1997年、とされていることが多いので、僕もそのつもりでいました。
でも、どうやら 1996年中だった様子なので、慌てて文章書いています(笑)
Wikipedia の英語版だと、96年9月13日国内リリース、となっているのだけど、これは日付的に、秋のショーに展示しただけではないかな…
でも、タイトル画面には (c)1996 とあるので、年内に正式リリースまでこぎつけたのだろう。
(1997年発売になれば、1996,1997 と併記される)
で、英語版を 1997年に出して、国内より海外で人気が出たゲームなので、1997年発売とされやすい様子。
ワンサガンの際に書きましたが、1991年頃からガンシューティングゲームのブームが起き、セガでも AM2 研が「バーチャコップ」(1994)を出しています。
ポリゴンボードを使用したガンシューティングゲームとして話題にはなったのですが、この当時 MODEL2 はまだ非常に高価で、ゲームセンターが資金回収できるほどのヒットだったのかというと微妙な所。
しかし、その後 MODEL2 のコストも下がり、1996年の初旬に AM3 研が「ガンブレード N.Y.」を発売。
2研と 3研がポリゴンでガンシュー作ったのだから、1研でもなんか作りなさい、と上層部から指令が出ます。
ガンシューティングは、日本よりもアメリカで人気があります。
実際に銃が身近な国だからね。作るのであれば、アメリカでウケるものを作らないといけない。
ところが、アメリカではゲームを作る際に。日本よりも細かな「レーティング」が定められていました。
これが厳しくて、特に「銃」に関しては使わせまいとする。
銃が身近だからこそ、子供が銃をかっこいいと思うような表現はダメなのです。
このレーティングは、今でもあるのだけど、当時とは基準も違います。
というのも、何か問題があるとすぐに基準が変更されるため。
だから、まず筐体についている銃が本物っぽいのはダメ。
水色とかピンク色とか、一目でおもちゃだとわかる安っぽいつくりにする必要があります。
1992年に「モータルコンバット」という格闘ゲームがアメリカで発売され、大ヒットしました。
このゲームが、実写の取り込みで、勝つと相手の首を刎ねて血しぶきが飛んだり、心臓を抉り出して血しぶきが飛んだりする。
これが問題となり、「血の表現」はNGとなりました。
そのため、バーチャコップでも、相手は悪人…人なのに、銃で撃っても血が出ません。
血が出るのはNGだから、そういう表現を無くしたのね。
でも、そのバーチャコップが問題になります。
ポリゴンを使用した「リアルな表現」で、人に銃を向けるゲームだということ自体が問題視されたのです。
レーティングの基準が改正され、「人に銃を向ける」がNGとなりました。
ガンブレード N.Y. は、敵が「アンドロイド」となっています。
マシンガンで撃っても簡単には倒せない。撃ち続ける必要がある。もちろん血も出ない。
マシンガンで撃たれ続けていても動ける人なんていないですから、明らかに人ではない。
「人に銃を向けてはならない」という基準に対して問題はありません。
…すぐに基準が変えられ、「人型のもの」はNGになりました。
そしたら、確か海外のメーカーが、イルカを狙うシューティングゲーム出したのではなかったかな。
イルカを調教して体当たり兵器とする…という研究が過去になされたのは事実で、それをテーマとしたガンシューティングゲーム。
これが残酷だ、と問題になり、「人型のものや、生物に銃を向けてはならない」とまた基準が変わるのです。
さて、ゲームとしてみた場合、一発では敵が死なずに「何発か撃ち込まないといけない」というのは、いいルールです。
狙いを定めるうえでも、前の着弾点を見て調整できるからね。
何より、一発では倒せないというのは緊張感と、倒せたときの安堵感を生みます。
ガンブレード N.Y. では、そういう部分を中心にゲームを組み立てています。
バーチャコップでは、警察対悪人、という設定での「銃撃戦」を描いています。
ここで問題となるのが、相手が銃を撃ったとしたら、こちらは「避ける」なんてできない、ということ。
そこで、相手がゆっくり動き、動きが完成すると撃ってくる、という形で「時間制限」を意識させています。
ゲームとしては良いのだけど、ちょっと違和感のある部分でもあります。
さて、新しいゲームを作るとしたら、どうすればよいか?
