知人から氷川丸の株主優待券をもらっていた。
6月30日までの有効期間。
じゃぁ見に行こう、と思ったのだけど、なかなか日程が合わなくて、6月30日にやっと行ったのだ。
以前一度見に来た時は、中華街で春節パレードをやっていたので、そちらを見るのを優先した。
とはいえ、石川町駅から中華街を通り、氷川丸まで一応行ったうえで、山下公園をぶらぶらと端まで歩いて、関内駅に戻るコースを歩いた。
その結果、子供たち全員歩き疲れていた。
今回はもう少し楽をすることにする。
桜木町で降りて、観光地を巡るバス「あかいくつ号」に乗って氷川丸まで行く。
…氷川丸に一番近いバス停、「山下公園前」は、コースのかなり最後のほう。
途中で「中華街」で降りて歩いたら、3分程度の距離を、バスは10分以上かけて到着する。
この程度は歩いたほうが早いかも。まぁ、いろんな観光地があることを見て回れたのは、子供にも楽しかったようだが。
氷川丸は90年近く前に建造された船だ。
豪華客船として作られ、日本・シアトル間を航行していた。
チャップリンが日本に来た際にも、氷川丸に乗船している。
しかし、就航から10年ほどして、第二次世界大戦が勃発。
氷川丸は軍に徴用され、病院船となる。
病院船は国際法上保護されるとはいえ、戦闘地域を航行することになる。
氷川丸も、3回機雷と接触して損傷したそうだ。
しかし、豪華客船として安全重視の構造となっており、船底は二重構造になっていた。
(氷川丸の建造前に、タイタニック号の沈没事件が起きている。おそらくはそれを踏まえてのことなのだろう)
このため、機雷による損傷にも関わらず、沈没しないどころか、航行可能だったそうだ。
ある意味軍艦より強い。
そして敗戦。
氷川丸は、帰国兵の引き揚げ船となる。
それらの任務がすべて完了し、再び豪華客船としてシアトル航路に戻る。
その後、老朽化のため現役引退。
しかし、この数奇な運命をたどった豪華客船を保存しよう、という運動がおこり、横浜港に係留されることになった。
ただ浮いているだけで「現役の船」ではないことを示すため、自力航行できないようにプロペラは取り除かれたが、建造時には最新鋭だったエンジンなどはそのまま残されている。
…と、氷川丸の概要はこんなところ。
大まかには知っていたが、細かいところは行ってみて初めて知った。
見学コースとしては、まず客席通路を通り、一等食堂に向かうことになる。
わかりやすく「豪華客船」らしいところだ。
食堂前には、託児室がある。
乳幼児を預け、ゆっくり食事を楽しめたそうだ。
食堂の中は食事内容も含めて当時の様子が再現されている。
ここまで、音の演出が素晴らしい。
乗船してすぐに、出航を告げる銅鑼の音、汽笛の音が聞こえ、食堂ではカトラリーのかすかに触れるカチャカチャという音が聞こえる。
この後、一等読書室。期間限定で、病院船時代の様子などのパネル展示を行っていた。
一等社交室、一等喫煙室。
男性は主に喫煙室で、女性は主に社交室で、一緒に乗船した人との親交を深めたようだ。
社交室は優美な、喫煙室はシンプルながらゆったりとした調度が残されている。
さらに、一等客室。
広くはないが、ベッドと洗面台を備えた部屋だ。通常は2室が扉でつながっている。夫婦などでの乗船が多いためだろう。
そして、一等特別室。ここは1部屋しかない。
広いベッドルーム、バスルーム、ティールームの3部屋が1つながりになっている。
チャップリンや、皇族秩父宮が使用したそうだ。
…と、ここまでが豪華客船らしい船内の見学コース。
コースを見ている最中に、正午に汽笛を鳴らすので、汽笛近い操舵室・船長室あたりの人は大きな音に注意、というアナウンスが入った。
長女と次女、これを聞いて、汽笛を聞きたくて仕方がない。
コースは後戻りできないので、それでも内容は見ながら早足に進んでいた。
そして、一等特別室を見た後、船室を出てデッキを進み、階段を昇れば操舵室というところで…
正午の汽笛が鳴った。
余りの大きな音に、体がびくっとして、動きが止まってしまった。
アナウンスにあった操舵室あたりで聞きたい、と言っていたのだけど、そこまで進まないでも十分に大きな音だった。
一瞬のち、あまりの音に僕も含めて3人で笑い出す。
あ、そうだ。この大きな音をビデオにとらなきゃ、と思ってビデオをとりだした途端、音は止まった。
長男と妻は、船内の展示をゆっくり見ていて、一等特別室の前にいた。
あぁ、汽笛だ、とは思ったけど、それほど大きな音ではなかったそうだ。
船室内は、十分に防音できているのだろう。これも豪華客船だからか。
操舵室、船長室を見る。伝声管で連絡できるようになっているので、あえて二手に分かれて進み、通話を試みたりする。
操舵室横には無線室もあるようなのだけど、こちらは中を見られなかった。
興味あったのだけど残念。
その後、船底に降りて機関室。
とにかく巨大なディーゼルエンジンが、2基。
