2017年02月18日の日記です


ハンス・アスペルガー 誕生日(1906)  2017-02-18 17:30:52  今日は何の日

今日は、ハンス・アスペルガーの誕生日(1906)


今日は珍しく、コンピューターとは関係なさそうな話題。


アスペルガーはオーストリアの小児科の医師で、特に精神的な発達障害、今でいう自閉症を研究しました。


当時すでに「自閉症」の研究は始まっていました。

しかし、今ほど理解が進んでおらず、自閉症の原因は知的障害で、言語能力などが発達していないためにコミュニケーションが行えないのだ、と考えられていました。



しかし、アスペルガーは自閉症児との交流の中で、そんなに単純ではないことに気付きます。


通常の…精神病に分類されない人々も、知能の高い人と低い人、言語能力の高い人と低い人がいます。

そして、自閉症の子供にも、同じように知能や言語能力の高低があると理解するのです。


ただ、自閉症児は、振れ幅が非常に大きいのです。

…いや、振れ幅が非常に大きく、通常の人の枠組みを超えるから「精神病」に分類されるのかもしれません。


ともかく、自閉症児は知的障害を持つ、と考えられていたのは誤りで、場合によっては非常に高い知能・言語能力を持つのです。


彼は、こうした例に興味を持ち、多くの症例を論文で報告しました。


しかし、多くの論文は、ドイツ併合下のオーストリアで発表されたものでした。

他の言語に翻訳されることもなく、彼の仕事は世界的にはあまり知られることがありません。


アスペルガーは 1980年10月21日死去。

その直後、1981年に彼の論文をイギリスの精神科医、Lorna Wing が英語翻訳し、彼の報告した症例は「アスペルガー症候群」として世界に知られることになります。




アスペルガーは小児科医で、子供を非常にあたたかな目で見守っていたようです。

彼がアスペルガー症候群を報告し続けたのも、子供を守るためだった、という側面があります。


というのも、先に書いた通り当時のオーストリアはドイツに併合され、ナチスの支配下にありました。


ナチスは優生思想…優れた人間だけが子供を残すことで、悪い遺伝子を排除して、よい社会を作り上げる…を政策に取り入れていました。

ユダヤ人の大量虐殺も、「ユダヤ人は劣っている」という差別意識から行われています。


そして、同じように「先天性の精神疾患は、悪い遺伝子である」という考えから、やはり大量虐殺が行われています。

知的障害者である、というだけで殺されてしまう世の中だったのです。



しかし、アスペルガーは、自閉症の子供の中に「そこら辺の大人よりも優れた知能を持っている」子供がいることを示しました。

しかも、そうした子供も見た目の上では自閉症の…他の知的障害を持った子供と同じなのです。


これは、自閉症の子供を虐殺から守る効果がありました。

専門知識を持たないものが自閉症の子供を殺すことは、もしかしたら「将来の国の宝」を失うことになるかもしれないのです。



オーストリアは、「SOS子供の村」という、世界的な NGO活動団体の発祥の地でもあります。

何らかの都合で幸せな生活を送れない多くの子供を保護する活動で、現在では 100以上の国で 100万人以上の子供がサポート下にあります。


設立者、ヘルマン・グマイナーから要請を受け、アスペルガーも活動に協力しています。

もちろん、彼の専門である小児科医として。


彼はウィーン大学小児病院の理事もしていましたから、多忙でした。

それでも、「子供のために」そうした活動に参加しているのですから、非常にやさしい人だったのだろうと思います。



参考:アスペルガーの生涯(ドイツ語サイト)





