ガソリン式コンロ
今回の社会の歯車は、「森の生活」連動企画で、ガソリン式コンロのしくみを紹介いたします。
キャンプをするためにわざわざしくみを知る必要はないのだけど、知っているほうがなんであんなにややこしい手順を踏んで使うのかわかりますからね。
理解を深めるために、ガソリンの流れを追いながら、ボンベ式のコンロとの比較も交えて話しをすすめようと思います。
燃料室
まず、ガソリンは燃料タンクに入れられます。燃料タンクはコンロの一番下に位置しますが、これは熱が上へ伝わろうとする性質があるため、可燃性のガスや液体を一番下におく方が良いためです。
しかし、スタート地点が一番下にあると言うことで、いきなり問題につきあたります。ガソリンをどうやって上に送れば良いのでしょう?
(このとき気化熱を奪うため、タンクは冷え、気化しにくくなると言う弊害も出ます。通常は問題ありませんが、寒冷地では火の熱を下に伝えてやり、タンクを暖めつづけなくては火が消えてしまうこともあります)
ガソリン式では、人為的に圧力をかけるために空気を内部に圧縮してため込みます。火を使う前にしなくてはならない「ポンピング」という作業は、このためのものです。
ポンピング不足だと、燃料が十分に送り出されないために十分な火力が得られません。
左はガソリン式コンロの仕組の模式図。
黄色の部分がポンプで、水色の部分がガソリン。送り込まれた空気は、ガソリンタンク上部の空間に圧縮されてためられ、ガソリンを押し下げる力となる。
空気圧によって押し下げられたガソリンは、パイプを伝って上へと逃げようとしますが、そこは燃料弁により止められています。
燃料弁
そこで当然、燃料弁を開いてやればガソリンが出てくるわけです。燃料弁はこれだけの働きしかしませんが、その仕組はすこし工夫されています。
燃料弁は液体を完全にコントロールするという難しい働きを担っているので、非常に精密な作りになっています。しかし、細かな部分が多いためにガソリンに不純物が混ざっていると詰まりやすいのです。
そこで、燃料弁は開閉を行うときに、同時に弁部分の清掃が行われるような構造になっています。長時間コンロやランタンを使用していて火が不安定になったら、ポンピングして空気圧を補うとともに、弁を開閉して清掃しましょう。
気化パイプ
燃料弁を通り抜けたガソリンは、バーナーの上のパイプを通ります。パイプはバーナーの火で暖められていますので、ここでガソリンは気化します。
(おそらく、ガソリンコンロをコールマン社が独占して作っているのは、この機構で特許を取っているのではないかと思います)
ふたたび模式図。
紫色の部分が燃料パイプ、赤の部分がバーナー部分です。燃料パイプがバーナーの上を通っているのが重要です。
この模式図には空気弁はありません。(最近売られているのは、みんなこのタイプです)
パイプを通った後のガソリンは、古いタイプの機種では空気弁で空気と混合されます。これは燃焼を助けると同時に、着火直後で十分に気化されていなかった場合には霧状にして火をつけやすくする装置にもなっていました。
バーナー
最後に、気化したガソリンはバーナーから噴き出し、引火・燃焼します。
この火が再びパイプを熱し続け、後続のガソリンを気化させるというサイクルになっています。
ただし、さきほども書きましたが寒冷地で使う場合は、金属板を使って熱を導き、ボンベ全体を暖めることがあります。
仕組としては、これでほぼすべてです。他に使いやすくするような工夫はいくつか見当たりますが、それほど重要なものではありません。
「森の生活」で「TwoBarnerはあまり良くない」と書いたのは、1つ目のバーナーで燃えたガスの残りが2つ目に導かれる構造になっているためです。
1つ目を点火しなくては十分な気化がなされず、しかし1つ目に点火してしまえばほとんどのガスはそこで燃えてしまう・・・というわけで、2つ目のバーナーは非常に火力が弱いのです。
しかし、何度も番組を見ていると、右側の第1バーナーしか使わないことがわかります。やはり、火力を考えるとそうなるのでしょうか・・・
ガソリンコンロの仕組は、液体と圧縮空気の組み合わせ、という良く使われる手法(紀元前から知られています)を、うまくアレンジしたものだといえるでしょう。
その意味では、これはすでに紹介している「エスプレッソメーカー」などの仲間と捕えることが出来ます。
非常に単純だからこそ、故障も少なくアウトドア向けの技術だといえます。