2018年10月28日の日記です


JAMSTEC横浜一般公開日  2018-10-28 15:16:23  社会科見学 家族

27日(土)に、JAMSTEC 横浜の一般公開が行われた。


ずっと前から行ってみたかったのだけど、この日は保育園か小学校の行事とぶつかることが多く、今まで一度も行けたことがない。

それが今年は、保育園が関係ないのはもう当然として、小学校行事ともぶつからなかった。

喜び勇んで行ってきた。




JAMSTEC は研究設備であり、大勢が来られるような駐車場はないので、公共交通機関で…

というのは表向きの話。


我が家的には、家族全員で行くと公共交通機関で 3520円かかる。

ところが、車なら 30分ほどの距離なのだ。


近くの時間貸し駐車場を探してみる。

いまはネットで予約もできるようになった。いい時代だ。


JAMSTEC から 700m 程度の距離のところに、なんと1日 400円という激安駐車場があった。

というか、これ民家の駐車スペースだな。自分が使わないから貸し出しているだけで。



車がすれ違えない非常に細い道で、しかも急坂を上った先にある。

さらに、こんな道なのになぜか交通量は多い。


使おうとする人は頑張ってくれ。




そんなわけで JAMSTEC 。

入口すぐは、世界各地の地質の研究などを紹介したコーナー。


こういう研究施設の一般公開って、なじみがない人はわからないかもしれないけど、文化祭みたいなものだから。


いろんな研究室が、いろんな研究をしている。

それぞれの研究室が、自分の研究室の研究発表をする場所。


ただ、文化祭と違って、最先端のプロの研究なので面白い。

ある程度知識があれば、それがどんな技術の上に立っているかわかるし、知識がないなら素直に魔法のような技術に驚けばいい。



世界各地で、ただ「石」を取っただけでも、磁性が違うという研究を見せているブースがあった。

はっきり磁性を示す石なら、超強力な磁石があればくっつく。

磁石につかないような石でも、精密な測定器を使うと磁性の違いが判る。


でも、そんなことよりも子供に人気になっていたのが、砂鉄遊びだ。

もう、小さい子が集まって大人気。


砂鉄遊びも、単純に遊べるだけでなく、いろんな場所の海岸の砂から砂鉄を探してみる、という展示があった。


茅ヶ崎と、伊豆大島と、伊豆下田の海岸の砂。

この順番に、砂鉄がたくさん含まれる。

…というか、三ケ所とも最近行っており、子供もよく覚えている。


茅ヶ崎で、稲村ケ崎ではないんですね、と聞くと、稲村ケ崎で砂鉄が取れることは知らなかったようだ。


あそこは、スコップですくえば全部砂鉄、というくらい砂鉄が取れる。

教えたところ、展示説明していた人も興味があるから今度行ってみる、と言っていた。




その2階。図書館になっていて、研究者じゃなくても普段から入ってよいそうだ。

ここに、図書館員が作ったという消しゴムハンコが並べてあった。


深海の生物ハンコ。しんかい6500とか、ちきゅうとか、JAMSTEC の研究船のハンコもある。

入口で紙をもらえるので、好きなように絵を作って遊ぶもよし、図鑑のように並べて押すもよし。


このハンコが良くて、図鑑のように並べて押した。

特にテヅルモヅルが良い、中心部とその周辺のハンコが分かれていて、周辺部を繰り返し押すことでテヅルモヅルが完成する。


深海のアイドル、メンダコは当たり前として、コウモリダコもあったのもよかった。

我が家的には、JAMSTEC の人からもらった深海の絵本に出ていた、コウモリダコのほうがなじみ深いんだよね。


あ、そういえば、その深海の絵本「しんかいくんとうみのおともだち」ですが、ちゃんとこの図書館にありました。

6年前の日記で、非売品なので読むのは難しい、と書いてたものです。


いい本です。

読みたい方はぜひ。




先に進む…途中に、食堂があり、昼時なのに席に余裕があった。

一応お弁当持ってきていたが、この日は特別メニューで「地球深部探査船ちきゅうで食べられているカレー」が提供されていた。

ちょっと食べてみることにした。


氷川丸のドライカレーに似ている感じだった。

氷川丸のものより、辛くはない。フライドオニオンだけでなく、砕いたゆで卵をかけてある。


おいしかった。




先に進むと、別の棟。


1階は地震などの災害研究、数値解析などの研究のブース。

