2024年05月06日の日記です


横浜散策(3/4)  2024-05-06 22:46:27  旅行記 社会科見学 家族

横浜散策の続き。



横浜人形の家を見に来た目的の一つは、特別展「いざなぎ流のかみ・かたち」。

面白かったので、最初にざっくりとまとめておく。


「いざなぎ流」は、高知県の小さな地域で独自に発展した、神道と仏教と陰陽道が入り交ざった信仰。

シャーマンとしての「太夫」が、八百万の神々を呼び出し、尋問する形で様々なトラブルを解消する。


これが、独特ではあるが「迷信」と片付けるには惜しい、独自の科学性を持っている。

いや、現代科学とは違うのは事実なのだけど。


病気になったら、医者にかかる。それは問題ない。でも、医者にもわからない、原因不明の病というものはある。


その場合、太夫は、原因となっていそうな神を呼び出し、尋問を行う。

関係なければ、丁重に挨拶して帰ってもらい、次の神を呼び出す。


神を呼び出すときは、御幣を使う。神道で使われる、紙を切って細長くして、棒の先に付けたやつね。


ただ、いざなぎ流では、この紙の切り方が独特で、顔や手足を作るように切る。

人型を式神として使役する陰陽道の影響があるが、ここで切るのは呼び出す神様の形なのだそうだ。

神を呼ぶのには依り代を必要とする、神道の影響なのだろう。



ここでの尋問は、数珠を使って行う。


数珠というのは、「数」と入っているように、本来計数器だ。

仏教では真言などを繰り返すことが重要なことが多く、何回唱えたかを手元で記録するために数珠を使う。


そして、適当に数珠を握れば、何らかの数が出る。

この数が奇数か偶数かで、YES / NO が決まる。

こちらは陰陽道的だ。陰陽では数が奇数なら陽、偶数なら陰とする。



尋問を繰り返し、余り下級の神になってくると、不誠実な態度をとることがあるそうだ。

つまりは、それ以上他に神様がいなくなっても、誰も原因となる神がいない場合は、最後の神様が嘘をついていることになるのだ。


その場合は、太夫は「王子」の形の御幣を作り、神に対して脅しをかける。

王子は非常に強い力を持ち、神をも退治できるのだ。これは陰陽道の、式神の使役なのだろう。


脅しをかけてもう一度尋問してもシラを切る場合は、いよいよ王子を発動させ、神を懲らしめる。

これで、悪い行いはもうしない。病気も治るだろう。


もちろん、途中の神が原因を認めた場合も、神と交渉して原因を取り払う。

時には供物を要求され、その供物をささげれば交渉は成立、病気は治る。



シャーマンって、大抵は一定の手順を踏んだ呪文などを使って病人をなおすのだけど、いざなぎ流では、繰り返し「試行」することで、原因を探し出して取り除こうとするのだ。


これは、科学的な態度に思える。

多くのシャーマンが科学文明の発達とともに消えていったのに対し、まだいざなぎ流が残っているのは、科学との相性がそれほど悪くないからではないだろうか。



病気を治すだけでなく、普段から「集落内の人間関係の悪い部分」を取り去るようなことも行っている。

人を呪うほどではなくとも、小さな妬みや羨望が、「呪詛」(すそ)となって溜まっていき、やがては禍を起こすと考えるのだ。


そのため、定期的に呪詛を消し去る。呪いの類は、通常は相手に「返す」のだが、それではお互いに返し続けてキリがないからと、呪詛は「遠いところに追いやって、なかったことにする」ようにしている。


