当時のセガには、仮眠室がありました。
「バーチャファイターを創った男たち」って漫画にも、仮眠室の存在が描かれていたな。
たしか漫画では和室なのだけど、実際は狭い部屋に2段ベッドが並んでいる。
布団は敷きっぱなしだけど、半月に一度くらい業者の人が入れ替えてくれるので、それほど不潔にはならない。
#知らん人が寝た布団なので、多少臭くは感じます。
仮眠室の奥にはシャワールームもついていました。
仮眠室一番奥のベッドには、レーザーLAN装置が固定されていました。
無線 LAN とか無い時代、レーザー光を使って離れた場所をつなぐための装置ね。
たまたま仮眠室が装置を置くのに一番いい条件だったんだって。
セガはいくつかのビルに分かれていたのだけど、ビル間の LAN はこれで繋がってました。
速度は 4Mbps。社内 LAN が 10Mbps だった時代だから遅すぎるということは無かった。
時々寝ぼけて蹴っ飛ばす人がいて、LANが繋がらなくなりました。
仮眠室があった、と書くと、「泊まり込みが当然のブラック企業」なんて言われそう。
(というか、2chなんかでそう書かれていたのを見たことがある)
セガがブラック企業ではない、と言うつもりはありません。
今はどうか知らないけど、当時はいろいろ労使問題も起こしていた。
でも、ゲームを作るのが楽しかったから、僕は楽しんで残業していました。
ちゃんと残業代も出してくれてたし。(この頃はね…)
僕の場合家が遠かったので、締切近くでは帰るよりも会社に泊まりたい時があった。
そんな時に、仮眠室がある、ということはありがたいのです。
ちなみに僕は、通勤時間を節約するために泊まるだけで、徹夜して仕事、とかはしませんでした。
会社に泊まりこんでも、夜12時前には仮眠室に行って寝てしまう。
で、翌朝6時くらいに起きてきて続きをやる。
徹夜すると思考力が落ち、仕事効率も落ちてしまいます。
先に書いたように、僕は「好きだから」残業してまで仕事をしていたので、効率が落ちるのは本意ではない。
徹夜して仕事する人もいましたよ。
プログラムって集中しないとできないけど、集中の仕方って人それぞれなのね。
僕は、集中するときとそうでない時を結構簡単に切り替えられる。
でも、集中に入るのに長い時間がかかる人もいます。
そういう人は、せっかく入った「集中」モードが続く限り仕事する。
徹夜して、翌日は仕事効率が落ちます。
でも、どうせ「集中」が一度途切れると効率は落ちるのだから、これはこれで悪くない仕事のやり方。
あと、ネットワーク管理していた人は、みんなが帰った夜中でないと仕事ができないことがあったので、夜中に仕事して昼間仮眠室で寝ていたな。
これは特殊事例。
僕は、机の引き出しにボディシャンプー置いてました。
泊まり込んだ日は起きたらすぐシャワーを浴びて、それからファミレスに食事に行く。
食事から帰ってきたらすぐ仕事を始めます。
誰もいなくて静かなのではかどる。
セガでは、確か朝8時くらいに社歌が流れました。若い力、ってやつね。
これを聴くの、そんなに嫌いじゃなかった。
#泊まり込んでしまい、この歌を聴くのが嫌いだった人もいます。
入社当時は、コアタイム制でした。
朝の10時から、午後の3時までは「コアタイム」で、この時間にいないと遅刻扱いになります。
(ただ、有給の半日分を使うことで、午前中休み、午後休みとできました。遅刻した人は午前中休みにしてしまったりする)
出勤時間が人によって違うので、朝礼などはできません。
代わりに昼礼がありました。基本的には会社からの必要事項の伝達だけですけど。
働く時間は1日8時間。コアタイムには絶対にいるとして、その前後をどう使うかは各自の裁量です。
僕は、通常の日でも早めに来て、早めに帰るのが好きでした。
8時半に来て5時半に帰る、くらいの時間帯だったかな。
ほとんどの人が、10時に来て7時に帰っていたように思います。
後の話になりますが、女性デザイナーが「もっと働きたいのだけどできない」と嘆いていました。
法律上の問題があって、女性は深夜残業できなかったし、泊まり込みも許されなかった。
その人は会社のすぐ近所に一人暮らしで、帰ってもつまらないからみんなと楽しく仕事している方が良いという。
僕は男女平等論者ですが、性差があることは認めますし、そこに起因する権利の違いはやむなしと思っています。
でも、実はこの件は今でも時々頭をよぎる深い問題です。
女性に深夜までの残業を認めるべきではない、と思います。
夜道の暗がりで性犯罪被害にあいやすいのは女性だから、深夜残業は危険に直結する。
しかし、男性だけ深夜残業が許されて女性が許されないのは、確かにずるい。
となると、男性も深夜残業なんか認めず、全員帰宅させるべき?
