1995年…なのだけど、いつ発売したのか記憶が定かでないため、2016年まで待ちました。
もう確実に20年超えているから、そろそろいいよね。
とはいえ、僕は同じ部屋にいただけで、それほど詳しくは知らない。
まず、作成チームは基本的に「ウィングウォー」の方々です。
見た目が似ているから「アフターバーナーのリメイク」的に捉えられることがあるのだけど、そうではない。
ただ、「気軽なフライトシミュレータ」であったウィングウォーがあまりヒットしなかったので、もっとアクションゲーム寄りに調整しようとはしていて、結果的にアフターバーナーっぽくなっていたのは事実です。
ところで、アフターバーナーって高空を飛んでいるはずなのに、地面のスクロール速度が速すぎる。
まるで、超低空飛行しているみたい。
敵も、遠くに出現したと思ったらいきなりすぐ近くにいたりする。
3Dで高空を飛んでいるはずなのに、視界が非常に狭い。
速度感を出す演出として、嘘をついているのですね。
ウィングウォーでは、ハリアーと複葉機が同等に戦えたり、ビルにぶつかっても「空中でスピンする」だけだったりという嘘はついているのだけど、飛翔感については嘘をついていない。
スカイターゲットは、ウィングウォーの延長に作られたゲームです。地面を高速スクロールするような嘘はつかない。
だから、アフターバーナーに比べて地面はずっとゆっくりスクロールする。
3Dの演算も嘘をついていないので、遠くにいる敵が、小さく、ゆっくり動く。
その間に狙って迎撃してしまえば怖くない。
…迫力を出せず、ゲームが単調になる。
そこで、巨大なボス敵で迫力を出す、という演出が重視されます。
翼長 1km の超巨大爆撃機、とか、飛ぶわけないものが空を飛んでいる。宮崎駿の世界。
これすらも、3Dパースによって小さく見えてしまうので、登場の瞬間だけカメラワークを切り替えて、巨大さを伝えようと努力する。
スカイターゲットは、極端な設定から一部では「バカゲー」扱いなのですが、そうでもしないと迫力を演出できなかったのです。
このゲーム、いろんなところで無理してます。
ボスが無暗と大きい、というのも、迫力を出すための無理。
自機が飛んでいるのを3Dで追いかけている…ように見えますが、実際には奥方向への強制スクロール。
自機の向きとカメラの向きは違うので、どこを狙って撃つのかわかりにくい。照準を出してカバーしています。
しかし、自機が動くと機体は傾き、画面全体も回転します。
これにより、左右の敵を狙おうと動くと、画面が回転して敵の位置が変わってしまい狙いが定まらない。
リアリティを求めるのか、嘘をついてゲームとして面白くするのか、どっちつかずの状態で困ったことになっています。
これ、企画者の人はかなり困っていたらしい。
実のところ、ゲームとして面白ければリアリティなんてどうでもいい、というつくり方でやっていたらしいのだけど、偉い人が噛みついた。
せっかく3Dで正確に計算できるのだから、嘘をついてはいけない。リアルにしろ、と言い出したのです。
これが、はるかに偉い人だったら、時々しかゲームを見に来ないからごまかしようもあります。
その時だけ聞いたふりして、自分の好きなように作っちゃえばいい。
でも、現場の偉い人だったのですね。
現場の人だからゲームのことわかっているはずなのに、この頃は3Dの出始めだったので幻想持っちゃってて、リアリティを目指せとか言い出す。
妥協、妥協を繰り返して、偉い人が納得する程度のリアリティを盛り込みながら、ゲームとして楽しめるための嘘をちりばめる結果になりました。
あまりヒットしなかったのは、遊ぶ人に「無理している」ことが伝わって、気持ちいいゲームになってなかったからだと思っています。
グラフィックに関しては、素晴らしいものでした。
MODEL2 のゲームって、「段ボールみたい」とか「プラスチックみたい」とよく言われました。
グラフィックの作り方に癖があって、質感を上手に出すのが難しいのね。
でも、スカイターゲットの CITY AREA …夕暮れの空で戦う演出で、ちょっとしたブレイクスルーがありました。
この話をするには、MODEL2 のグラフィックの説明から始めないといけませんね。
MODEL2 のテクスチャは、モノクロ16階調です。
そして、光源との角度を計算して、16段階の陰影がつけられます。
問題は、これが「32階調のパレット」で表現されることなんです。
32段階のグラデーションがあって、16段階の「明るさ」によって決まる位置から、16色分を使って画面表示を行う。
みんな、このグラデーションパレットを、特定の色調で、最も明るいところから、最も暗いところまで、均等割りにして作っていました。
そうしないと、「明るさ」を変化させたときに、明るさだけが変わった同じ画像に見えないためです。
ところが、最も明るいところから暗いところまで…コントラストを大きめにすると、つやつやとしてプラスチックっぽくなる。
少し抑えめにすると、角度による色の違いがほとんどなくなって、段ボールっぽくなる。
スカイターゲットの CITY AREA では、夕暮れを表現するために、自機のグラデーションを全体にかなり暗めにしました。
金属質の飛行機を表現するため、色合いは灰色系統です。
ただし、夕暮れの光が当たる、という演出で、一番明るい部分だけを、赤系統で極端に明るくなるグラデーションとしたのです。
これによって、夕日に照らされるギラギラした感じを表現できました。
先に書いた通り、MODEL2 は「モノクロ16階調のパレット」として作られています。
でも、この方法は、パレットの途中から色が変わります。モノクロではないのです。
当然、モノクロとして描かれたテクスチャも、不自然な色変化を起こします。
しかし、単体としては不自然でも、モデル全体でみればそれほど違和感がないのです。
「グラデーションを極端にして、別の色を混ぜてしまってもよい」という、ただそれだけの単純な話。
でも、スカイターゲット以前は「モノクロテクスチャ」という概念に引きずられ、誰もそうした設定を試していなかったのでした。
スカイターゲット以降の MODEL2 ゲームでは、こうしたグラフィックの描き方が普通に使われ始め、もう「段ボール」などと言われなくなりました。
最後にゲームとは関係ないことを。
発売後、あまりウケなかった、と評価が確定した後の話。
いつも話を面白おかしくすることに長けた人が、「名前が良くなかったよねー」と。
だって、「スカい」でしょ? 名古屋弁で「はずれっぽい」って意味だよ?
それ以降、このゲームを思い出すと常に、タイトルの3文字目がひらがなです。
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