27日(土)に、JAMSTEC 横浜の一般公開が行われた。
ずっと前から行ってみたかったのだけど、この日は保育園か小学校の行事とぶつかることが多く、今まで一度も行けたことがない。
それが今年は、保育園が関係ないのはもう当然として、小学校行事ともぶつからなかった。
喜び勇んで行ってきた。
JAMSTEC は研究設備であり、大勢が来られるような駐車場はないので、公共交通機関で…
というのは表向きの話。
我が家的には、家族全員で行くと公共交通機関で 3520円かかる。
ところが、車なら 30分ほどの距離なのだ。
近くの時間貸し駐車場を探してみる。
いまはネットで予約もできるようになった。いい時代だ。
JAMSTEC から 700m 程度の距離のところに、なんと1日 400円という激安駐車場があった。
というか、これ民家の駐車スペースだな。自分が使わないから貸し出しているだけで。
車がすれ違えない非常に細い道で、しかも急坂を上った先にある。
さらに、こんな道なのになぜか交通量は多い。
使おうとする人は頑張ってくれ。
そんなわけで JAMSTEC 。
入口すぐは、世界各地の地質の研究などを紹介したコーナー。
こういう研究施設の一般公開って、なじみがない人はわからないかもしれないけど、文化祭みたいなものだから。
いろんな研究室が、いろんな研究をしている。
それぞれの研究室が、自分の研究室の研究発表をする場所。
ただ、文化祭と違って、最先端のプロの研究なので面白い。
ある程度知識があれば、それがどんな技術の上に立っているかわかるし、知識がないなら素直に魔法のような技術に驚けばいい。
世界各地で、ただ「石」を取っただけでも、磁性が違うという研究を見せているブースがあった。
はっきり磁性を示す石なら、超強力な磁石があればくっつく。
磁石につかないような石でも、精密な測定器を使うと磁性の違いが判る。
でも、そんなことよりも子供に人気になっていたのが、砂鉄遊びだ。
もう、小さい子が集まって大人気。
砂鉄遊びも、単純に遊べるだけでなく、いろんな場所の海岸の砂から砂鉄を探してみる、という展示があった。
この順番に、砂鉄がたくさん含まれる。
…というか、三ケ所とも最近行っており、子供もよく覚えている。
茅ヶ崎で、稲村ケ崎ではないんですね、と聞くと、稲村ケ崎で砂鉄が取れることは知らなかったようだ。
あそこは、スコップですくえば全部砂鉄、というくらい砂鉄が取れる。
教えたところ、展示説明していた人も興味があるから今度行ってみる、と言っていた。
その2階。図書館になっていて、研究者じゃなくても普段から入ってよいそうだ。
ここに、図書館員が作ったという消しゴムハンコが並べてあった。
深海の生物ハンコ。しんかい6500とか、ちきゅうとか、JAMSTEC の研究船のハンコもある。
入口で紙をもらえるので、好きなように絵を作って遊ぶもよし、図鑑のように並べて押すもよし。
このハンコが良くて、図鑑のように並べて押した。
特にテヅルモヅルが良い、中心部とその周辺のハンコが分かれていて、周辺部を繰り返し押すことでテヅルモヅルが完成する。
深海のアイドル、メンダコは当たり前として、コウモリダコもあったのもよかった。
我が家的には、JAMSTEC の人からもらった深海の絵本に出ていた、コウモリダコのほうがなじみ深いんだよね。
あ、そういえば、その深海の絵本「しんかいくんとうみのおともだち」ですが、ちゃんとこの図書館にありました。
6年前の日記で、非売品なので読むのは難しい、と書いてたものです。
いい本です。
読みたい方はぜひ。
先に進む…途中に、食堂があり、昼時なのに席に余裕があった。
一応お弁当持ってきていたが、この日は特別メニューで「地球深部探査船ちきゅうで食べられているカレー」が提供されていた。
ちょっと食べてみることにした。
氷川丸のドライカレーに似ている感じだった。
氷川丸のものより、辛くはない。フライドオニオンだけでなく、砕いたゆで卵をかけてある。
おいしかった。
先に進むと、別の棟。
1階は地震などの災害研究、数値解析などの研究のブース。
これが一緒になっているのは、地震波などの解析にコンピューターのパワーは不可欠だからだろう。
僕の専門に近い分野なのでどれも面白かったのだが…よく遊びに来てくれる妻の知人が解説員をやっていた。
まったくノーマーク。偶然の出会い。
