日記でゲームのことを書くことはめっきり減りました。
子供が生まれる前は良く書いていたのだけど。
で、今日書きたいのは A Dark Room 。
無料で遊べる、Javascript のゲームです。
海外では 2013年後半ごろに話題になったようで、作られたのは5月ごろみたい。
でも、当時は英語版しかなかった。
このゲーム、文章がかなり重要なので、日本人にはハードル高くて、それほど話題にならなかったようです。
今は日本語対応しています。
でも、もう旬を過ぎたのであまり遊んでいる人いないみたい。
やっぱり、日本では話題になっていない。
ゲームを始めると、ブラウザの左上にそっけない文字が書かれています。
火は消えている. 部屋は凍える寒さだ. |
暗い部屋
火をつける |
これだけ。
火をつける、は枠が描かれていてボタンなのかな、と思えるので、押してみましょう。
左側に新たな文章で状況説明が出ます。
火は燃えている. 火の光は窓から暗闇にこぼれだしている. |
「火をつける」は、色が薄くなり、「薪を燃やす」に変わります。
背景に縮む帯が出て、ボタンが押せなくなる。
…これ、行動制限を示しているようです。帯が縮み切れば次の行動を出来る。
非常に簡単なゲームなので、多くは説明しません。
ちょっと驚く仕掛けが次々と現れるので、自分で体験してみてください。
どんどんできることが増えて、仲間が増えて、村を作り、冒険に乗り出すことになる。
でも、自分が出来ることは基本的に「押すとその後しばらく押せなくなるボタンを押す」ことだけ。
いや、後半は別の操作が中心になるかな。
でも、やっぱりボタンを押すことは大切。
すべての状況は、短い文章で表示されます。
これが非常に良い雰囲気。文章と文章の「行間」を感じさせて、足りないところは自然に想像がはたらき、自分が物語世界を感じていくのがわかる。
このゲームは全て、「感じ取る」ことが重要なようです。
最初に「火をつける」のボタンを押す際も、何の説明もありません。ボタンに見えるから押したくなるだけ。
どんどん新しい状況になり、表示が追加されても、それが何を意味するのか、一切説明はありません。
自分で想像し、ルールを把握して行くことが中心のゲーム。
最初はなにも明かされていませんが、だんだんこの世界が何であるかわかってきて、最終目的が見えてきます。
最終目的を達成できればゲーム終了。
でも、ゲームはそれで終わりではありません。2周目が始まる。
先に書いたように、「ルールを把握する」ことが大切なゲームなので、2周目はつまらない…
なんてことはない!
2周目になって初めて起きるイベントもあります。
何度も遊んでみないとわからない仕掛けが沢山。
これは、話題になった理由もわかります。
日本語化された今、是非遊ぶべきゲームです。
さて、ネタバレするとつまらないのでこのゲームについてはこれ以上書かない。
ゲーム名で調べると攻略ページなんかもあるけど、このゲームは「ルールを自分で把握する」のが楽しみの8割なので、ネタバレはゲームをつまらなくするだけ。
…と書いておきながら、別のゲームの話題を書きます。
別のゲームと言っても類似点があるので書くわけで、それ自体がネタバレになるかもしれないのだけど。
同時期に、Cookie Clicker というゲームが流行しました。こちらは8月発表、らしい。A Dark Room が話題になった後だね。
こちらは文章はさして重要ではないゲームだったので、日本でも異常な盛り上がりを見せました。
パロディもあったくらい。
僕も Cookie Clicker は遊んでみて、衝撃を受けました。
テレビゲームを作っていた人間として、あんなゲームの作り方があるなんて思いもしなかったから。
元ネタともいえる A Dark Room や、後で書く別のゲームを知らなかったから、余計に衝撃が強かった。
でも、最近 A Dark Room を知ったので、Cookie Clicker はいきなり現れたわけではないと理解できました。
一応、当時の騒ぎを知らない、もしくは知っていても遊んだことは無い人のために、簡単な解説をしておきましょう。
Cookie Clicker は、クッキーをクリックするだけのゲーム。
表示されているクッキーをクリックすると、クッキーが1個生産されます。
生産枚数は数字で表示されていて、押すたびにカウントが上がっていく。
このクッキーを増やしてどうするのかというと、クッキーを自動生産するアイテムなどが買える。
生産してアイテムを買い、それで増えたクッキーでさらに高価なアイテムを買う…というゲーム。
特定条件で開示される「実績システム」とか、最近のゲームによくありがちな仕掛けがちゃんと入っている。
やることは「クッキーを作る」だけなのに。
そして、このゲームがすごいのは、「リセット」が重要な事。
ゲームをリセットすると、もちろん最初からやり直しなのだけど、先に書いた「実績」は残っている。
さらにリセットするともらえるボーナスもある。
これらの「実績」や、ボーナスは、クッキー生産時に「倍率」としてかかってくるので、リセットするたびに自分が強くなる。
このゲーム、かなり時間を使うから、リセットすると「それまでの時間が無駄になる」気がして最初は怖いのだけど、リセットしてからが本当の意味でのゲームスタートだと思います。