…これ、小さな村社会では人間関係がギスギスしがちだから、定期的に「今までのことは水に流しなさい」とやり続けてきた、ということだよね。


儀式をやったのに、妬みなどを持ち続けていると、自分だけが悪人だということになってしまう。

村全体で、儀式をきっかけに「なかったことにする」しかない。


ここら辺も、神様という絶対的な権力の力を借りているだけで、村全体のストレスを管理して問題が起きないようにする知恵に思える。科学的。




いざなぎ流の太夫(シャーマン)が使う道具の展示があったが、「笠」にはいろいろと書き込まれていた。

寄贈するにあたり、太夫がいろいろな説明を書いてくれたらしい。


端の方に、縦横に線を引いた格子模様と、五芒星の形。

横に「ドーマン クジ」「セイメイ」と書かれている。


長女がこれを見て、「星の横にセイメイってあるから、安倍晴明の事だよね」と聞いてきた。

うん。そうだろうね。そうすると、クジは九字で、臨、兵、闘…のやつだね、と話をする。


すると長女「あー、2年生の時に覚えてできるようになってたけど、もう忘れたわ」と。

2年というのが、まさに中二病だね、と笑うと「いや、小学校2年の時」。


早すぎるでしょ。そういうの覚えるのは中2でしょ。


長女は保育園のころから本が好きで、小学校低学年の時にはもう高学年向けのジュニア小説とか読んでた。

そのころ読んでた小説で、主人公が九字を切るシーンが度々あるので覚えたらしい。




常設展の方も、リニューアルされて面白いものでした。

以前は、「日本全国の人形」と「世界の人形」が展示の中心だった。


元々設立が 1978 年で、そのころは日本人が海外に強く興味を持っていたんだよね。

だから、世界中の人形を見ることで、世界を感じられる展示は人気があった。


でも、現代ではそれだけではちょっとおもしろくない。

民芸品としての人形だけでなく、「みんなの記憶にある人形」の展示コーナーもあった。


1階の階段前に、1980年~2000年くらいの人形を並べて置いてある。

小熊のミーシャやイーグルサムは、年代は違うが「オリンピックキャラクター」として並ぶ。

キャベツ畑人形や、「にこにこぷん」、リカちゃん人形なども。


そして、階段を上って2階に行くと、もっと古い年代で同じように並べてある。

1960年代のビートルズのキャラクター人形がある。

モンチッチやだっこちゃん、「ブーフーウー」、バービー人形なども。


これ、1階と2階で、年代が違うのだけどわざと同じように並べている。

世代は違っても好まれるものは似通っている、ということか。


そして、さらに古いものもある。

1930年ごろのミッキーマウスとミニーマウスの人形。今のディズニーなら許さない造形だな。

さらに古く、1900年初頭ごろの人形もあるが、ここまでは「懐かしい大量生産品」の扱い。



この階段を挟んだ展示は「あなたの遊んだ人形はどの時代?」というようなことが書かれていた。

しかし、子供たちは 2000年以降の生まれで、その時代の人形すら置かれていない。


別に自分が遊んだものでなくていい。

同世代の子なら懐かしむことができる、というのがあればよかったのだが、その権利すらないのはちょっと残念。




2階には、もっと古い時代のアンティークドールたちが並ぶ。

階段あがって左手には日本のひな人形、右側には西洋のアンティークドール。


どちらも、最初は人形を中心として、その後「ミニチュアのキッチン」が置かれている。

ここでも、洋の東西を問わず、似たものが作られていたと示したいのかもしれない。


雛人形の一種としての、ミニチュアの道具類は「雛道具」というらしい。

さらに、道具だけでなく厨房(水屋、というらしい)を作ったものは、今の子供ならおままごとに使いそう。


多分、昔の子供もおままごとのように楽しんだのだろう。

ただ、こんなセットはとても高価で、貴族か、よほどの金持ちでないと買えなかったのではないかと思う。




西洋の人形の中に、オートマタの「手紙を書くピエロ」があった。

これは人気があって、オートマタの最高傑作のひとつと言われるやつね。


長女は本で見たことがあったようで「本物がこんなところにある」と感動していた模様。


でも、これ大量生産品だから。

大量生産と言っても当時は熟練の職人による手作りで、非常に高価なものではあったのだけど、たった一つというわけではない。

しかも、ここに置いてあったのは小さく作りなおされたミニチュアだから、オリジナルの一つですらない。


実際に動かした様子のビデオも上映していたのですが、どうもここのピエロは、ランプに火を灯さない状態で動かしたようです。

ビデオでも火がついていない。火、という扱いずらいものを見事に制御してみせたのも、最高傑作とされる理由の一つなのだけど。


本当は「ピエロが手紙を書いているうちに、うとうとと眠ってしまう。寝ている間にランプの灯が消えそうになるが、目を覚まして慌ててランプを調整し、さらに手紙を書く」という複雑な動きを演じるものです。

火が消えそう、調整したらまた火力が戻る、というような部分が制御されているのが見所の一つ。




日本の「市松人形」と、西洋の「ビスクドール」の作り方を解説しているコーナーがあった。

これも、部品ごとに対比して確認できるようにしてある。


部品の一部は触れて肌触りを確認できるようにしてあるのも素晴らしい。

人形って、触れて遊ぶものだからね。


長女は演劇部に所属しているのだけど、少し前に市松人形が動く、ホラー仕立ての劇をやっていた。

シナリオは同年代の友達が書いたらしいのだけど…長女はたくさん本を読んでいるし、中学の時は文芸部だったので自分でもお話を書く。

その目から見ると、いろいろと細かな部分が気になるので、シナリオの改良に手を貸していた。


その際に、市松人形を出すのであればまずそれに詳しくなくてはだめだ、と、作り方から調べていたので、ある程度知っていたらしい。


ただ、その実物の制作過程の展示を見られるのは面白かったようだ。

詳しく知っているからこそ、興味深く見られれるものもある。





ところで、人形の家は妙に「カエルのピクルス」推し。

子供のころに遊んだ人形、のコーナーにも置いてあったし、ミュージアムショップにもいっぱい置かれていた。


これ、我が家になぜかあるが、なんだかわからなかったんだよね。疑問氷解。


我が家にあるのは、次女が小学校の時に先生にもらった、「誰も作らなかったエプロン生地」。

小学校の家庭科の授業ではエプロンを作るのだが、次女は裁縫が好きなので、すぐに縫い上げてしまい暇になった。


そうしたら、先生が「数年前に購入したが、誰も作らなかったセット」をくれたのだ。

カエルが描いてあって「pickles the frog」とロゴが入っているのだけど、何者かわからなかった。


特にエプロンは作らなかったのだけど、現在我が家で座布団のカバー生地になっている。


で、ミュージアムショップにたくさんのグッズが並べられていたので、それなりの人気キャラだったんだな、と認識した。

けろけろけろっぴとのコラボ商品もある。カエル業界、というものがあるかは知らんが、そこではそれなりの知名度なのだろう。


続き



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