ぎーちさんからの質問…と明示されたわけではなかったと思うけど、「ベーマガの影響」の話になりました。
ベーマガって、プログラム投稿以外にもたくさんコーナーありましたから。
僕が真っ先に「好きだった」と挙げたコーナーは、「ゲーム・プログラミング講座」。
ゼビウスを作った遠藤雅伸さんって、当時は憧れの人だった。
その遠藤さんと、仲間の方々がゲーム作成の質問に答えてくれるという夢のような(?)コーナー。
プログラム上の疑問・相談だけでなく、ドット絵の描き方、音楽の作り方、ゲームシステムの考え方、ゲームクリエイターになる方法…などなど、幅広い質問に答えていました。
中学生の頃は、まだ無邪気に「将来はゲームを作る仕事をしたい」と思っていました。
ゲームクリエイターの人たちというのは殿上人。その言葉は素直にすごいものに感じたのです。
Beep! でも、ゲームクリエイター多数にアンケート取った特集とかありました。それも熟読した。
遠藤さんたちも、Beep! のアンケートに答えた人も、似たようなことを言っている。
ということは、ゲームクリエイターになりたければ、これは本当に重要なのだろう。
それは、「今すぐテレビゲームなんてやめて外へ行け!」ってこと。
これが意味がわからなかった。
テレビゲーム作りたい、と思っているのに、テレビゲームやっちゃいけないの?
もう一つ、「素人のうちは、プロには作れないゲームを作れ!」とも言っている。
これも判らなかった。
プロって、なんでも作れる技術を持っているからプロなんじゃないの?
これらの言葉は、ずっと心のどこかに引っかかっていました。
自分がゲームを作る立場を経験して、この言葉の真意がわかりました。
テレビゲームって、人を楽しませるものです。
じゃぁ、「楽しいこと」自体をたくさん知っていないといけない。
テレビゲームばっかやっていても、所詮は「ゲームの中」の小さな経験でしかない。
もっと多くの「楽しいこと」を知っていないと、人を楽しませることなんてできない。
テレビゲームが大好きで、テレビゲームばかりやってきて、テレビゲームを作る立場になったら全然いいものが作れない、という人を、実際何人も見てきました。
楽しいことの経験が少ないのだと思います。
幸い僕は友達に恵まれ、旅行もしたし、酒飲みながら語り合ったこともある。
そんな経験でも「楽しい」ことを少しでも多く経験しておくことは、ゲームを作るうえで非常に大切です。
もう一つの「素人のうちはプロには作れないものを」というのは、前回もちょっと書いたね。
プロになると、商売だから「売れるゲーム」を作らないといけない。
遊ぶ立場では、面白いゲームが良いゲームだと思っていました。
でも、プロにとって、それは良いゲームではないんです。
あと、プロになると操作方法に制約が出る、というのもあります。
家庭用なら、家庭用のゲームパッドの中で考えないといけない。
業務用はもっと制約が厳しくて、1レバー3ボタン、というのが基本でした。
業務用だからこそ、変な入力デバイスでも使えそうに思いますが、そういうものは高くつくし、交換が面倒なのでゲームセンターが買ってくれない。
ところで、僕は大学時代に「マイクが1本おいてあるだけ」というアクションゲームを作ったことがあります。
変なゲームを作ろうと心がけていた頃のもの。
いろいろ狙いがあって、ゲームのあり方に対して自分なりに問うてみた意欲作なのよ。
でもまぁ、七面倒くさい理論はどうでもいい。このゲームに触れた人の反応が予想外で、僕には印象に残っている。
ゲームを遊ばない人ほど、このゲームを見て戸惑うのね。
ゲームって、ファミコンみたいにパッドでやるものだと思てる人にとっては、マイクが置いてある、というシチュエーションからおかしいのです。
でも、説明は書いてあるから遊んでみる。
自分が声を出さないとゲームが遊べない、でも声を出すというのは案外恥ずかしい。
ここで、みんな変な状況に笑い始める。
最初は照れ笑いなのだけど、笑っているうちに自分でも楽しくなってきて、遊んだ後も嬉しそうに帰っていく。
ちなみに、ゲーム慣れしている人はすぐにルールに慣れて、冷静に黙々と遊びます。
笑顔にはならないけど、ハイスコアは叩きだす。
ゲーム業界に入ってから気づいたけど、これが「プロには作れないゲーム」でした。
プロのゲームを真似するのであれば、どうすれば面白いかもだいたいわかる。
すでにあるものを真似していけばそこそこのものが出来上がる。
でも、そうではない、物まねではないものを作ると、すべてを自分で決めなくてはなりません。
「声で操作する」ゲームを、どうすればより面白くできるのか、どうゲームバランスを設定すれば楽しいのか。
マイク一本だから、スタートボタンもない。ハイスコア出してネームエントリーしようにも、文字を選ぶ方法がない。
変なデバイスを採用したら、当たり前に思っていたことが何もできないんです。
ゲームスタートの方法、ハイスコア時のネームエントリーの方法まで考える必要がありました。
物まねではないゲームを作ると、真似をするよりもずっと深い部分まで考える必要があります。
その苦労は、確実に「面白いゲームを作るための方法論」として身に付きました。
そういう経験を積んでおけ、というのがプロからのアドバイスだったのですね。
ところで、セガに「デカリス」(2009)ってゲームがあったのですが、あれを作ったのは同期の企画者。
僕が会社辞めた後なので、裏話とか知らない。実は、僕はこのゲームを見てすらいない。
あまり売れなかった上に、すぐに市場から消えてしまったからね。
ぎーちさんにも話したし、裏話を最初から知らないので、20年たってないけど書いてしまいましょう。
彼は、プロは作ってはならない、「変な入力方法」にこだわってました。
新人の頃から、変な入力のゲームの企画を、何度も出しては没になっていたのを知っています。
どうも、狙いは僕が作った「マイク入力ゲーム」と同じだったみたい。
変な状況に置いてやると、それだけで人は楽しくなってくることがある。
ゲームって「楽しむ」ことが目的だから、楽しくなれるのであればそれは成功。
で、何度も没を喰らって、できたのが「デカリス」。
すごくでかいレバーで、すごくでかい画面で、すごくでかいブロックのテトリスを遊ぶゲーム。
とことんバカバカしいアイディアです。遊びながら、バカバカしさに笑ってほしかった。
…でも、評価は低い。意図が理解されなかったのね。
僕のゲームと同じで、ゲーム慣れしている人は冷静に遊ぶ。おかしな状況で楽しくならない。
本当は、ゲーム慣れしている人が少ない、遊園地とかに置ければよかったのでしょうね。
でも、ゲームだからゲームセンターに置かれました。そして、ゲームセンターはゲーム慣れした人ばかりです。
彼の意図は理解されず、このゲームの評価は低いまま。
プロが作ってはならないゲームをプロが作るとどうなるか…という残念な例です。
#届けたい人に届かなかったというだけで、それを作り上げた彼の情熱を、僕は高く評価しています。
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