トースト
Toasts. …Toasts? トーストって何なの?
Llama の現在のモードを通知する方法を選ぶ選択肢の中に、Toasts はありました。
作者さんから翻訳者に向けた注釈によれば、Toasts とは「this is the brief messages that pop up」とのこと。pop up? トースターみたいに飛び出す、という意味かな?
で、最初は「飛び出す」という訳で作者さんに送ってみました。
でも、どうも違う。調べたら、これは Android 独自の機能で、通知方法の一種だとわかりました。
Android には、iPhoneと同じく(真似した?)通知領域があります。画面上に、バックグラウンドで動作するアプリケーションなどからメッセージを表示できます。
この「通知領域」は、ユーザーが後で見ることを想定しています。表示される瞬間は、1行に入りきらないとスクロール表示になったり、それほど読みやすくない。でも、あとで再表示させて読むことができます。
それに対し、「Toasts」は、画面の中央付近に、短い文字表示を行うものです。バックグラウンドで実行されているアプリからも表示でき、読みやすいのですが、表示の瞬間にユーザーが見ていない場合はそのまま消えてしまいます。
表示の瞬間は読まないで後で読むことを想定した通知と、表示の瞬間だけ読んで後で読むことはできない通知。お互いに補完する形で、通知領域の不便さを解消する目的が、Toasts にはありました。
ところで、何でトーストなの? 焼いたパンと何の関係が?
これについては、調べてみたらわかりました。トーストって、「祝辞」の意味があるのね。
さっと現れ、一言述べたら消えうせる。Android の「トースト」通知は、まさにパーティの来賓が述べる祝辞です。
ちなみに、祝辞は「焼いたパン」から派生した意味です。まったく関係なさそうなのにね。
中世まで、ワインを瓶詰めで保存することはできなかったので、ワインは酸化してすっぱくなっているのがあたりまえでした。
酸化しているのだから、アルカリを入れて中和すればいい。身近なアルカリといえば、植物性の焦げや灰です(そもそもアルカリとは、アラビア語で「植物の灰」の意味)。だから、焼いたパンをワインに入れた。ワインと一緒にパンを食べた。
パンは空気をたくさん含んだ食べ物です。ワインとパンを一緒に食べると、口に多くの空気を含むことになり、鼻腔に早く匂いが到達します。
つまり、ワインにパンを入れて食べるのは、酸味を和らげて味を良くし、香りをより高める効果があるのです。非常に理にかなった食べ方。
(現代においても、あけて1日たって酸味が強くなったワインなどに、良く焦げたパンを入れる方法は有効です。覚えて置いて損は無いです)
キリストが、ワインを血と呼び、パンを肉と呼んだのにはちゃんと意味があるのですね。これは必ずセットになっているものだったから。
ここから派生して、「トースト」は乾杯の意味でも使われるようになります。そして、さらに派生して祝辞の意味も持ったのです。
以上、余談終わり。
さて、トーストの意味が、わかったところで、「枠付表示」という訳語を当てます。造語ですが、小さな枠の中に表示されるのですから妥当な訳でしょう。
しかし、後で 2ch で翻訳についての意見を聞いてみたところ、Android では「トースト」を使うアプリが他にもあるし、変に訳を考えるよりも「トースト」のままがわかりやすい、という意見を戴きました。
2012年末に公開された正式版では、「トースト」のままになっています。この言葉がわかりにくいのではないか、という懸念はまだありますが、一応悩んだ末の「訳さない」選択ですので、ご了承ください。