しばらく前に「もう一つ買ったものがあるので、後日書こうと思う」なんて予告しておいて、なかなか書けなかった。
購入したのは、新しい NAS 。QNAP TS-251D。
ある程度設定が終わったらレポートを兼ねて書こう、と思っていたが、この設定に手間取ったのだ。
今までは、同じ QNAP の TS-220 を使用していた。
6年半ほど前に購入したものだ。
その前の NAS は、6年半使ったところで壊れた。
だから、TS-220 もそろそろ買い替え時だと思うのだ。
後継機への乗り換えだから簡単にできる…つもりでいたら、思った以上にハマリポイントが多かった。なかなか日記を書けなかったのもそのためだ。
購入を検討している人のために最初に結論を書いておくと、標準のメモリ(2Gbyte)は足りなすぎる。
特に複雑なことをしない、普通の状態でも足りていない。
なぜそんな状態で売っているのか、と思うのだが、一応動作はしているので、最低限のセットで販売しているのだろう。
4Gbyte モデルも販売しているようなのでそちらを買うか、交換用の増設メモリを最初から買うのが良いと思う。
もうひとつ、乗り換えの際には、新しい NAS と一緒に新しい HDD も購入しよう。
古い機種の HDD を新しい機種に入れよう、とは考えないこと。
公式には、古い NAS から HDD を取り出して入れ替えると、今までの設定もそのまま引き継がれて簡単…ということになっているのだけど、残念な結果にしかならない。
つまり、251D を購入するなら
・本体
・HDD 2台
・増設用メモリ
を同時購入するのがいい。
僕はトラブルに見舞われながらこれらを順番に買うことになり、無駄な時間を費やしてしまった。
なんでそういう結論に至ったのか、順を追って説明しよう。
まず NAS について知らない人のためにざっくりとした説明を。
狭義には、LAN に接続できるハードディスクドライブ (HDD) 装置を NAS という。
PC に USB で HDD を接続することはできるが、これを LAN 接続で行おう、というものだ。
LAN 接続なので、多くの PC から同時アクセスできる。
(もともと SAN の逆、というパロディでもある。SANもネットワーク HDD 装置だけど、いろいろと逆なのだ)
NAS は最近はもっと多くの機能を提供していることが多いのだけど、いちばん重要なのは「大切なデータが壊れないようにする」機能だ。
そして、この最も基本的な部分に、RAID 技術がある。
RAID を単純に書くと「2台の HDD に同じ内容を書いておけば、片方が壊れてもデータは守られる」というものだ。代償として HDD の導入コストは2倍になる。
現在販売されている NAS 装置は、大きく分けて2系統ある。
買ってきてそのまますぐ使えるように、HDD などをすべて内蔵した製品と、HDD は別売りで自分で購入する製品だ。
一般に前者は初心者向けで、HDD を取り出したり交換したりすることは想定していない。
ここで問題になるのが、HDD が故障する前に本体が故障したらどうなるか、ということだ。
実は以前にその状態になったことがある。僕は技術を知っていたので HDD からデータを取り出すことに成功したが、普通はデータが失われると思っていい。
これでは、なんのための RAID なのかわからない。
HDD 別売りの機種は、当然のことながら HDD の取り出しや交換も想定している。
容量が足りなくなったらデータを残したまま増設する方法も提供しているし、本体が故障したら新しい(後継機の)本体に移し替えてデータを取り出せる、という保証もある。
ここまでの説明で、やっと冒頭の話につながる。
本体の故障だけでなく、後継機への乗り換えの際にも、以前の機種の HDD を移し替えるだけでいい、と公式には説明していた。
でもこの説明はかなり嘘だった、という話だ。
まず、設定は一部しか持ち越されない。
LAN 接続のための一番重要な「ネットワーク設定」は持ち越されず、デフォルトである DHCP 参照にされてしまう。
データ保全に必要な、バックアップの設定なども残ってはいたが使い物にならなかった。
バックアップ先となる「外部 HDD」の認識名が変更になったためだ。
僕の場合、後継機とはいっても、CPU の違う上位機種に乗り換えた。
そこで、NAS 上で使用できる機能なども細かく変更になったのだが、当然ながらそれらに関する設定も動かなくなった。
そしていちばん重要なことだ。
新しい機種で使えると期待していた「ファイルを保護する機能」が、旧機種から持ってきた HDD では使えなかった。
公式ページの説明では、今回の機種間の HDD の移行でもこうした機能制限は無いはずだった。
でも、公式ページの説明と違って機能は制限される。
HDD の載せ替えは、新機種への移行というよりは、本体故障時の緊急措置と考えたほうが良いのだろう。
仕方がないので、新しい HDD を購入することにした。
ちなみに、購入したのは IronWolf の 4T 。
NAS に入れる前に、表面に書いてあるシリアルナンバー (SN と書いてあるアルファベット混ざりの文字列)を2つとも控えておくといい。
(あとで NAS の設定画面から登録を行うと、3年以内に HDD が故障した際には無料でデータ復旧サポートを受けられる)
問題はその後だ。
新機種に古い HDD を入れると、自動的に認識されて新機種用の OS が書き込まれる。
だから、もうこの HDD を旧機種に戻すことは出来ないだろう。データが壊れるのが怖いので試してないけど。
旧機種はすでに使えず、新機種に新しい HDD を入れれば、古い HDD にアクセスする方法は失われる。じゃぁデータはどこから取り出せばよいのか。詰みだ。
これが、冒頭で旧 NAS を稼働したまま新 NAS を導入したほうが良い、と書いた理由だ。
