォームは、コンクリートのように音を跳ね返します。そのため、部屋の中にいると音が随分響いて気持ち悪いのです。

工務店社長は「コンサートホールのような残響音」と自慢していますが… 日常生活にそんな残響音はいりません。

さらに、残響が気になる時はグラスウールを壁にいれて吸音させる、と説明されました。

社長は、本の中で「グラスウールは石綿と同じで発がん性があり、健康に悪いから使ってはならない。だからうちは硬質ウレタンを使う」と言っているんですけど… そのポリシーはどこに行ってしまったのでしょう。


社長が本を書いた当時は、グラスウールの発がん性が疑われていたのも事実。しかし、その後グラスウールには発がん性が認められないとされ、世界的にも規制が緩められている。おそらく吸音材としてグラスウールを使う理由はそのためなのだが、だとしたら本の内容をどこかで訂正して欲しい。

工事現場を見学して見ても、社長が自慢しているほどには掃除が行き届いていません。

現場見学中に、グラスウールの防湿シートの切断後が閉じられていないのも発見してしまいました。(指摘したら「後でやろうと思ってた」と言われてしまいましたが…。すでに天井に押し込められていた部分なので、やり忘れていたように思います。社長の本にも書かれていましたが、防湿シートがしっかり閉じられていないと、カビの生える原因となります。この「うっかりミス」が怖いこともグラスウールを使わない理由だったはずだが…)

どうやら、社長の理念は非常に高いものの、それが末端まで届いていないようです。


一度は感心したのですが、これはちょっと…

かなり迷った挙句、結局この工務店はやめることにしました。しかし「断熱を真剣に考えた方がよい」という新たな指針を与えてくれたことには感謝しています。


この有名工務店が悪くてやめたわけではないので念のため。
 残響音に関しては、タペストリをかけたりして吸収している人も多いそうですし、音楽室を作って「コンサートホール」を楽しんでいる人もいるようです。

 また、理念が末端まで届いていないかどうかに関しても、僕がそう感じた、またはたまたまそういう現場があっただけで、ほぼちゃんと行われているのかも知れません。
 しつこいようですが、このページは「自分がどうメーカー選びをしたか」を書きたいだけで、特定の会社を非難したいわけではないことをご理解ください。


さて、「断熱性」という新たに生まれてきた評価軸を元に、今までに見てきたモデルハウスを見直してみます。実は、今までに見てきたモデルハウスは、印象に残った点などをノートにまとめてありました。

断熱性が優れているのは…三井ハウスとスウェーデンハウスです。

そういえば、収納が見たくてロフトに上がった時、他社のロフトや屋根裏は結構暑かった時でも三井は暑くありませんでした。あれこそが、断熱の力だったようです。


同時に、断熱について調べて見ました。

最近流行しているのは「外断熱」と言う工法です。しかし、どうやらこれが流行した原因は、勘違いだったらしいと言うことも判ります。

外断熱はもともと鉄筋コンクリート建築の断熱方法として出て来たものです。通常、鉄筋で作った家は内装工事と同時に内部に断熱材を張ります。外部は打ちっぱなしか、簡単な塗装で安く仕上げます。

しかし、外部に断熱材をつけた上で外観を整える工事をし、内部は内装工事をすると、工事箇所が多いので費用がかかりますが、暮らし易くなります。比熱の大きいコンクリートを内部に抱え込むため、部屋の温度が変化しにくくなるのです。

これが「外断熱」の良さだったようです。


しかし、外断熱が流行したので、木造住宅でもこれが取り入れられます。

木はもともと比熱が小さいため、部屋の温度を一定にするような効果はありません。

断熱材としては、いままで壁の中にたっぷりいれていたものが、外側に薄く付くだけになり性能が落ちています。(外断熱の場合、柱と柱の間に入れるのと違って外側に釘で止めるために、薄い断熱材しか使うことが出来ません)

その結果、外断熱にした方が住みにくくなる、という事も起こっています。


ただし、木造在来軸組工法で外断熱をつかうと、いままで断熱材が入っていた壁の中のスペースを居住空間に組み込めます。
 壁面収納などが増やせるので、収納空間が欲しい人に対してはメリットがあるようです。
 外断熱を「断熱効果を上げるため」ではなく、「居住スペースを増やすため」に使用するのであれば、外断熱にする意味があるかと思います。


ここまで判った時点で、外断熱を採用しているメーカーは全部候補から外すことにしました。

代わりに、選外だったスウェーデンハウスがいきなり筆頭候補です。断熱性能では先に挙げた地元工務店と同等ながら、音響などの面でも十分頑張っています。

ただし、相変わらずスウェーデンハウスはあの窓がいや。三井ハウスは、スウェーデンハウスほどの断熱性能をもちませんが、窓は普通の引き違い窓です。

実は、まだ地元工務店も完全に捨てきるには惜しいと思っています。さて、どこにしたものか…

(ページ作成 2004-08-05)

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