漫画は好きなのだけど、この日記でレビュー的なことをやったことはない。
でも、珍しく気に入った漫画があり、単行本発売日に買ってしまったので、紹介してみよう。
「チェックめいと! 魔王さん、手番ですよ!」
先日まで、WEB上の漫画雑誌「サンデーうぇぶり」で連載され、全話無料公開されていた。
僕もそこで読んで非常に気に入った。何度か読み返した。
漫画を読むのは好きでも、読み返したいと思う漫画は少ない。
それに、ちょっと理由があって子供に読ませてみたかった。
ネットで読める、ではなく、読みやすい紙の本を入手しようか、と思った。
とりあえず1巻を購入して、発売前の2巻を予約。
と、購入した数日後、ネット上で全話公開されていたページが消えた。
単行本を発売したから、というのではなくて、掲載されていたサイト自体の方針変更のため、基本的に無料公開はしなくなったのだ。
1巻の冒頭は、ネット上ではカラーだった。でも、単行本では白黒。ちょっと残念。
今日2巻の発売日で届いたのだけど、まだ完結していない。続巻予定。
コンピューターRPG風のパロディ世界観。
長い戦いの末、ついに勇者が魔王の元にたどり着くと、そこにいた魔王は「一緒にゲームで遊ぼう」と持ち掛けるのだ。
魔王は化け狐の少女。純真無垢。
こんなのが本当に魔王なのか? と疑うが、能力は勇者よりもはるかにあり、ゲームで遊ばないと世界を滅ぼす、と脅しにかかる。
勇者は仕方がなくゲームの相手をするのだけど…
最初のゲームはジェンガ。特にゲーム好きでなくても知っているくらいの、超有名ゲーム。
魔王は非常にまじめで純真。勇者の手番でも、邪魔をしないように静かに見守っている。
しかし、配下でゲーム好きの魔物「蝙猫」に「ジェンガはパーティゲームですよ」と諭されて、徐々にバカ騒ぎしながらの楽しいゲーム展開になっていく。
対する勇者は、筋肉馬鹿。勇者として戦闘力は高いが、真面目過ぎて融通が利かないキャラ。
魔王が失敗を狙ってバカ騒ぎをしてきても、同じようにやり返せない。
(魔王に「勇者はそんなことしない人だよね」と言われたせいでもあるが)
2つ目のゲームは「ワードバスケット」。
ゲーム好きなら知っている人も多い有名なゲーム。もっとも、僕はルールを知っているだけで遊んだことはないのだけど。
漫画の中でも、あまり細かなルール説明はない。だけど、話の流れとして、ゲームのルールもなんとなくわかるから大丈夫。
3つ目は「お姫様を助けるのは誰だ」。これは知らないゲームでした。
勇者は、そもそもさらわれたお姫様を助けに来たのだ。
ワードバスケットの話の最後でお姫様をついに見つけ出すのだけど、本物の姫を助けず、お姫様を助けるゲームで魔王と対戦する。
ここまでは、いまでも「サンデーうぇぶり」で無料で読むことができる。
また、期間限定(8月23日まで)だけど、Amazon kindle 版の1巻を無料で読むことができる。
どちらも、連載時の画像データではなく、単行本と同じデータの電子書籍。
つまり、冒頭のカラーページは白黒になってしまっている。残念。
さて、この後はゲームの「仲間」に姫が加わる。
このお姫様、さらわれてきているけど、実は超強くて喧嘩っ早い。
口も悪いし、意地が悪い。そして頭がいい。
およそ「お姫様」らしい、かわいいキャラではない。
そして、逃げようと思えばいつでも逃げられるのに、なぜか魔王に囚われたままでいる。
このお姫様がゲームに参加することで、話がぐっと面白くなってくる。
対戦ゲームに「意地悪い戦略をとる人」は重要だ。
魔王は勇者相手に「一緒に遊ぼう」というくらい純真無垢なキャラ設定にされているので、意地悪はしない。
紹介するゲームも、意地悪ができるような戦略性の高いものは扱っていなかった。
でも、これ以降は戦略性を重視したゲームが入り始める。もちろん、意地悪なのはお姫様。
ヒロインに萌えキャラを求める人は拒否反応を示すかもしれないけど、お話の構成としてはよく考えられている。
最近はボードゲームやカードゲームのような「アナログゲーム」の人気が高まっている。
人気ジャンルなので、さまざまなゲームを紹介する、というスタイルの漫画にも人気がある。
でも、「チェックめいと!」は、そんなに素直な漫画ではない。
ゲームの細かな説明はしないし、奥深さを細かく説明もしない。
ゲームの紹介漫画では、とにかくお話の中でゲームを遊びつつ、その面白さを伝えられればいい。
言い換えれば、ストーリーは添え物で、ゲームで遊ぶことが主眼だ。
