木肌の持つ美しさ
私は神奈川県に住んでいる為、小田原や箱根と言うところは身近な観光地として親しみがあります。
家族で旅行に行ったこともありますし、学生時代に遠足などでも行ったような気がします。
で、そんなだから家に箱根のお土産物が結構あったりするのですよね。
箱根の土産と言えば、代表格は箱根細工。今回は、この箱根細工のお話です。
寄木細工
写真は寄木細工で装飾したペンケースです。
ふたの部分に細かな幾何学模様がつけられていますが、これは印刷などによる着色ではありません。細かな木を組み合わせて作られており、木の種類による色の濃さの違いで模様を描いているのです。
こちらは、ペンケースのふたをアップで撮影した画像です。
デジタルカメラの圧縮ノイズや GIF にした為の減色ノイズものってしまいわかりにくいですが、模様の方向にそって木の繊維が走っていることがわかるでしょうか?
(左上から右下に走る太い線は、蓋を湾曲させる為の刻みです。しかし、右上から左下に走る線は、木のつなぎ目です。)
寄木細工は、大きくわけて2種類あり、このペンケースのような場合は「ずく」と呼ばれます。
寄木は、細い木の棒をぴったりと接着していってブロックを作り、その断面が模様になるようにします。
ここで、ブロックを削って花瓶などを作り、その表面に綺麗な模様が出るようにしたのが「むく」、専用のカンナによってブロックを削り、その削りくずを木に張り付けて装飾するものが「ずく」なのです。
ずくによって作られる模様は、なにも幾何学模様に限りません。このような、美しい絵を描くこともできます。(写真は、家にあった小物箱の蓋です)
しかし、絵の微妙な曲線をぴったりあわせるように複数の木を削るのは大変な職人芸で、最近では非常に高価になっているようです。
この寄木の「ずく」がいかに薄いかと言うのには、ちょうど良いサンプルがあります。
この写真に写っている寄木細工は、じつはテレホンカードです。
奥に写っている物はただの印刷なのですが、手前は本物をテレホンカードに張り付けてあるのです。
それでも、問題無くテレホンカードとして使えます。機械にひっかかったりすることもありません。
張り付けても厚さがほとんど変わらない。それほどの薄さなのです。
組木細工
寄木は装飾のための細工なのですが、組木はさまざまな仕掛けを作る細工物です。
立体パズルなどが良く作られるのですが、その中でも有名なのが「秘密箱」です。
秘密箱は、非常に複雑な手順を踏まなくてはあけることが出来ない箱です。
写真の物は寄木装飾のある箱なのですが、14回の手順を踏んであけることが出来ます。
この手順は高価なものになる程複雑です(ここで紹介している14回の物は面白みに欠けます)。
中はこの写真のように、細かな段や溝が彫られた精巧なものになっています。単純すぎる14回でもこれなのですから、52回や60回であけることができると言う高価なものが、いかに複雑な作りをしているかが伺えます。
私はこの他に4回の物も持っていたのですが、兄が欲しいと言ったので売ってしまいました (^^;
こちらは4回とはいえ、動く場所が寄木の模様によって隠されるような作りになっています。動かす場所すらわからない、というのも、からくり箱の面白さの一つです。
海外の秘密箱
じつは、今回「箱根細工」をテーマにあげたのは、これを入手したからなのです。
アメリカ製の秘密箱です。このメーカーは今までにも「SecretBox」と言う名前で木製の小物入れを作っていたようなのですが、これは木目にうまく隠して蓋が見え無いようにした小物入れです。
で、新製品のこれは、蓋が見えない程度のものではなく、一定の手順を踏まなくては開かなくなっている所が「秘密箱」として紹介する理由です。
そういえば、蓋につけられている模様は寄木細工と同じ手法でつくられた「ずく」のようです。箱根細工の影響を受けているのかも知れません。
で、問題の開け方。箱の裏に説明書きのシールが貼ってあります。
描いてあることは
- 蓋に小さな印がついている方に傾ける
- 平らな場所で箱を反時計周りに1回転する
- 印と逆側に傾ける
- 開く
はぁ?なんじゃこりゃ。箱根細工みたいに、からみ合った留め金を一つずつはずすように・・・という操作では無いのです。見た目にはなにも操作していないような「反時計周りに一回転」というのが、なんだか新感覚の秘密箱です。
でも、これだけで本当に開くんですね。
閉めるのは、蓋を閉めて印側に傾けるだけでOK。これで、開け方を知らない人には開けることが出来なくなります。
秘密は、蓋につけられたこの小さな鉄製の出っ張りのようです。たしかに、あける操作をしないと押しても引っ込まないこの出っ張りが、操作後は自分の重みだけで簡単に引っ込むのです。
だけど、どうやってその機構を実現しているのかは、今の所不明。
音から、おそらく内部に鉄製のベアリング(小さなボール)をいくつか入れてあり、それが回転で動くのだと言うことはわかるのですが、やっぱりいろいろとわからない点も多いのです。
うーむ、不思議。
今回、昔家にあった寄木装飾された(子供だましな)手品セットとか、装飾の無い純粋な組木パズルとかを探したのですが、どうも捨ててしまったようです。残念です。
実は、箱根の秘密箱をもっと大掛かりにした、「秘密箪笥」と言うようなものも作成されています。
普通に使う分にはただの箪笥なのですが、一定の手順で引き出しを出した時だけ、最後に引き出しが外れてその奥の秘密の引き出しが使えたりするのです。
50回程度の秘密箱も、「いつか手に入れたい」と思っているうちに、作れる職人が減ってどんどん高価になっていくようです。
こういう「仕掛けもの」が大好きな私としては、秘密箱も秘密箪笥も非常に欲しいのですけど、無茶苦茶高いんですよね・・・