LEGOとlogoの微妙な関係
LEGOブロックに歯車を組みあわせ、自由に機械を作れるキットがある・・・ということは前回の「社会の歯車」でお伝えしました。
LEGO社が売っているレゴブロックの最も高年齢向けは、このレゴテクニックです。しかし、LEGO社以外からはレゴテクニックよりも高年齢向けのセットも発売されているのです。
それはLEGO社の子会社であるDacta社が売っているLEGO Dactaシリーズ、製品名はLEGO TC logoです。
なぜLEGO社が直接売らないのか、というのは謎なのですが、どうやら学校教育を中心に考えたセットのため、サポートなどの問題で会社を分けているようです。
実際の教育でどのような使われ方をされているのかということは、教育現場の方のほうが詳しいと思います。
今回、レゴロゴ教育を実施している「ラーンネット」の方から快くリンクの許可がいただけましたので、詳しい事を知りたい方はラーンネットのホームページをお読みください。
LEGO Dacta
通称「レゴロゴ」と呼ばれるこのおもちゃは、基本的にはレゴテクニックと同じブロックを使用します。
最大の違いは、なんと、コンピューターで制御可能だということ!
レゴロゴの基本構成は、レゴテクニックで使用されているブロック本体、モーターやライト、センサーなどの電気制御可能なブロック、そしてコンピューターとブロックを接続するためのインターフェイスです。
一番最初のモデルではApple//というコンピューター専用の拡張カードとしてインターフェイスが用意されていたようですが、現在では一般的なコンピューターで使えるようにシリアルインターフェイス(モデムを接続しているところ)を利用します。
インターフェイスにはインターフェイスAとインターフェイスBがあるようです。デザインや使いやすさはBの方が良いようですが、私はAしかもっていません。
インターフェイスA。番号をふられたポートが0〜7の8つ、アルファベットで区別されたポートがABCの3つ、それにテスト用に常に電流が流れているポートがある。ABCと0〜5は出力用、6,7は入力用である。Aでは電気コードをプラグのような方法で接続しますが、Bではレゴブロックの凹凸に電極が組みこまれた形になっており、接続ポートの用途によってブロックが色分けされています。
コンピューターから制御するブロックにはライトブロックとモーターブロックがあります。このどちらも、制御するときにはパワー制御可能・・・となっているのですが、実際のところはインターフェイスの部分で高速に ON/OFF を繰り返しているだけのようです(ライトを暗く点灯しようとしても、ただ点滅するだけ)。
また、極性を逆転することもできるので、モーターの回転方向を逆にすることが可能です。
モーターとライトブロック(消灯/点灯)。
モーターの軸には、車軸と同じ切り込みがいれてある。また、溝もあるので輪ゴムをかけてプーリーに動力を伝えられる。
ライトの後ろについている黒いものはコードで、ブロックは黄色の部分のみ。
コンピューターへ入力を行うブロックには、プッシュセンサーとライトセンサーがあります。
プッシュセンサーはスイッチが押されたかどうかが調べられます。
プッシュセンサー。左にあいている小さな3つ穴に、コードを差し込んでインターフェイスに接続する。手前の灰色の部分がプッシュスイッチになっているのだが、ここはきれいな山型に加工されているため、正面以外からの力でも押すことができる。
また、スイッチには車軸を差し込んで、実際に物に触れる部分を遠くへ伸ばせる。
ライトセンサーは、ライトと組みあわせて明るいか暗いかを調べることで、ライトとセンサーの間を横切るものがあったかどうかを調べられます。
また、ライトセンサーは自分自身から赤外線を常に出していて、5mm以内のところに物体が来ると赤外線の反射でそれを知ることができます。
ライトセンサー。プッシュセンサーと同じく、右奥の3つ穴はコードを接続するところ。位置が違うのは内部の都合だろう。
横には2つ穴があいているが、左の大きな穴は車軸受け。右の穴がセンサーの穴である。
さらに、この赤外線を吸収するディスク(カウント車)を軸につけてライトセンサーに通すことで、軸の回転数を測ることも可能です。(回転によって、赤外線が吸収されたり反射したりするのを利用)
ライトセンサーにカウント車をつけたところ。カウント車の表面の黒い部分は、表面と裏面で数が違う。予想される回転数に応じて面を替えることで、適当なカウント値をとりだすことができる。
LEGO TC logo
上の章で説明したブロックをLOGOという言語で制御することが可能です。LOGOについては今回の「OldGoodCOMPUTER!!」で詳しく説明しています。
LOGOで制御可能というのは、LEGOブロックから見れば「制御言語にLOGOを採用した」というだけの話しなので、解析すればLOGO以外での制御も可能でしょう。実際に解析を試みている方もいるようです。