これが一緒になっているのは、地震波などの解析にコンピューターのパワーは不可欠だからだろう。


僕の専門に近い分野なのでどれも面白かったのだが…よく遊びに来てくれる妻の知人が解説員をやっていた。

まったくノーマーク。偶然の出会い。


#先ほど書いた、絵本などをくれた「JAMSTEC の人」です。


海底地震計の解説をやっていたので、せっかくなので聞く。

でも、実は横須賀でも聞いてるんだよね。大体知ってる。




ケルビン・ヘルムホルツ不安定を観察しよう! というブースがあった。

二つの流体が接しながら互いに違う方向に動くときに、その境界に生じ、発達する渦のことをこう呼ぶそうだ。


木星の縞模様の端に出ている渦とかがこれだそうだ。



…あれってカルマン渦じゃなかったんだ。

昔、カルマン渦だと聞いたことがあったので質問してみたが、あれはケルビン・ヘルムホルツ不安定なのだという。


カルマン渦は、流体の中に流れをさえぎる個体がある場合に発生する渦。

もしかしたら、木星の地表などに高い山があり、そこからカルマン渦が発生している可能性もある。


しかし、そもそも木星はガス惑星だと考えられているので、地表があるとしても大気表層にはほとんど影響がないと思います、とのこと。

なるほど。納得できる説明だった。




ここでの2階は海洋研究。


海流の方向や速さなどをリアルタイム測定して WEB ページで公開してます、という話が面白かった。

津軽海峡は、海峡であるがゆえに潮の流れが複雑で、地元の漁師さんなどはものすごい影響を受けるらしい。


漁場に出るのに逆方向の流れがあるなら、燃料を余計に使うので、せっかく漁に出たのに赤字、ということもあり得る。

死活問題なのだそうだ。


そこで、今はリアルタイム計測を WEB で公開している

朝4時頃がアクセス数のピークだそうで、漁に出る前にスマホで情報を見て、どこの漁場に行くかなどを決めるらしい。

漁業もIT化が進む時代。


で、この計測方法だが、海面にレーダー電波を当て、跳ね返ってきた電波の周波数偏移でわかるんだって。

レーダーの方向に向かって海流が進んでいるなら、反射するわずかな間にも電波の「波」が詰められて、返ってくる周波数は高くなる。

逆に、レーダーから離れる方向に海流が進んでいるなら、周波数は低くなる。


つまりは、ドップラー効果を利用した、ドップラーレーダーというやつだ。


1か所だと流れの方向によっては観測できないので、3か所から測定して流れを特定する。



実際に観測器を置いて、特定地点だけを調べる、というわけではないので、海面全体の動きがちゃんと把握できるのだそうだ。


ただ、表示サイトでは、表示の都合で「たくさんの矢印」でないと表現ができない。

そこで、見やすいと思う感じに格子目にして表示しているのだけど、これは表現上の問題だけで、もっと細かく表示することだって可能、とのこと。




ここで、妻が予約を入れてくれた DONET のバックヤード見学があった。


S-net という、日本海溝…千葉から北海道沖の太平洋側に張り巡らされた、海中の観測網があるのは知っていた。

海底ケーブルを張り巡らせ、海底で起こった地震や津波を、陸上から見えるよりも早く察知する。


東日本震災の年から開発が始まった。…いわば、震災後の反省で、災害をいち早く知ろうというシステムだ。

すでに稼働を開始していて、緊急地震速報などのデータに活用されている。


DONET も類似のものなのだけど、それよりも早く計画が開始され、震災の年の夏に完成したのだそうだ。

こちらは静岡から九州にかけての南海トラフをカバーする。


ただ、S-net が防災重視で作られているのに対し、DONET は防災「にも」使えるような作り。

もっと研究向けで、地球深部の様子を探ったり、クジラの鳴き声を聞いたりもしているらしい。



JAMSETC 横浜にあるのはバックアップサイト、という位置づけで、メインサイトは筑波に「近いうちに完成予定」だそうだ。

つまり、バックアップと言いながら、横浜がメイン。メインサイトが完成後も、おそらくは横浜がメインなのだそうだ。


というのも、DONET を整備したのは JAMSTEC で、メンテナンスを行うのも JAMSETC で、主に利用数のも JAMSTEC なのだけど、S-net を持っている施設に管理を移管したから。