しかし、この漫画では、ゲームはストーリーに密接に関係している。ただ遊べばよいのではなく、そこでそのゲームを取り上げることに、深い意味があるのだ。
1巻では、まだそれほどストーリーの上手さが見えてこない。
でも、(まだ単行本出てないけど)お話の最後まで読んだうえで、再び最初から読み返すと、1つ1つの話で紹介されるゲームが吟味されている、とわかる。
紹介漫画が「様々なゲームを遊んでみたい人向けに面白さを伝える」漫画だとすれば、チェックめいと!は、既にある程度ゲームを知っていることを前提に、「ほぉ、そのゲームを持ってきたか」と作者の上手さを感心しながら読む漫画なのだ。
1巻の後半では、勇者も来ない、姫も寝ている状況で、仕方なく魔王が「クロンダイク」を遊ぶ話がある。
有名なトランプの一人遊びだ。魔王が一人遊びに十分慣れている…という描写から、彼女の孤独を読み取ることができる。
次の話では姫が起きてきて、一緒にトランプ遊びをしようとするのだけど、二人ともトランプゲームをそれほど知らない。
ただ、お姫様もトランプの一人遊びは好きだという。(ここに、姫も城の中で過保護に育てられ、孤独であることを読み取れる)
そこで蝙猫が二人に勧めるのが「対戦一人遊び」。
ゲーム好きなのに、そういうゲームがあるのは恥ずかしながら知らなかった。
一人遊びなので、一連の動作を行っている間は、黙々と何手でも続けることができる。
しかし、途中で一度「中断」になると、相手に手順が移る。
一部のカードは共有していたり、相手に見えたりするので、どのような状況で「中断」するかが勝敗の分かれ目となる。
これが、意地悪しか存在しない世界。一度手番を譲ると相手がいつまで続くかわからないので、意地悪以外に勝つ方法はないのだ。
姫は黙々と意地悪をし続け、魔王は姫と言い争いながらも、ちゃんとゲームのルールを守ろうとする。
ここで、言い争いしながらも遊ぶ二人は、非常に楽しそう。
孤独だった二人が、「対戦できる」ことの嬉しさが表現されているのだ。
1巻最後では、もう一人の重要キャラ「猛獣使い」も登場する。
ちなみに、勇者以外は全員女性だ。ヒロインばかりのハーレム物語。
でも、猛獣使いもやっぱりアクの強いキャラで、いわゆるヒロイン像には程遠い。
蝙猫は主に解説役なので、これでやっと「4人用のゲーム」が楽しめるようになる。
ちなみに、勇者は筋肉馬鹿なのでゲームの戦略を全く理解できない。
でも、2巻の途中で頭がよくなっている。
ここの話の運び方も面白い。ちゃんとそれまで出てきたゲームに「頭がよくなった」理由が活かされている。
最初からそうするつもりで話を組み立てていたのだろう。
話としては、ここからが本番だ。だんだん複雑なゲームが紹介されるようになり、「ゲーム漫画」らしくなっていく。
でも、先に書いたようにゲームの紹介漫画ではなく、ゲームを活かしてストーリーが進む漫画。
細かな設定が上手で、「このゲームのためにこの設定を用意してあったのか」と感心すること多し。
興味があったら読んでみてほしい。
ゲーム好きなら感心できると思うし、そうでなくても「世の中にはいろんなゲームがある」と知ることができる。
まだ単行本化されていないけど、最後のゲームでは、アクの強いように見えるキャラそれぞれの内面と悩みが表現される。
ちゃんとそういうことができるゲームを選んでいるんだ。このお話は、最後のエピソードに向けて突き進んでいたのだろう。
誰一人悪人のいない物語。僕はこういうのに弱いんだ。ギャグマンガなのに、最後に泣いた。
WEB 連載時には、掲示板で感想を書けるようになっており、もっと読みたい、もっと続けてほしい、という感想が多く寄せられていた。
僕も同じ気持ちだ。
しかし、最初から話と設定が綿密に絡み合うように組み立てられているのだ。
人気があるから継続、とは簡単にできないタイプの話だろう。
しかし、最後のエピソードで内面が表現され、キャラがより魅力的になっているのは事実。
キャラの輝きが増したところで終了、というのはもったいない。
この世界で、また新たな話を作って欲しい気はする。
8.13追記
僕の影響でうちの子供もアナログゲーム好きなので、読ませてみた。
おおうけ。いくつかのゲームは「遊んでみたい」と言っている。
この漫画はギャグマンガなのだけど、出てくるギャグがわかりやすいのも、子供受けする理由だろう。
多少のお色気シーン(?)はあるけど、露骨な下ネタなどは無いから、子供に読ませても安心。
続巻が早く出ないかと楽しみに待っている。
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