こうなってくると「LEGO TC logo」という名称もおかしなものになってきます。実際のところは用語の混乱もあって良くわからないのですが、LEGO TC logoというのは言語まで含めたセットの名称で、ハードウェアのみでは「LEGO Dacta」と呼ぶようです。
ともかく、このLEGO TC logoは基本的には学校教育向けに作られているようで、セットには子供向けの教科書と、先生向けの指導要項も含まれています。 (日本語版では「ロゴライター2」というLogoが使われていますが、基本的に書いてあることは同じようです)
読んで見るとアメリカ生まれの教材だけあって、結構日本人には思いつきにくい授業内容もあります。
たとえば、「洗濯機を作って見よう!」という内容。自動車作ったり、遊園地の乗り物を作ったりするのはわかるのですが、よりによって洗濯機とは・・・
しかしこれが侮れない内容で、ただドラムを回転させることからはじまって、
- 20回転毎にドラムを反転しましょう
- ボタンを押したら洗濯をはじめて、しばらくたったら脱水に移るというのを、状態表示ランプをつけて表現しましょう
- ボタンが押されても蓋があいていたら動きはじめないようにして、動いている最中でも蓋があいたら止まるようにしましょう
と続いていく・・・どうやって洗濯機がプログラムされているかなんて、大人でも知らない人が多いんじゃないですか?
たとえブロック遊びだといっても、このプログラムを自分一人で作れれば、将来プログラマーとして食べていけます。それくらい奥深い内容ですよ、これは。
これは洗濯機ではないが、教材に例として使われている「タートル」の写真(教材より抜粋)。もちろん、LOGOの最初の目的であった「タートルグラフィック」を実現するものである。ほかに、床を光センサーで監視しているので、黒い線に沿って歩かせたりすることができる。
指導教員向けの解説書には「亀が迷路を脱出するようなプログラムも作って見ましょう」とあるが、これは昔、電子回路技術者の間で競技会が行われていた「マイクロマウス」そのものである。
LEGO TC logoの奥の深さがうかがい知れる一面である。
Pearl Controler
すでに「歯車機械」の話しからは外れてきましたが、興味を持った方のために、最後に動作機種の話しをしておきます。
LEGO TC logoはApple//、IBM-PC、及びPC-9801で動作します。
このうちApple//は英語版のみ、PC-9801は日本語版のみしかありません。
私は不幸にしてMacintoshしか持っていないので、LEGO TC logo互換を謳っているMac用の製品を購入しました。
PearlControlerという製品で、インターフェイスとMacの間をつなぐハードウェアと、HyperCardとObjectLOGO用のデバイスドライバのセットで販売されています。アメリカの会社なので、説明書は英語です。
PearlControler。大きさはマウスくらいで、左に延びているフラットケーブルをインターフェイスに接続する。今回取り上げていないが、RS-232Cを使用するパソコンでもインターフェイスとの仲介を行う機器は必要で、これはかなり大きく、重い。
Apple//は知らないが、たぶんカードから直接フラットケーブルが出ているのだろう。
通常の方法ではパソコン1台に対してインターフェイスは1台しか接続できないのですが、PearlControlerでは8台まで繋げるようになっています。制御は、HyperTalk(HyperCardのプログラム言語)かObjectLOGOで行います。
ObjectLOGOはPearlControlerを作っている会社が作っている高機能LOGOで、PearlControlerとセットなら割安に購入できます。しかし、HyperTalkがわかる人でHyperCard(Liteでも可。プレイヤーでは不可)を持っていれば、ObjectLOGOは必要ないでしょう。(私は自己満足で購入しましたが)
最後に、このPearlControlerのマニュアルの最初に載っていた、象徴的な一文を紹介して締めくくらせてもらいます。この言葉にはMacintoshと入っていますが、そこは読み飛ばして考えてください。
Opening the World of Robotics to Macintosh Users of All Ages!
レゴは、すでに子供だけのおもちゃではないのです。
追加情報 2002.4.17
多くの方がご存知のように、現在 LEGO LOGO の改良版である「LEGO MindStorm」が市販されています。LEGO LOGO よりもずっと安く、誰でも入手可能です。
MindStorm は、MITの授業でLEGO LOGO を使用しながら改良を行い、完成度を高めたものです。MindStormという名前は、LOGO の開発者であるシーモア・パパートの同名の著作から取っています。
プログラム言語は LOGO ではなく、グラフィカルにアルゴリズムを記述する方式に変わりました。相変わらず Macintosh 版はありません (^^;