生物ではなく、人型ともいえず、一発では倒せないようなイメージのあるもので、銃で撃つ敵としてふさわしいもの…
相手は銃などを持たず、動きがある程度ゆっくりであるのが自然なものが良いです。
ここで「ゾンビ」という案が浮上してきました。
いろんな条件を満たしていますし、何よりもアメリカ人はゾンビ大好きですから。
#当初は「幽霊」を考えていたそうなのですが、幽霊に銃でダメージ与えるというのも変ですから…
ただ、ゾンビも「人型」だということを懸念する人もいました。
銃による殺人が度々問題になるアメリカで、子供が遊ぶゲームだからこそ、節度を持った使い方がなされないといけない。
レーティングの規制は、そうした背景で作られたものです。
ここでまた、「ゾンビは死んでいるから生物じゃない」とか言い出すのは、趣旨を理解していないのではないか?
しかし、ゲームはゾンビを敵として作ることになりました。この頃の通称は「ゾンビガン」じゃなかったかな。
レーティングにかかるかどうかはわかりませんが、できるだけ人と違う異形のものとして描くしかないでしょう。
#アメリカのゲームのレーティングは、仮に引っかかってもゲームセンターに置けないわけではない。
ただ、第三者の審査でレーティングが定められ、内容によってはアドバタイズ画面で警告を出さなくてはならない。
ゾンビが出てくる時点で「ホラー」なので、恐怖心を煽るための血の表現なども必須。
しかし、ここは先に書いたように「血はNG」でもあるので、色を変えられるようになっています。
緑色なら血ではない、という、これも逃げ口上ですな。
#国内では特に規制がなかったので「赤」で発売されましたが、これには怖すぎるという苦情もあったようです。
設定で色が変えられるようになっていたため、後期の出荷分は工場で緑色に設定されたようです。
全体的なイメージは、サイコスリラー映画の「セブン」の影響を受けてます。
企画者が「このイメージで」と、ビデオを借りてきてみんなで鑑賞会をやったらしい。
チーム全員でイメージを共有してから作成に入ったため、ゲームの印象をまとめ上げるのに成功してます。
#イメージを伝えるためにビデオを見せる…ということ自体は良く行われます。
でも、一シーンを参考にする程度で、「雰囲気を出すために」と、映画丸ごと一本をみんなで見る、というのは珍しかった。
そういえば、謎の事故や病気が相次いだのもこの作品だった気が…
いや、偶然レベルなのだけど、スタッフの車がもらい事故したり、急病で入院してしまったり。
ゾンビのゲームなんか作ってるから祟りじゃないか、って誰かが言い出して、いや、ゾンビは霊と違って祟らんだろうとか言いながら、チーム全員で神社に行ってお祓いしてもらったはず。
そういうのを信じているかどうかじゃなくて、誰かが気にし始めるとチームの士気にかかわるので、念のためやっておくか、というような意味合い。
…と、知っているのはこの程度。
プロジェクト始まってすぐの頃のこういう話は聞いていたのだけど、後は気が付いたら「完成間近」だった。
僕の方もコラムスで忙しかったのかな?
完成何度かテストプレイをやった記憶はあるな。
結構難しいゲームなのだけど、繰り返し遊んでいたのでそれなりに上手になっていた。
そういえば、発売後に部署の先輩が「横浜のゲーセンでクリアしたら、見てた女の子に大うけで仲良くなれた」って喜んでたっけ。
このゲームはヒットして注目度が高かったし、その先輩もテストプレイ繰り返していたからすっかり上手になっていたのね。役得。
当初の狙い通り、日本もさることながら、アメリカやイギリスで大ヒットになりました。
その後、確かイギリスのゲーム雑誌がチームに取材して、雑誌が送られてきたのね。
その雑誌では、タイトルが長すぎるので、独自の略称をつけていました。
本来のタイトルは The House of The Dead 。部署内では「デッド」(語尾上げ)って呼んでました。
海外での一般的な呼称は HOD 。長いから The は省略した上で、頭文字を取っているのですね。
でも、その雑誌は The HOT-D という略称にしていました。
この略称かっこいいな、って企画の人が喜んでました。
その後シリーズ展開するにつれ、半ば公式に HOD が使われるようになったので、The HOT-D って呼んでた人はいないんじゃないかな。
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