そうすれば、旧 NAS から新 NAS に簡単・確実にコピーを行える。
僕は、幸いバックアップ用の外付け USB HDD があった。
NAS のデータはすでにバックアップされているが、念の為もう一度バックアップした。
(すでに書いたとおり、バックアップ用設定は動かなくなっているので新しく作り直した)
新しい HDD で新機種をもう一度設定した後、このバックアップを書き戻すことで無事復旧することができた。
さらっと「もう一度設定した後」と書いたが、ここにもハマリポイントがあるので書いておこう。
まず、設定をするには、新しい HDD を入れて NAS を起動したあと、WEB ブラウザで NAS にアクセスする必要がある。
この際、NAS には DHCP で IP アドレスが割り振られる。
(家庭内 LAN には DHCP サーバがあるだろう、という前提。DHCP とは、LAN に接続した機械に自動的にネットワーク設定を行う技術)
自動で割り振られた IP アドレスがどこになっているかは人間には分からないので、QNAP が提供する Qfinder というソフトを WIndows などにインストールする必要がある。
これを使えば IP アドレスを見つけ出し、その IP アドレスで WEB ブラウザを開いて NAS にアクセスしてくれる。
最初に HDD のフォーマットが始まる。これには数分程度かかる。
フォーマットが終われば、すぐに NAS として使い始められる。
実は裏で「RAID構築」と呼ばれる作業をやっているのだけど、それは1日も放置すれば勝手に終わるし、構築中でも別の作業は可能だ。
でも、ここがハマりポイントだ。まだ旧 NAS からのデータ移行をしてはならない。
この後の作業で全データを消すことになるから。
最初にやることは、「ストレージ&スナップショット」の設定に入ることだ。
ここから、Linux の技術の中でも難解な部類に入る LVM の設定を行う。
…いや、簡単に扱えるのが売りの NAS で、なんでこんな難しい設定を包み隠さずみせてるんだよ、と思う。
デフォルトにしろ、とまではいわないが、おすすめ設定とかで勝手にやってくれればいいのに。
HDD をストレージプールに登録し、ストレージプールから改めて「ボリューム」を作り出す。
ボリュームというのは従来の考え方で言うパーティションのことだ。
ボリュームは幾つかの方法で作り出せるが、シックボリュームで全体容量の6割程度にしておくといい。
また、「保護されたスナップショット領域」も確保する。こちらは2割程度で。
残りはシステムで使用する領域と「余り」になるわけだが、この余りはいつでも他の部分に追加できる。容量が足りなくなったときの予備だ。
従来のパーティションだとこうした動的な割当は出来なかったのだが、ボリュームなら可能だ。
これで、以降は「スナップショット」という、最新の便利機能が使えるようになる。
せっかく最新の NAS を買ったのだから、最新機能を使わないのはもったいない。
バックアップを書き戻しながら、RAID 構築を行いながら、NAS の設定もしていると、画面の左下のマスコット(謎のロボット。カイル君みたい)が、頻繁に目をバッテンにしながら「メモリ容量低下」と言っている。
なんだこれ、同時並行作業数が多すぎるのかな…と思いながら、このときは様子見にした。
翌日、RAID 構築もバックアップ書き戻しも終わった状態で、改めて各種設定などを行う。
まだ「メモリ容量低下」と言い続けている。
ここで気づくが、標準搭載の 2G のメモリでは、単純なファイルサーバーの状態でもメモリが足りないようだ。
頻繁に SWAP をおこし、プログラムが HDD の上で動いているような状態。
その HDD は NAS だからもともと頻繁に動かしているわけで、全体的に速度が低下する。
SWAP しても動いてはいるし、2G でも足りるだろうと考えて売っているのかもしれないけど…
いや、これむしろ「メモリは交換されるのが前提」だと考えて、一番安いメモリ搭載して売っているだろ。
増設用メモリを注文。
251D には SODIMM のメモリスロットが2つあり、最初は片方に 2Gbyte のメモリが入っている。
公式には、片方に 4Gbyte まで搭載可能。両方に搭載する場合は、同じメモリを搭載しなくてはならない。
ネットで探すと、今どき SODIMM は 8G が主流のようだ。
251D でも、公式にはサポートしないが 8G を認識するという報告がネットに散見される。
僕としては複雑なことをしたいわけではないので、倍の 4G あればいいかな…
とおもったが、後から気が変わったときに、もう一本全く同じメモリを買うのは多分無理だ。
4G 2本を購入。届いてから交換して 8G になった。
ネットによれば、相性問題が激しいらしくて、「動作確認できた」というメモリは人気商品になっている。
…Amazon ではすでに売り切れだったり、妙に高値だったりする。
あえて別の製品を選んでみる。
TIMETEC 社製のメモリ。4G SODIMM として最安値ではないが、それに近い価格だった。
アメリカの会社で、日本法人からの直販なので、問題が出たときのサポートもしっかりしていそうだ。
でも、問題なく動いた。すでに数日稼働を続けているが、相性による不具合は出ていない。
(もっとも、相性って個体差もあるので、他人が「相性問題出てない」と言ったとしても、あまり意味はない)
これでやっとまともに運用できるようなった。
251D は「後からパーツを購入して機能拡張できる」と人気の NAS なのだが、「後から」ではなく、最初にやらないとまともに動かないという話でした。
NAS の話、長いので一旦ここで区切る。
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