機関室って、もっと通路も狭くて機械だらけかと思ったのだけど、結構通路幅は広くとってある。
その後厨房…と言っても、「ここにあった」というだけで現在は見られないのだけど、その横を通って三等客室へ。
1等と3等だけ見られて2等は見られないのだけど、まぁこの中間だということなのだろう。
3等客室は1室で8人。2段ベッドが並んでいる。
見知らぬ同士が1カ月ほど一緒に生活するので、まぁ、大抵は仲良くなってしまうらしい。
豪華客船だから、三等客室だと言っても、十分なお金持ちでないと乗れなかったはず。
乗船して最初に見る「一等食堂」は、当然ながら一等客室の客しか入れない。
当時としては珍しい、豪華な西洋料理がふるまわれていて、食後にもフルーツなどのデザートがあったようだ。
しかし、三等客室向けには普通の食堂があり、焼き魚など、普通の日本食が提供されていた。
長い船旅は暇なので、三等客室の客は、厨房でジャガイモの皮むきを手伝うなどの仕事もして、代償としてフルーツをもらう、などのこともあったそうだ。
同室の人と仲良くなるだけでなく、船員などとも仲良くなり、アットホームな雰囲気だったとか。
最後に、氷川丸に乗ったことのある人などの思い出話をまとめてあるコーナーがあった。
ノーベル賞学者の、小柴昌俊先生の思い出話があった。
国費留学でアメリカにわたるために、氷川丸の一等客室に乗ったのだそうだが、連日の豪華料理に飽きてしまう。
そんな折、三等客室で「焼きサンマが出る」というので、三等客室の人に頼み込んで食事を変えてもらったという…
いい話だ。人柄がにじみ出ている。
さて、氷川丸の途中で正午の汽笛が鳴ったように、昼を過ぎている。
長男が興味を持っていたので、ミュージアムショップで、レトルトのドライカレーを買う。
氷川丸の一等食堂で出していた人気メニューの再現だという。
そしてすぐ、山下公園前の大通りを渡ってすぐのところにあるマクドナルドへ。
昼を結構すぎ、お腹が空いていたのでみんなセットメニューを頼んでしまったのだが…
後で考えると、これ失敗でした。
その後、すぐ横に立っているマリンタワーへ。
…入り口で入場料を見て躊躇する。
昔もっと安かったよね? 大人 750円もする。
でも、子供に見せてやりたかったので入る。
昔は大人 500円くらいの、気軽に入れる値段設定じゃなかったっけ…
と今調べたら、前売り券は今でも 500円程度で入手できるようだ。
急に思いつきで行ったので、確認不足だった。
マリンタワー…まぁ、展望台ですね。特筆すべきことはなし。
でも、「昔、大科学実験で、マリンタワーの影追ってたの覚えてる?」と子供たちに言ったら、長男は覚えていた。
それだけでなく、わずか5分くらいの間でも、影が結構動くのを発見して「大きいから結構動くねぇ」と感心している。
せっかくなので、家族全員で観察してみたが、5分程度でわかるくらいに影が動く。面白い。
長男はそろそろ帰りたがっている。
来週は塾でテストがあるので、テスト勉強したいそうだ。
氷川丸のチケットがこの日までだったので無理やり連れてきたのだけど、長男は本当にスケジュールが忙しい。
でも、長女は中華街に行きたい。ゴマ団子が食べたいのだそうだ。
で、どちらにせよ駅に行くには中華街を通るので、中華街まで歩いたのだけど…
さっきマクドナルドで腹いっぱい食べたので、点心なんて食べられる気がしない。
先にお土産(中華食材など)を買ったのだけど、まだお腹は空かない。
結局、「ゴマ団子だけ食べられればいい」というので、2個100円のゴマ団子を、3セット買います。
お店の人が1つおまけしてくれて、7つありました。
ゴマ団子を食べたかった長女は2つ。長男と次女は1個半。親は1個づつ。
実は結婚記念日の翌日だったから、中華街でうまいもん食おうとも思っていたのだけど、かなわず。
ここからなら、石川町に出るのが近いのだけど、妻が寄りたい店があるというので関内に向かいます。
途中、横浜スタジアムがすごく騒がしい。試合をやっているらしい。
この日は熱かったので、横浜スタジアム前のファミリーマートでアイスを買います。
駅前まですぐなので、駅前のガード下の広場で座って食べていると…試合が終わったらしい。
カープの服を着ている人と、ベイスターズの服を着ている人が大量に駅に押し寄せてきた。
しまった。もう少し早いタイミングで帰っていれば空いていたのに、電車が混むようになってしまった。
しかし、この休日の観光は、これでほぼ終わり。
先日は三笠を見て、今度は氷川丸を見たわけですが、どちらも「記念に残されている船」とはいえ、全然違うものでした。
軍艦と豪華客船だから違うのは当たり前なのだけど、見比べてみると違いがよくわかる。
今年中には、日本丸にも行ってみようと思っています。
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