でも、仕事の都合上残業が発生するのはアリだと思っています。それが深夜であっても。
ちゃんと残業手当を出すこと、睡眠時間は確保できるよう仮眠室を用意することなど、いくつかの条件が満たされていれば構わないでしょう。
#以前書いた、月250時間残業、なんてのは禁止すべきだと思います。体壊すよ。
深夜残業とは別枠で、月の残業時間の上限があってもいいのではないかな。
こう考えていくと、良い解決方法が見当たらないのです。
「男女の権利平等」を考えるとき、すぐにこの女性の言葉が思い出され、簡単な話ではない、と気を引き締めるのです。
猛烈に働いていたように思われるのも心外なので注釈を。
泊まり込んでまで働くのは、締切前の1か月がせいぜいです。
大体ゲームは6か月くらいで仕上がるのですが、最初の3か月くらいは、気軽に有給休暇とったり、仕事時間終わったらさっさと帰れる。
中盤は多少残業することもありますし、休みづらい感じになってくる。
で、最後の1か月は残業が増え、場合によっては泊まり込みです。
「ドラクエ休み」とか「ダビスタ休み」とか…新しいゲームの発売日に休む人も多かったですね。
プロジェクトが暇なら、そんな理由で休んでも誰も文句は言わない。
ところで、法律上「会社は社員に有給休暇を与えないとならない」ことになっています。
でも、年度末にプロジェクトが忙しいと、休む暇がない。
たしか、有給は年度をまたげないシステムでした。
AM1研には有能な事務の女性がいまして、この消滅を防いでくれました。
特に頼んでおかないでも、気づいて先回りして処理してくれるので、みんなから感謝されていました。
#AM1研のお母さん、と言われていました。
若くて非常に美人な人でした。年上・同世代から「お母さん」と呼ばれるのは少し嫌だったみたい。
消滅しそうなら、適当な日に有給を取ったことにするのね。
でも、実際にはその日は働いています。だから、その分残業が発生する。
セガでは、残業時間8時間で、別の日を「振替休暇」とすることが可能でした。
有給の日に残業を発生させると、法で禁じられている「有給の買い上げ」と見做されてしまうのだけど、別の日に休暇を取るなら問題ない。
これで、有給は振替休暇に代わり、消滅を免れます。
ただ、制度上振替休暇は「残業時間を休暇に振り返る」と宣言してから6か月以内に行使しないと、消滅してしまうことになっていた。
…大丈夫。こちらも、消滅しそうだと気づくと、同じ方法で作り変えて、期間を延長してくれました。
これを繰り返していると、1か月くらい休んでも大丈夫なくらい有給が溜まってしまうことがある。
まとめて海外に長期旅行に行ってしまう、というような人もいました。
その人が暇なときなら、これも別に文句は出ないのね。
プロジェクトが忙しいときでも、残業はしないポリシーでさっさと帰る人もいました。
一度だけ一緒に仕事したことある。
毎日8時に来て、5時には帰ってしまうの。
これは流石に珍しかったけど、有能な人だったので文句は出ません。
ともかく、いい意味で能力主義。
自分の仕事をちゃんとやっていれば特に働き方で文句を言われることは無い。
でも、「ドライな社風」ではありませんでした。
「自分の仕事」と書きましたが、割り振りは大抵決まってません。
プロジェクトの中で発生した仕事は、その時に出来る人がやる。
他の人の仕事が滞っていたら、別の人がカバーする。
ただし、すでに着手している仕事は、やっている人の分担。
そこまでカバーする義理はありません。
だから、さっさと帰れる人は、その日必要な仕事を片っ端から潰してしまえる人なのね。
それで時間内に終わらせる。これだと、他の人が残業に突入しても、帰って問題ない。
当時のセガは部署ごとに雰囲気が全然違い、「社風」というよりは「部署風」だったように思います。
だから、ブラックだった部署もあるかもしれません。
でも、僕が知っていたセガはそうではないので、ブラックだったと言われると違和感を感じるのね。
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