#先ほど書いた、絵本などをくれた「JAMSTEC の人」です。
海底地震計の解説をやっていたので、せっかくなので聞く。
でも、実は横須賀でも聞いてるんだよね。大体知ってる。
ケルビン・ヘルムホルツ不安定を観察しよう! というブースがあった。
二つの流体が接しながら互いに違う方向に動くときに、その境界に生じ、発達する渦のことをこう呼ぶそうだ。
木星の縞模様の端に出ている渦とかがこれだそうだ。
…あれってカルマン渦じゃなかったんだ。
昔、カルマン渦だと聞いたことがあったので質問してみたが、あれはケルビン・ヘルムホルツ不安定なのだという。
カルマン渦は、流体の中に流れをさえぎる個体がある場合に発生する渦。
もしかしたら、木星の地表などに高い山があり、そこからカルマン渦が発生している可能性もある。
しかし、そもそも木星はガス惑星だと考えられているので、地表があるとしても大気表層にはほとんど影響がないと思います、とのこと。
なるほど。納得できる説明だった。
ここでの2階は海洋研究。
海流の方向や速さなどをリアルタイム測定して WEB ページで公開してます、という話が面白かった。
津軽海峡は、海峡であるがゆえに潮の流れが複雑で、地元の漁師さんなどはものすごい影響を受けるらしい。
漁場に出るのに逆方向の流れがあるなら、燃料を余計に使うので、せっかく漁に出たのに赤字、ということもあり得る。
死活問題なのだそうだ。
そこで、今はリアルタイム計測を WEB で公開している。
朝4時頃がアクセス数のピークだそうで、漁に出る前にスマホで情報を見て、どこの漁場に行くかなどを決めるらしい。
漁業もIT化が進む時代。
で、この計測方法だが、海面にレーダー電波を当て、跳ね返ってきた電波の周波数偏移でわかるんだって。
レーダーの方向に向かって海流が進んでいるなら、反射するわずかな間にも電波の「波」が詰められて、返ってくる周波数は高くなる。
逆に、レーダーから離れる方向に海流が進んでいるなら、周波数は低くなる。
つまりは、ドップラー効果を利用した、ドップラーレーダーというやつだ。
1か所だと流れの方向によっては観測できないので、3か所から測定して流れを特定する。
実際に観測器を置いて、特定地点だけを調べる、というわけではないので、海面全体の動きがちゃんと把握できるのだそうだ。
ただ、表示サイトでは、表示の都合で「たくさんの矢印」でないと表現ができない。
そこで、見やすいと思う感じに格子目にして表示しているのだけど、これは表現上の問題だけで、もっと細かく表示することだって可能、とのこと。
ここで、妻が予約を入れてくれた DONET のバックヤード見学があった。
S-net という、日本海溝…千葉から北海道沖の太平洋側に張り巡らされた、海中の観測網があるのは知っていた。
海底ケーブルを張り巡らせ、海底で起こった地震や津波を、陸上から見えるよりも早く察知する。
東日本震災の年から開発が始まった。…いわば、震災後の反省で、災害をいち早く知ろうというシステムだ。
すでに稼働を開始していて、緊急地震速報などのデータに活用されている。
DONET も類似のものなのだけど、それよりも早く計画が開始され、震災の年の夏に完成したのだそうだ。
こちらは静岡から九州にかけての南海トラフをカバーする。
ただ、S-net が防災重視で作られているのに対し、DONET は防災「にも」使えるような作り。
もっと研究向けで、地球深部の様子を探ったり、クジラの鳴き声を聞いたりもしているらしい。
JAMSETC 横浜にあるのはバックアップサイト、という位置づけで、メインサイトは筑波に「近いうちに完成予定」だそうだ。
つまり、バックアップと言いながら、横浜がメイン。メインサイトが完成後も、おそらくは横浜がメインなのだそうだ。
というのも、DONET を整備したのは JAMSTEC で、メンテナンスを行うのも JAMSETC で、主に利用数のも JAMSTEC なのだけど、S-net を持っている施設に管理を移管したから。
そうしないと、権限の問題で緊急を要する災害時の活用ができない、ということのようだ。
この見学ツアーは、あらかじめ S-net の話を知っていた(テレビで見たことがあった)僕と妻には悪くなかったのだが、子供には難しすぎてつまらなかったようだ。
そのあと、一番奥にある「地球シミュレータ」を見学。
