以前書いたように、サターンで人気のあったゲームを ST-V でも出してもらう、という方向でいくつかのゲームがリリースされました。
サターンで人気、と言えば(株)トレジャーをほおっておくわけには行きません。
メガドライブで高い技術力を見せつけるゲームを発売し、そのままサターンのゲームも作成していた人気会社です。
詳しい経緯は知らないのですが、最初はサターン用に何か発売できるゲームはないか、とお願いをしに行ったようです。
でも、この時点でトレジャーが出しているサターンソフトは「ガーディアンヒーローズ」のみで、あまり業務用向けの内容ではなかった。
そこで、サターンで次に出す予定だった新作を、サターン発売前に ST-V で発売する、ということになったようです。
それが、1998年5月発売のレイディアントシルバーガン。シューティングゲームでした。
ST-V で動作するようになった最初のバージョンは、その時点ですでにかなり面白い物でした。
まだ開発中なので、途中の面までしか作られていない。バランスもこの時点では悪かった。
なのに、すごく面白い。
シルバーガンを知らない方のために説明しておくと、一応シューティングゲームです。
でも、すごく独特。パズルみたいなところがあります。
ボタンは3つ。どれも攻撃ボタンで、違う弾が出ます。
それどころか、同時押しでも違う攻撃になり、全部で7種類の攻撃が出せます。
でも、強力な攻撃で敵を一網打尽…ではだめなのです。
敵には3種類の色があり、同じ色を連続で倒していくと、その時倒した武器が強くなっていく。
どこでどの武器を使うか、よく考える必要がありました。
そして、何よりも独特なのが、「ほとんどがボス戦」というゲーム内容。
雑魚が出てくる部分は最小限で、だから「同じ色の敵を連続」も、よく考えないといけない。
そして、パワーアップした武器で、動きに癖があって、攻略しがいのあるボスに挑みます。
ボスはそれぞれ個性的で、作るのが大変そうなのがわかりました。
でも、新しいバージョンが送られてくるたびに、どんどんボスが増えていく。
ボス登場の際には、ボスの名前が表示されるようになっています。
この名前と、ボスの動きを見ると…過去の名作シューティングゲームとか、アニメとかを、いろいろとパロディ化しているのがわかる。
送られてきたバージョンは、部内で自由に遊べるようにして、意見をトレジャーに送っていました。
かなり元ネタが明らかなパロディに対し、「著作権的に大丈夫なのか」と心配する声も多く出ました。
一部は少し名前を変えたり、おとなしい表現になったのではなかったかな。
#それでも元ネタははっきりとわかるのですが
新しいバージョンが来るたびに、役得でやりこみました。
もっとも、僕はシューティングそれほど得意ではなくて、最後まではいけませんでした。
最後までクリアしていたのは部内で数名だったかな…
とにかく、シルバーガンの凄さを語ると、いくら文字数があっても足りません。
熱く語っているサイトもたくさんあるので、知らなかったけど興味ある、という人は、そういうページを参照してください。
ある時、ST-V 独特の処理…BIOS 関連だったと思うのですが、わからない部分があるので教えてほしい、という要請が来ました。
僕はテクニカルサポート課ではありますが、BIOS を作ったのは別の先輩。
その先輩と、直接担当の営業の人と、3人でトレジャーを訪問します。
立場上訪問はしたものの、質問は先輩の専門部分なので僕は特にやることなし。
営業の人と一緒に、トレジャーの開発中のゲームなど見せてもらっていました。
先輩はシルバーガンのプログラマーの人と話し込んでいましたが、どうやら「わからない部分」というのが開発用ハードウェアの不具合のせいだったようです。
別の基板を貸し出す、と約束して決着したと思います。BIOS を作った先輩が来る必要はなかった。
さて、要件が終わったから帰りましょう…となった時に、営業さんがトレジャーの社長から呼び止められました。
せっかく来てもらったのだし、焼き肉でもどうですか、とのこと。
たしか、まだ17時前だったと思います。就業時間中。
でも、社長のおごりにするから全員で行こう、となってトレジャーの人全員と焼き肉会。
#締め切りが近いチームの人は参加しなかったかも…
セガの、ST-V に詳しいプログラマが二人もいますし、トレジャー側も技術力の高い人ばかり。
いろんな技術話などで盛り上がった…ように思います。
