19日の日曜日、独立行政法人海上技術安全研究所の一般公開を見てきました。
なんだか堅そうな名前だけど、非常に面白かった。
以前に、タモリ倶楽部で紹介していて、その時から興味を持っていました。
…と書くより、この4月からの NHK 「0655」の朝の歌「素晴らしき哉 世界」の「深の界」だと言った方が通りが良いのでしょう。
実際、うちでも 0655 を見た子供たちが「すごい! いったい何が起きてるのか!」と興奮するので、タモリ倶楽部で見た知識で解説してあげたのです。
そしたら、「見てみたい」と。
あー、あぁいう施設は、年に1度くらい公開しているけど、その時しか見られないんだよ、と説明。
一般公開って秋が多い印象だから、その頃まで待てば見られるかもね…と。
そしたら、妻が何やらスマホで調べて「19日に一般公開するらしいよ」と。年に一度がすぐでした。
というわけで、海上技術安全研究所に行ってきたわけです。
基本的に、小さな研究所です。同じ敷地内に「交通安全環境研究所」と「電子航法研究所」があります。
それぞれ、海、陸、空の安全を研究している施設です。同じ敷地内、というのも納得。
ちなみに、一般公開日では敷地が隣接している JAXA も同時開催で、4研究所を廻るスタンプラリーが開催されていました。
以下、面白かったと思うものを順不同で紹介。
▼深海水槽
上に書いた造波装置です。造波装置、というのは波を起こす装置で、他の水槽にも付けられていますが、深海水槽は 128台もの造波装置を使い、自由な形の波を起こすことができます。
1時間ごとに、15分ほどの実演を行う…となっていたのですが、0655人気でものすごい人が来ました。
初回を見に行ったのですが、30分前にも関わらずとても入れず、「後で見に来よう」となりました。
…が、初回前にもう一度通りがかったら、なんか方法が変更されている。
10分ごとに、7分程度の実演に変更されていました。これで見ることができました。
波を起こす機能ばかりが注目されてしまっていますが、本来深海掘削パイプなどに波が及ぼす影響を調べるための施設。
直径は 15m 程度ですが、深さは 35m もあるそうです。
#うちの子は JAMSTEC には良く行くので、深海掘削パイプなどの話は普通に受け入れます。
▼海洋構造物試験水槽
実は最初に見たのがこれ。むしろ、こちらの方が「造波装置」としては王道。
大きな水槽に、波を起こす装置があります。船などを浮かべ、波の影響を調べます。
海底ガス田開発で、船を浮かべて海底掘削パイプからガスを吸い上げ、LNGとして貯蔵する、ということは現実に計画されているのだそうです。
そこで、その「基地船」に、「LNG 輸送船」が横付けしている状態を想定。各船の中には液体である LNG が入っている状態で、波が来るとどうなるか…という実験をしてくれました。
…何も起きません。一番安定して、何も起きない波を起こしたのだそうです。
なぜ、一番何も起きないのを選ぶ。
ビデオで、過去に実験した「一番激しい状態」の説明などもしてくれました。
意義はわかるのだけど、多少波で揺れたりするところ見たかったな。
#横付けしている状態を想定した配置だったこともあって、揺れたりすると模型がぶつかって破損する可能性もあるのだとは思います。
でも、それならもっと「模型は壊さない」程度で「激しく揺れる」状況だって想定できるだろうに。
▼熱力学展示
各種歯車機構が触れる状態で置いてあって、子供や僕に大人気。
2ピストン、4ピストンのエンジンの模型とか、スターリングエンジン、ロータリーエンジンもあります。
回転軸の延長上に、逆方向に回転する軸を配置する機構とか、歯車Aが1回転するごとに、歯車Bが1/4づつ回転する機構とか…
触れるモデルだけでなく、実際に動くものもありました。スターリングエンジンは、普通温めて動かすものですが、「温度差さえあれば動く」ことを示すためドライアイスで動かしていました。
ロータリーエンジンは、外部から空気圧を入れることで回転。
他に、水素燃料電池とか、太陽光で発電してモーターを回して、そのモーターの回転で発電機を回して電球を付けるとか、無意味だけど装置として興味深かった。
▼船の危機回避シミュレータ
大きな円筒形スクリーンの中で、油圧で動く「操舵室」があります。
本当は操舵室が波に合わせてゆらゆらするようなのですが、この日はお客さんがたくさん入るので、一切動かしません。
スクリーンにはリアルタイムのCGで、東京湾の風景が映っています。
すごく波が高い。時々船の甲板に波がかぶります。