僕としてはこれがメインだったのだけど…まぁ、機械が置いてあるだけなのはわかっていたので、正直なところ「ちょっと見たら帰ってよい」という程度。
しかし、実際に見るとやっぱすごかったね。
最初の地球シミュレーターは、必要な性能を出すのに、640台のマシンを接続していた。
しかし、実際これほど大量のマシンとなると、マシン同士の通信速度がボトルネックとなり、性能を上げづらい。
(それでも大丈夫な特殊な通信方法などを作り上げていたのが、地球シミュレーターのすごさだったのだけど)
今は3代目。
当初の地球シミュレーターでは、専用に建てられた棟の1フロアを完全にマシンが埋め尽くしていたのだけど、今は半分くらいの面積しか使っていない。
マシンの数が減っているので消費電力も半分以下に減っている。
しかし、パワーは上がっていて、初代の 40TFLOPS に対して、1.31PFLOPS (1310TFLOPS) となっている。
30倍くらいの性能アップだ。
説明員の人に話を聞いてみた。
地球環境のシミュレーションに使うのはもちろんのこと、数値風洞実験など、ほかの用途にも使える。
ずっと前に、新幹線の走行状態における騒音発生源の特定のためのシミュレーションに使われ、パンタグラフなどの形状が見直された話を聞いたことがある。
…と話したら、まさにそのシミュレーションを行ったのが、説明員の方だったそうだ。
その後何か面白い用途はありましたか? と聞いたところ、釣り用ルアーの開発に使われたりしたという。
投げた際には空気抵抗がなく遠くまで投げられ、水の中では適度な抵抗を受けて魚のように泳ぐ。
そうしたルアーを作るには、投げられた状態を作り出さないといけないため、静止状態で調べる通常の風洞実験では不可能で、数値風洞が使われたそうだ。
ところで、フロアの入り口には、携帯電話の電波を出さないようにするお願いがあった。
部屋の中の照明は、なんだか特殊なもので、蛍光灯のような電気ノイズを出すものは使っていないようだ。
地球シミュレータのような用途では、直前の計算結果を使って繰り返し計算を行うことが多い。
途中で 1bit でもデータがコケてしまうと、結果は全く違ったものになりうる。
そこで、ノイズには気を使っているそうだ。
照明は、フロアの端でハロゲンランプで発生した光を、反射させながら途中で少しづつ外に光が漏れるような、特殊な透明パイプによって行われている。
この照明で、なにか賞を取ったそうだ。
こうした、計算機を置くための周辺環境から気を使って、世界最高レベルの計算力が手に入る。
この日は、人が入れるように床がパネルで保護されていた。
そのパネルは、ガムテープで張り付けられていた。
妻が「ガムテープを勢いよくはがすと、結構激しくプラズマ放電したりしますけど、そういうのは大丈夫ですか?」と聞いた。
なるほど、確かにすごいノイズになりますよね、と言われた後、そんな質問は初めてだ…と少し答えに窮し、多分わずかなノイズなので大丈夫です、と答えられた。
そこで気になって「メモリモジュールとか、パリティ付きですか?」と聞いたら、もちろんパリティ付きだとのこと。
メモリモジュールがパリティ付きであれば、わずかなノイズでエラーが起きたときには、検出できる。
常時さらされるような蛍光灯ノイズのようなものは、万が一に備えて完全排除するが、一瞬のガムテープノイズのようなものまで気にするほど脆弱ではない、ということだろう。
これで、ほぼ見終わり。
子供が「もういちど消しゴムハンコやりたい」というので図書館に戻る。
スタンプを押す紙はいろいろ用意されているのだけど、最初は図鑑のように全部押すつもりで、ノート状のものをもらった。
今度は、子供たちは白紙のシール台紙。
気に入ったスタンプを、シールとして使えるようにしたいようだ。
僕はブックカバーにできる紙をもらった。
そこに、深海の風景を作っていく。
…好きな生物押していたら、魚がほとんど入らない。
タコとかイカとかクラゲとか、ふわふわした感じのものが好きなんですよ。
そのうち、終了時間が来たので終わり。
一日中たっぷり楽しめました。
実は、時間の関係でゆっくり見られないところもあったのですが…
またの機会があれば行きたいところです。
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