何回もリセットしていると、1クリックで1京(10の16乗)のクッキーが生産できるようになります。
これ、リセット無しだと絶対たどり着けない。リセットしてからが本番、というのもそのためです。
「クッキーを作るだけ」という根幹システムの単純さに比して、周辺の仕掛けが大がかりです。
アイテムなどのグラフィックも併せ、このトチ狂った世界観がウケて大ヒットしましたが、ゲームとしてもよく出来ています。
ゲーム制作側にいた人間としては、「おまけ」だったはずの実績システムなんかをゲームのメインに持ってきたところや、恐ろしいほどの点数のインフレに衝撃を受けたのね。
さて、A Dark Room と Cookie Clicker は、どうも共通の「祖先」を持つようです。
話題になったベースを元に、別々の人間が、別の方向で洗練させたのが2つのゲーム、という意味ね。
元になったのは Candy box! というゲーム。
1秒に1個、勝手に Candy が増えて行って(数字表示のみ)、「食べる」「投げ捨てる」というボタンだけが表示されているゲーム。
これも、ある程度キャンディを溜めると、別のアクションができるようになっていきます。
遊んでみると、なるほど、共通の祖先だ、ということがよくわかる。
Candy box! は、基本的に文字だけです。でも、アスキーアートは結構使っている。
文字と簡単なアスキーアートだけ、というのは、おそらくは UNIX 初期のアドベンチャーゲームみたいなのを作ろうとしたのではないのかな、と想像します。
というのも、このゲームは「アドベンチャーゲーム」だから。
キャンディを集めるところから始まるのだけど、最終的には順番にフラグを立てていく、その過程を楽しむゲーム。
(僕はアドベンチャーゲームが好きではないので、残念ながらあまり面白いと思えなかった)
ただ、普通のアドベンチャーゲームと違ったのは、「増えていくキャンディ」を通貨としていること。
その過程で、キャンディを使ってキャンディを生産する、錬金術のようなシチュエーションが登場します。
A Dark Room は、アスキーアートも排して極力文字だけで表現しています。
この文字だけの世界が、ゲームというより「物語」を感じさせる。
体裁としては Candy box! と似た始まり方なのだけど、こちらはアドベンチャーゲームではないです。
刻々と変わる状況を乗り切る、シミュレーションに近い感じ。Candy box!のような「生産活動」もあるのだけど、錬金術ではなくてもっと経済的。
アドベンチャーゲームではないのだけど、状況が言葉で説明されるし、言葉の選び方が巧みなので物語を感じさせてしまう。
ちょうどこの頃、「ナラティブ」って言葉がゲーム業界で流行したんだよね。
物語を「語る」のではなく、「感じさせる」ゲーム。A Dark Room もそういう流行と無縁でないように思います。
Coockie Clicker は A Dark Room とは逆方向の進化。全てを美しいグラフィックにしました。
世界観は先に書いた通り、狂っている。不条理とかのレベルではない。
Cookie を使って Cookie を作り出す、という錬金術こそがこのゲームのすべて。
実のところ、 Cookie Clicker は Cow Clicker というゲームに対する皮肉として生まれたのだそうです。
Cow Clicker というのは、ネットサービスでユーザーをつなぎとめるための「ポイントを貰える」だけの存在。
1日1回だけクリックできて、ポイントが溜まります。
この、面白くもなんともないものを、提供会社が「ゲーム」と呼んでいたので、クリックするだけで本当に面白いゲームを作ろうとしたのが Cookie Clicker なのだとか。
でも、Candy box! の影響は強いように思います。
お菓子を農場に投入して(種として植えて)、結果お菓子がすごい勢いで増える…なんて、まったくそのまま。
A Dark Room の影響もうけているのではないかな。Candy box! 程の影響は感じないけど。
Cookie Clicker は、β版も公開されていて、「実験中」のプログラムなどが入っていました。
結局公開版に統合されなかったけど長い間実験されていたものに、「ダンジョン」がありました。
Rogue みたいに自動生成されるダンジョンがあって、その中で自動的にキャラクターが冒険し、クッキーを持ち帰るの。
実は、candy box! にも自動的に行われる「冒険」があって、それを取り入れたかったみたい。
ネタバレになりますが、A Dark Room にも類似のものがある。
日本では Candy box! も A Dark Room もあまり知られていないので、この手のゲームは「Cookie Clicker 系」と呼ばれています。
でも、アメリカでは「Candy box! like game」らしい。
なるほど、3つとも遊んでみたら進化の過程がわかりました。
結果として全然違うものになっているのだけど。
というわけで、3本のゲームを紹介してみました。
関係性があるし、ゲーム的にも似ているのだけど、面白さのポイントは全く別。
遊んでみたい方は、以下へどうぞ。
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