子供たちが「波が入ってきた。バグってる」というのですが、聞いてみたら実際その程度の波高に設定しているのだそうです。
ただし、東京湾でそんなに波が高くなることは、通常はないとのこと。
クルージング(?)の最中、ほんの数分で天候は目まぐるしく変わり、昼間から夕方、夜へ。そして昼間の濃霧へ。
夜景では船の明かりが波に反射し、非常に質が高いCGでした。
▼チタンプレート作成
チタンのプレートを、目の前で電圧をかけて色を付けてくれます。
ちゃんと理解してないけど、
1) チタンは酸化しやすい。常に酸化被膜でおおわれることで、それ以上錆びにくい。
2) しかし、化学薬品処理して電気を通すことで、酸素が強く供給され、通常以上に厚い酸化被膜を作れる。
3) 表面の酸化被膜の上で反射した光と、奥で反射した光が干渉し、色を生じる。
4) 電圧によって酸化被膜の厚さを調整でき、色を変えられる。
ということのようです。
話は知っていたのだけど、目の前で作るのを見るのは始めて。想像以上に美しい色が出るし、みるみる色が変わっていくのが美しいです。
ちなみに、着色したのではないので非常に強い。とはいえ、ひっかけば表面の酸化膜が落ちるので、色落ちはします。
実は、一般公開終了の時間ぎりぎりに駈け込みました。
妻も子供もみたがっていたのだけど、「後で」と思っていたら、時間いっぱいになってしまったの。
駆け込んだら、すでに終わって片付け中でした。
でも、わざわざ走ってきてくれたのだから、と、急遽うちのためだけに実験をやってくれました。
ありがとうございました。
#本当は、プレートにあらかじめシールなどを張ることで、その部分だけ「着色しない」ことができ、模様を作れます。
本来、そうした体験をしてオリジナルアクセサリーを作れる、というコーナーでした。
この時は、時間もなかったために着色実験のみ。でも、美しい色で子供は喜んでいました。
つづいて、交通安全研。
▼燃料電池自動車
トヨタの「MIRAI」を展示していました。
そして、その奥で子供が燃料電池の模型自動車を作って学べるようになっていました。
模型自動車を作るには整理券が必要。問い合わせると、丁度今から始まる回の人数がまだ空いている、と入れてもらえます。
この体験「小学生以上」だったのですが、そうとは知らずに保育園年長の次女も体験しました (^^;;
最初に燃料電池の仕組みをまなび、燃料電池で LED が点灯することを確認します。
つづいて、その燃料電池を模型自動車に搭載。
模型自動車にはスイッチがあり、OFF だと電球が点灯します。
これで通電を確認し、ON にすると走ります。
燃料電池にはビニールパイプがついていて、そこに水素を入れてもらえば発電できます。
LED や電球をつけているだけなら長く発電するのですが、車を走らせるとあっという間に電池切れ。
「物を動かす」には、非常に大きな力が必要なのです。
何度も水素を補給してもらいながら遊んでいました。
この子供向け講座、子供は模型に夢中で聞いちゃいなかったのだけど、最後にいいこと言っていた。
「水素自動車は排気ガスを出さない。でも、水素を作り出すのにエネルギーが必要で、CO2 も排出する。
実は何も問題は解決していない、と知っておいてほしい」と。
▼鉄道用台車試験設備
鉄道が「どうやって曲がるか」をわかりやすく解説していました。
鉄道って、左右の車輪が繋がっているし、カーブでは内輪差が生じるはずだし、どうなっているのだろう、というのは前から疑問だったんだよね。
わずかだけど車輪が円錐になっていて、カーブでは外と中で車輪のサイズが変わるようになっているのだそうです。
すごく単純だけど、合理的な考え方。
実際に、いろいろな形に作った車軸を模型のレールの上を動かして、何が起こるか見られるようになっていました。
▼バス運転手の制服体験
京王バスが、制服を着てバスの運転席に座れる体験会を実施していました。
長男、昔バス好きだった。今更…かとおもったら「やりたい」と言い出す。
次女もやる、と。長女は興味なし。
もうすぐ6歳だけど体の小さい次女は、一番小さい制服でも大きめ。
制服制帽でバスの大きなハンドルを握っているのは、親ばかだけど可愛かった。
電子航法研。
▼音声診断システム
画面に表示された文章を読むと、疲労度や緊張度を診断してくれる、というシステム。
パイロットやドライバーが、自分でも意識できてない疲労などを診断して、事前に危険な運転を避けるためのシステムなのだそうです。
「カオス理論を応用」ということで詳細を聴いてみたのだけど、よくわからなかった (^^;;