そうしないと、権限の問題で緊急を要する災害時の活用ができない、ということのようだ。



この見学ツアーは、あらかじめ S-net の話を知っていた(テレビで見たことがあった)僕と妻には悪くなかったのだが、子供には難しすぎてつまらなかったようだ。




そのあと、一番奥にある「地球シミュレータ」を見学。


僕としてはこれがメインだったのだけど…まぁ、機械が置いてあるだけなのはわかっていたので、正直なところ「ちょっと見たら帰ってよい」という程度。


しかし、実際に見るとやっぱすごかったね。


最初の地球シミュレーターは、必要な性能を出すのに、640台のマシンを接続していた。

しかし、実際これほど大量のマシンとなると、マシン同士の通信速度がボトルネックとなり、性能を上げづらい。


(それでも大丈夫な特殊な通信方法などを作り上げていたのが、地球シミュレーターのすごさだったのだけど)


今は3代目。

当初の地球シミュレーターでは、専用に建てられた棟の1フロアを完全にマシンが埋め尽くしていたのだけど、今は半分くらいの面積しか使っていない。


マシンの数が減っているので消費電力も半分以下に減っている。

しかし、パワーは上がっていて、初代の 40TFLOPS に対して、1.31PFLOPS (1310TFLOPS) となっている。

30倍くらいの性能アップだ。



説明員の人に話を聞いてみた。


地球環境のシミュレーションに使うのはもちろんのこと、数値風洞実験など、ほかの用途にも使える。

ずっと前に、新幹線の走行状態における騒音発生源の特定のためのシミュレーションに使われ、パンタグラフなどの形状が見直された話を聞いたことがある。


…と話したら、まさにそのシミュレーションを行ったのが、説明員の方だったそうだ。

その後何か面白い用途はありましたか? と聞いたところ、釣り用ルアーの開発に使われたりしたという。


投げた際には空気抵抗がなく遠くまで投げられ、水の中では適度な抵抗を受けて魚のように泳ぐ。

そうしたルアーを作るには、投げられた状態を作り出さないといけないため、静止状態で調べる通常の風洞実験では不可能で、数値風洞が使われたそうだ。



ところで、フロアの入り口には、携帯電話の電波を出さないようにするお願いがあった。

部屋の中の照明は、なんだか特殊なもので、蛍光灯のような電気ノイズを出すものは使っていないようだ。


地球シミュレータのような用途では、直前の計算結果を使って繰り返し計算を行うことが多い。

途中で 1bit でもデータがコケてしまうと、結果は全く違ったものになりうる。


そこで、ノイズには気を使っているそうだ。

照明は、フロアの端でハロゲンランプで発生した光を、反射させながら途中で少しづつ外に光が漏れるような、特殊な透明パイプによって行われている。


この照明で、なにか賞を取ったそうだ。

こうした、計算機を置くための周辺環境から気を使って、世界最高レベルの計算力が手に入る。



この日は、人が入れるように床がパネルで保護されていた。

そのパネルは、ガムテープで張り付けられていた。


妻が「ガムテープを勢いよくはがすと、結構激しくプラズマ放電したりしますけど、そういうのは大丈夫ですか?」と聞いた。


なるほど、確かにすごいノイズになりますよね、と言われた後、そんな質問は初めてだ…と少し答えに窮し、多分わずかなノイズなので大丈夫です、と答えられた。


そこで気になって「メモリモジュールとか、パリティ付きですか?」と聞いたら、もちろんパリティ付きだとのこと。


メモリモジュールがパリティ付きであれば、わずかなノイズでエラーが起きたときには、検出できる。


常時さらされるような蛍光灯ノイズのようなものは、万が一に備えて完全排除するが、一瞬のガムテープノイズのようなものまで気にするほど脆弱ではない、ということだろう。




これで、ほぼ見終わり。

子供が「もういちど消しゴムハンコやりたい」というので図書館に戻る。


スタンプを押す紙はいろいろ用意されているのだけど、最初は図鑑のように全部押すつもりで、ノート状のものをもらった。


今度は、子供たちは白紙のシール台紙。

気に入ったスタンプを、シールとして使えるようにしたいようだ。


僕はブックカバーにできる紙をもらった。

そこに、深海の風景を作っていく。


…好きな生物押していたら、魚がほとんど入らない。

タコとかイカとかクラゲとか、ふわふわした感じのものが好きなんですよ。


そのうち、終了時間が来たので終わり。



一日中たっぷり楽しめました。

実は、時間の関係でゆっくり見られないところもあったのですが…


またの機会があれば行きたいところです。




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