2017年10月11日の日記です


オーラ占いの企画  2017-10-11 18:34:53  業界記

オーラ写真倶楽部の話の続きです。


手相の人気で作られた「続編」なので、同じチーム編成が求められたようなのですが…

手相の時のメインプログラマも、企画者もすでに退社していました。


メインプログラムは、手相の時のメインプログラマと仲の良かった先輩がやることになりました。

仲が良かった、というだけで「なんかわかるだろ」という関係者扱い。


ゲームについて確固とした考え方を持っている人で、コラムス97を作っている時に「処理落ちは許さん」と言ったのはこの人。


その先輩と僕の二人がプログラマ。後の話ですが、僕の同期が追加されて3人になります。



手相のグラフィックをやった人は、メインもサブも、まだいました。

でも、こちらはオーラ写真には関与せず。なぜかは知りませんが、単に別のプロジェクトにかかわっていて忙しかったんじゃないかな。


結局、女性の先輩一人でほぼ絵を描いていたはずです。

この人、仕事が大好きで…というか、会社の近くに一人暮らしだったので、家に帰るのが「寂しかった」ようで、夜遅くまで働いていました。


女性は深夜残業が認められなかったので、夜11時には帰るのですが、よく「男の人は残業できてずるい」と言っていました。



デザインは、ほかにもデザイン課長が手伝っていたり、スポットでいろいろな人が入った気もするけど、よく覚えていません。



そして、企画は2年目の新入社員。

普通、2年目ならまだ他の人のサポートをしながら仕事を覚える時期ですが、彼はいきなり実践投入されたわけです。

しかも、人気があって続編を望まれたゲーム。かなりのプレッシャーだったようです。




オーラの制作過程を語る上では、企画者の彼のことをもう少し書いたほうがよさそうです。


彼はセガに入社はしましたが、それほどゲーム好きだったわけではありません。

まぁ、遊んだりはしたようですが、「おもちゃ会社」としてのセガに入社を希望していたのです。


後にセガのおもちゃ部署は「セガ・トイズ」として独立会社になるのですが、当時はまだおもちゃ部署。

アンパンマンとミッフィーちゃん、そして幼児向けコンピューター「ピコ」が主力商品でした。



彼の席は、面白そうな新発売おもちゃだらけでした。

当時入手困難だった「白いたまごっち」を自慢されたこともありますし、おもちゃの範疇には「ネオジウム磁石」なども含まれます。


ネオジウム磁石って、小さくてもすごく強力なやつね。

今時100円ショップでも売っていますが、当時は発売されたばかりで、小さなものが数千円しました。


これを「すごく強力ですよ」ってゲーム筐体に貼りつけたら、あまりに強力で取れなくなったことなど思い出します。

小さいから引っ張ろうにも持つ場所が無くてね。最後にはちゃんと取れましたけど。



とにかく、彼の興味はおもちゃに向いていました。

それは、ゲームにはあまり興味が無いということでもあります。


彼自身、ゲーム部署を希望していたわけではないのです。

ただ、おもちゃ部署が非常に小さく、希望していても配属されなかっただけで。




企画者を任されたからには、ゲーム全体の作成指示を出さなくてはなりません。


でも、彼はゲームを作った経験はなかったし、世の中のゲームもそれほど深く見てはいない。

もちろん、ゲームで遊んだことくらいはありますけど、作るつもりでは見ていないのです。


だから、指示が常にチグハグ。


占いゲームですが、ST-V で作ることになったので「3Dの演出を前面に押し出す」と彼は決めました。

占いのジャンルを決めるだけでも、ジャンルを描いたパネルを輪に並べて、斜め上から見下ろす雰囲気で…

と、3Dでやろうとする。


でも、「3Dで」と指示を出しておきながら、彼の頭の中のイメージは2Dなのです。

輪っかがあれば、そこに均等にジャンルのパネルが並び、今選択していない項目でもそれなりに読めるつもりでいる。


実際には、パースが効いているために後ろの方に小さくなったパネルがごちゃっと集まり、視認性が悪いです。


実際にできてから、想像とのギャップに苦しみ、「やっぱり2Dで動かして、後ろに下がった時だけ少し表示を小さくすることで、3Dっぽくごまかせませんかね?」とか言い出します。


大体指示通りに作ってみても、今度はあたりまえだけど3D感が足りないと言い出す。


彼自身の中で「3D」が何かはっきりしていないのです。

なんとなくのイメージしかないから、出来上がったものも、なんとなくピンボケにしか思えない。



新人の遠慮もあったのだと思いますが、押しが弱いのも問題でした。

どうもこれは良くない、という状況になっても、はっきりとダメ出しをできないのです。




グラフィックも同じでした。


先に全体に3Dで、とは言いましたが、ST-Vの性能ではそれほど綺麗な3D画像は出せません。

そこで、キャラクターは3Dで作ったものをプリレンダリングしてスプライト表示、となるのですが、ここでも指示が安定しません。


#3Dをプリレンダリングしてスプライト表示…

 簡単に言えば、モデルは3Dで作るけど、最終的には2Dの画像にして表示、ということです。

 カメラアングルもアニメ内容も決まっているのであれば、リアルタイム演算よりむしろ綺麗に表示できます。


彼は最初に、キャラクターとして「猫のダヤン」を使おうと考えました。

オーラという怪しげな世界の雰囲気と合いそうだと思ったから。



一応版権使えないか打診したようですが、無理でした。

でも、「じゃぁ、それっぽい雰囲気の別の絵で」となります。


これが…ダヤンってあまりにも独特の絵柄過ぎて、それらしい雰囲気を出せばダヤンそのものになってしまうし、離れようとすれば全然違うものになってしまうのです。


じゃぁ、いっそ諦めて別の方向を模索すればいいのだけど、彼はそうしません。



こちらでも、彼が新人であること、ゲーム作成慣れしていないので明確なイメージを出せないこと、などがマイナス要因として働いています。




なんか彼の仕事にダメだしばかりしているようですが、作るからには良いゲームにしたいのはみんな一緒です。


彼が不慣れであれば、チーム一丸となって彼をサポートしよう、という話は出ていました。


先輩だからと遠慮することはない。自分が一度出した指示でも、出来上がったものを見て想像と違ったら、思い切ってやり直して構わない。

彼に対してみんながそう言っていました。


でも、多分そういうことではなかったのね。

今考えると、ゲーム作成慣れしていない、「引き出しの少なさ」が一番の問題だったのでしょう。


アイディアを没にするとしたら、別のアイディアを出さないといけません。

でも、彼にはこの「アイディアの引き出し」が少なかった。一つのアイディアに固執し、途中で変えようとはしませんでした。




最終的には、それなりにまとまりました。

決して悪い出来ではないし、及第点行っていると思います。

でも、及第点ということは、ヒットを狙える出来でもありませんでした。




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