自分なりに判断すると、そこでカオス理論としているものは、「フラクタル」と類似の概念のようでした。
音声パラメータを周波数変換し、周波数空間での再帰性を評価することで「カオス」な度合いを検出する。
最終的には、周波数・声の大きさ・時間軸…などとあわせ、5次元のデータが得られるそうです。
この「カオス」が何を意味するかは、「わかってない」と明言していました。
ただ、多数の人の声を調査した結果、判って無いなりに疲労度との相関性はわかっている。
そこで、5次元パラメータと疲労度との相関性を総当たりで調べ(つまりは機械学習させ)、関連性を示す式を求める。
この機械では、その式を利用して疲労度を出すのだそうです。
処理量は、音声を FFT して周波数に注目するだけ、というようなシステムに比べると、4桁くらい多いそうですが、その分評価の正確性が上がるようです。
▼電波を光ファイバで送る
電波を光ファイバで、というのはどういうことかと思ったら、当然のことながら「電波を光に変えて送る」でした。
ただ、たとえばラジオの内容を一度音声にもどして、サンプリングして圧縮…みたいなことではない。
電波の強弱をそのまま光の強弱に変更し、光ファイバで伝送後に電波に戻すのだそうです。
光ファイバだって減衰はするから、普通はデジタル化して伝送するのですが、それを克服してアナログで送れるようにしたというのがすごいところらしい。
▼ GNU Radio を使ったソフトウェア受信機
GNU Radio ってものを知りませんでした。
電波をそのまま受信して、ソフトウェアで同調するのね。そういう方式なので、同時に複数のチャンネルの電波を捉えられる。
デモでは、航空機の現在地情報と音声通話を同時にとらえて、リアルタイムの航空機の位置情報を表示しつつ、その通話を流していました。
どうでもいいけど、羽田に入ってくる飛行機が見た目で列になっていて、空も渋滞しているのだなと実感。
JAXA。
ここだけ敷地が離れていますが、研究施設としては1個なので、隣の3施設ほどの「バラエティ」感はありませんでした。
やっていることは、ずっとすごいはずなのにね。
▼スーパーコンピューター展示
富士通による「宙」の概要と、実際に動いているマシンルームの見学(窓から見るだけ)ができました。
富士通だから SPARC CPUです。SPARC 64。
元々 SPARCを開発した SUN が無くなったけど、ちゃんとまだ続いているのね。
1CPU で 32コアで、1000以上の CPU ノードが使われている。
1ノードは 128GB の RAM を持っていて、他ノードへの転送能力は 128GB/s 。全メモリを1秒で送れちゃう。
ハードディスクは 5ペタバイトで、テープアーカイバは 20ペタバイト。
詳しく知りたい人は、宙のページ
宙では、数値計算シミュレーションをやっているそうですが、開発当初から「結果をわかりやすく手に取れる」ことを重視したそうです。
そのため、3D表示能力がすごい。裸眼3D表示ディスプレイとか置いてありました。
3Dプリンタで出力した演算結果、なんてのも多数あって…お土産に、各種 JAXA ロケットの 3D モデルストラップを配布してました。
1人1個、ということなのでいろんな種類を家族分貰ってきて…子供が「ロケット打ち上げごっこ」して遊んでます。
▼宇宙デブリの研究
デブリを見つけるためのシステムとか、デブリを地球に落として燃やすための方法とかを紹介していました。
デブリに限らず、コンピューターで空を監視し続けて、複数の画像の「差分」から飛行物を検出するシステムは以前からあるのだけど…もうソフトじゃ遅い、ということで、FPGA 化しているなんて話が出てました。
デブリを落とすには、ワイヤーをぶら下げるだけで十分、という話。
地磁気の中に「電線」が移動するので、電気を生じてエネルギーが落ち、やがて地球に落ちるとか。
#発生した電気はプラズマとして放出。
電気と磁石と力の関係を、いろんな装置で確かめられるようになっていました。
丁度、長男が電磁石とかに興味を持っていたので、楽しく学んでました。
4施設分の敷地はとにかく広くて、歩き回るのが大変。
でも、4施設あるので非常にバラエティに富んでいて、楽しめました。
本当はもっとたくさんの展示があったし、もっとたくさん見たかった。
でも、これで時間いっぱい。開始から終了まで、ずっといたのに時間が足りない。
また来年行きたい、と子供たちは言ってますが、うちから結構遠いんだよね…
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