さて、ここからは自分の話。

僕は以前に、自分も子供の頃アスペルガーだったのだろう、と書いたことがあります。


アスペルガー医師が研究したのは、ある程度「重度の」子供たちだったのだろうけど、こうしたものは軽度から重度までグラデーションがあるからね。

僕は多分、軽度のアスペルガー。


子供の頃はこんな区分なかったよね、と思っていたのだけど、上に書いたように世界に紹介されたのが 1981年。

日本で知られ始めたのは、1990年代の半ば過ぎだったのではないかと思います。



アスペルガー症候群の問題点…人とのコミュケーション下手は、大人になるにつれて多少改善します。

と言っても、「病気が治る」とかの意味ではないよ。症候群、と言われているけど、別に病気ではないし。


ただ、普通の人なら当たり前にできるコミュニケーションを、何度も失敗しながら覚えていくだけです。

上手くできないと言っても、失敗を繰り返せば覚えざるを得ない。

アスペルガー特有の記憶力の良さがあるから、徐々に「普通」を理解していきます。


僕は今でもコミュニケーション苦手です。

ツイッターやっているけど、あまり人と会話しないし。

WEB ページ作っているのも、これなら一方的に言いたいことを発信できるから、というだけ。



で、自分もそうだからよくわかるのだけど、アスペルガーは非常にプログラマーに向いてます。

研究者一般向いていると思うのだけど、僕はプログラマーだったからね。


…と、ここで普段コンピューターの話を書いている「今日は何の日」で、アスペルガー医師を取り上げた理由が出てくるわけです。




重度のアスペルガー症候群とか、そうでなくても子供のころから「頭が良いから」という理由で、ちょっと変わり者であることが許容されてしまった人とかは、人とのかかわりで失敗して「普通」を覚える機会が失われてしまいます。


これは非常に残念なこと。

先日書いたウィリアム・ショックレーとか、明らかにアスペルガーの悪い面が出てしまっている。


ショックレーはトランジスタを発明したチームのマネージャーで、彼自身も重要な改良発明を行っており、ノーベル賞を受賞し、後にシリコンバレー発展の種となる研究所まで作った。

でも、自分の部下を信用することもできず、周囲のすべてを敵に回してしまうのです。


超が付くほどの天才なのでアスペルガーとしても重度だったのかもしれませんし、天才と持ち上げられることが多かったために、周囲と折り合いをつける方法を学べなかったのもあるように思います。



先に書いたように、僕が子供の頃は「アスペルガー」なんて概念もありませんでした。


しかし、今は理解が進み、軽度の症例でも簡単に「アスペルガー」だと診断されます。

小学校のクラスに一人はいるような、ごく普通の存在。


「クラスに普通にいる」というのが大事ね。

知的障害を伴う自閉症児は、特別学級に入れられることも多いです。


でも、アスペルガーは知的レベルには何の問題もない。

だから、普通に学校に通えます。

ただ、人づきあいが下手だから、いじめにあったりするだけで。

(僕もいじめられたクチなので、本当によくわかるのです)



必要なのは、周囲の大人の理解です。小学生レベルだと、親が気付いてサポートするのが良いでしょうね。


付き合い下手かもしれないけど温かく見守って…でも決して甘やかさないで。


先に書いたように、衝突して失敗すれば徐々に覚えるから、甘やかしちゃいけない。

ただ、失敗しても「ちゃんと学ぶ」ように導いて、失敗のことは水に流してあげてほしいのです。


そして、その子が興味を持ったことは否定せず、とことんサポートしてあげて。



「そんな趣味役に立たない」と考えるのは、大人の偏見です。

子供時代に蓄えた知識は、必ず将来役に立ちます。


僕も子供の頃、クラスに「東海道線の駅名を全駅言える」なんて奴がいた。

それは何の役にも立たないです。でも、駅名を言うことで周囲に受けたのでどんどん他の線の駅も覚えて行って…


最終的に、中学の頃には暗記科目がすごく得意な奴になりましたよ。

なんか、覚えようと思ったことを確実に覚えられるメソッドを、自分なりに獲得したみたい。



僕は小学校の時にコンピューターに興味を持って 4bit マイコンを買ったり、中学の時にはファミリーベーシックを買ったりしました。


御多聞に漏れずコミュニケーション下手だったので、中学では部活にも入らずさっさと家に帰り、自分でゲームを作ってばかりいました。

それをベーマガに投稿するのが楽しかったのだけど、成績が落ちて親に「そんなことをしていても将来役に立たない」と怒られたりもしました。


でも、その時は一時的に禁止されたのだけど、その後勉強もちゃんとやって節度を持つなら、プログラムを組むことを許してくれた。

「役に立たない」なんて言いながら、理解はしてくれていたのです。


おかげで、今では独立してフリーのプログラマでやっていける程度の腕にはなっています。

ちゃんと役に立った。




アスペルガー症候群って、精神病の一種と考えられているから、この症名を聞くと取り乱す人が多いみたい。


でも、これは「周囲から浮いてしまうほど頭が良い子供たち」につけられた症名です。

「この子は天才肌だ」と言われているのだと思ってください。悪いことじゃないんです。


事実、アスペルガー医師自身が、そうした子供に敬意を払い、「小さな教授」と呼んでいたのだから。




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