今日は、スティーブン・アンソン・クーンズの誕生日(1912)。
3Dコンピューターグラフィックスの基礎を作った人です。
今では、CG技術に貢献した人に贈られる「スティーブン・A・クーンズ賞」に名前を残しています。
(CG界のノーベル賞、と呼ばれる、権威ある賞です)
元々、CGを研究していたわけではないのです。
第二次世界大戦中、航空機の設計に携わった経験から、「3Dの自由な曲面を数式で定義する方法」を研究していただけで。
しかし、その「3D曲面」こそ、多くの人を悩ませていた難問だったのです。
1967年、クーンズ教授はついに「クーンズ・パッチ」と呼ばれるアルゴリズムを完成し、3D曲面の定義ができるようになります。
ただ、ちょっと扱いにくいところがありました。
後にクーンズパッチを改良し、「NURBS」と呼ばれるアルゴリズムが完成します。
現在、多くの3DCGで使用されている、曲面の定義方法です。
クーンズ・パッチや NURBS が開発される以前は、細かな板や、円筒・球などの単純な図形を組み合わせることで曲面を定義していました。
でも、この方法は手間がかかりすぎて、複雑な形状を作れないのね。
NURBS が完成した今でも、ゲームなどに使われる「ポリゴンモデル」は、板の組み合わせでできています。
曲面に見える部分も、十分に細かな板を組み合わせて、それらしくみせているだけ。
これは、NURBS が計算に時間がかかりすぎて、ゲームなどには使いづらいため。
でも、「ポリゴンモデル」を作成する現場では NURBS で作成されていて、最後に自動的に板に分割させているのです。
話はちょっと変わります。
CGは、アイバン・サザーランドが始めたものです。
彼は、TX-2 コンピューターを使い、「コンピューターで絵を描く方法」を研究しました(スケッチパッド:1963)。
ライトペンを使って直接画面に絵を描けるのですが、単にお絵かきではなく、論理的に絵を作り出し、最終的には「ページ記述プログラム」を生成します。
これ、現在の Illustrator なんかの基礎になった概念です。
偶然ではなく、Illustrator の開発者は、サザーランドの教え子です。
そして、サザーランドは、クーンズ教授の教え子です。
クーンズ教授は複雑な曲面を持つ航空機の設計などを研究していましたが、サザーランドは、設計図を描き出すためのプロッタプリンタを制御するためのデータ(先に書いた、「ページ記述プログラム」)を生成するツールとして、スケッチパッドを作っているのです。
CGを始めたのはサザーランドですが、それもクーンズ教授の影響があってのことでした。
CGの始まりに影響を与え、そこで出てきた「自由な形状が定義できない」という問題を見事に解決した。
クーンズ教授の名を冠した賞が最高の栄誉として作られているのは、このような理由によります。
クーンズ賞の第1回受賞者は、サザーランドでした。
第2回は、「自由曲面」の基礎概念となる自由曲線…いわゆる「ベジェ曲線」を開発した、ピエール・ベジェでした。
興味を持った方は、以前に書いた記事「自由曲面実現の歴史」もお読みください。
「数式で形を自由に定義する」というのが、茨の道であったことがわかります。
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