作成中のシルバーガンについても、難易度調整とかどうですか? と聞かれたのははっきり覚えています。
作製チームはこれでいい、と言っているのだけど、社長さんから見たら難しく感じるので、外部の人から見てどうか、という質問。
僕はシューティング得意ではないのですが、テストプレイでやりこんでいたので十分普通に遊んでいました。
部署内でも、上手な人は普通にクリアできています。
ゲームセンターに置くなら腕の立つ人も多いので、このままでよいと思います、と答えました。
…今考えると、シルバーガン難易度高いよね。
パターンゲームなので、繰り返し遊ぶうちに覚えてしまって、普通に楽しめるようになるのだけど。
その後、完成が近づいた時に、営業の人からローマ字フルネームの確認を受けました。
スタッフロールに名前入れるから、間違いがないか確認だって。
AC/SS 版には、Special Thanks として、BIOSの先輩、僕、営業さんの3人の名前が入っています。
…でも、上に書いたように、僕何にもしてない。
部署内で遊んでもらった報告取りまとめたり、大量生産に必要な書類書いたりして、焼き肉おごってもらっただけ。
しかしまぁ、入れてくれるというのだからありがたい…その時は軽く考えていました。
面白いゲームだから、そこそこ売れるだろうな、程度にしか思ってなかったから。
…後の評価は、伝説級ですね。
こんなゲームに名前を入れてもらえたというのが、すごいことでした。
発売された業務用は、シューティングゲーム好きの間で高い評価を得ました。
いや、賛否両論と言った方がいいかもしれない。
好きな人は好きな一方で、パズル性が高すぎてシューティングではない、という人もいたから。
でも、物議をかもしたというのはそれだけ存在感があったということです。
しかし、「商品」としては、実はあまり良いものではありませんでした。
攻略するタイプのゲームだから、マニアに攻略されると、あっという間に1プレイの時間が伸びます。
100円で最終面まで行く人が続出、とかになると、お店としては採算に合わないのね。
その上、業務用に置かれて話題になっているうちに…発売1カ月目くらいに「サターン版を7月に発売する」という発表。
ST-V版が5月発売で、それから1か月後くらいですから、もう来月には発売するという予告ですね。
先に書きましたが、もともとサターン版を作成していて、それを業務用にも「発売してもらった」感じでした。
だから、本来トレジャーの人たちが作りたかったのはサターン版。
サターン版では、CDの大容量を活かしてストーリーシーンを入れ、業務用では意味不明だった数々の「謎」が解き明かされる。
…このゲーム、いきなり3面から始まって、次に2面に進むか4面に進むか選ぶんだよね。
これ、ストーリーがあると何やっているのかわかるのだけど、業務用だと意味が分からなかった。
しかしまた、業務用を気に入った人からは「余計なストーリーシーンが入ることでテンポが悪くなった」とか言われるわけです。
一方で、独特の世界観を持つストーリー展開を絶賛する向きもある。
でも、サターン版の発売告知は、店舗から見ると採算性をさらに落とすものでした。
1か月後に入手可能とわかったらみんな遊ぶのをやめてしまったから。
当然ながら、この後業務用のカートリッジも売れ行きが落ちます。
サターン版はせめて半年待ってほしかった…店舗側から当時聞かれた意見のようです。
さて、業務用での収益があまり良くなく、カートリッジもあまり売れていない。
営業上は「このゲームはあまり売れていない」ということになります。
どうも、サターン版の作成枚数は、この実績をもとに決められたようです。
でも、先に書いたようにゲーム好きからは高く評価されていた。
業務用の収益が悪いのだって、みんなサターン版を待っているからです。
結果、発売前の予約でほとんど売り切れ。
発売日まで待って購入しようとしても、店頭にはほとんど並ばず、買えませんでした。
その後の再生産もなし。中古品にはプレミアがつき、定価の3倍…1万5千円から、特に高い時には2万円くらいになりました。
僕としては、エンディングにも名前入れてくれたのだし、サターン版1枚くらいもらえるのでは…
と思って予約しておらず、結局入手に失敗しました。
数年後に中古品入手したので、ちゃんと手元にはありますけど。
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