まだ新入社員の頃(1994)、時々部署内で「手の空いてる新人手伝って~」という声が聞こえることがありました。
雑用は新人の大切なお仕事です。
僕は手相チームでプログラムやっていましたが、比較的「手が空いている」方でした。
#同期は、ST-V発売同時タイトルのプロジェクトに入ったりしていたので忙しかった。
で、行ってみると単に力仕事の時もありますし、ゲームのテストプレイの場合もありました。
ずんずん教の野望は、入社して配属部署が決まり、はじめて部署内を案内されたときに、すでに完成間近で置かれていたゲームです。
あまりに強烈なゲーム内容にみんなが驚いていると、「あぁ、これは、コアランドの残党が作ったゲームね」と、案内していた先輩社員からさらりとした説明が。
1994年の春ですから、地下鉄サリン事件の1年前です。
しかし、すでにオウム真理教はたびたび問題を起こし、ワイドショー番組などでも繰り返し取り上げられていました。
その世相に、「時事ネタ」として、怪しげな宗教をテーマにしたゲームを作っていたのです。
今見ても珍妙なゲーム内容に根強いファンがいるのですが、当時の世相の中でのインパクトは絶大。
「ほぼ完成していた」のに、本当にそのまま発売してよいのかどうか、意見が噴出してなかなか発売できなかったゲームでもあります。
発売できないから、ずいぶんとテストプレイをやった覚えが。
(最初の頃は暇だったし、テストプレイという仕事が新しい体験だったからよく覚えている、というのもあると思います)
#「このゲームはいかなる宗教とも関係ありません」の表示を入れることと、作ったのはセガではなく「港技研」であることを表記することで、発売を許されたのじゃなかったかと思う。
#20年前の話で、しかもテストプレーしただけで当事者でなかった話を記憶で書いています。
新入社員の頃だから、いろいろな会社間の関係とかわかって無いし。
だからこの日記の内容を鵜呑みにしないように。
コアランド…正確には、「コアランドテクノロジー」っていうのは、「ごんべえのあいむそ~り~」(1985)を作った会社ね。
田中角栄似の「ごんべえ」が、タモリやジャイアント馬場を張り倒しながら金を集めて、自宅に持ち帰って「わっはわっは」と笑うゲーム。
ちなみに、田中角栄って元総理大臣ね。「あいむそ~り~」ですよ。
今の若い子には言わないとわからんかもしれないので書いとく。(若い子はこんなページ読んでないと思うけど)
総理退任後に、米国の航空機会社が全日空に航空機を売り込む際に5億円のリベートを受け取ったのではないか、という疑惑が浮上し、逮捕されています。
いわゆる「ロッキード事件」です。
1983年に一審で有罪判決が出て即日控訴。1985年は、この控訴審が始まった年です。
そこに「田中角栄(に似た人)がひたすら金を集めるゲーム」を発売するという危なさを考慮すると、よりゲームの内容が楽しめます。
#「自宅」が国会議事堂そっくりだったりする面もあるしね。
ところで、コアランドはセガと仲の良い会社で、「ペンゴ」とか「青春スキャンダル」など、まともに面白いゲームも多数作ってますよ。
「ごんべえ」のような危ないネタの方が、むしろ珍しい。
このコアランド、1989年にバンダイの子会社となり、「バンプレスト」と社名変更しています。
ただ、この時に結構人材が流出していて、その一部が「港技研」という会社と合流してゲームを作ったようです。
それが「ずんずん教の野望」。
先輩が「コアランドの生き残り」と言ったのは、「ごんべえのあいむそ~り~」を念頭に置いたものだったのだと思います。
両方とも時事ネタの危ないゲームだから。
#危なさで言えば、チェルノブと同じ危険な香りを感じました。
X68k ユーザーだったから、天安門とか知ってたけど、市販ゲームとはまた違う話だから。
#ちなみに、バンプレストになってもしばらくはセガと仲が良く、AM1研が作った「わくわくトーマス」はバンプレストから発売になっています。
後にセガとバンダイの合併話が出たこともあったよね。結局バンダイはナムコと合併したけど。
さて、ずんずん教ですが、世間では「愛すべきクソゲー」という評価のようです。
見るべきところはある。でも、遊んでもそれほど面白いゲームではない。
でも、仕事だと延々と遊ばないといけないんですよ。
正常に最後まで遊べるか、を調べないといけないから。
このゲーム、1周すると偽のエンディング、2周で真のエンディングとなります。
だから、2周しないといけない。
でも、2週目とか難易度すごくあがるのね。
とにかくコンティニューで押して…とかだとダメ。スコアリセットされちゃうから。
「2周ノーミスクリアしたらスコアがあふれておかしなバグが出ました」とかは困るから、ちゃんとノーコンティニュークリアしないと。
僕はとてもそこまで行けませんでした。
コンティニューして1周クリア、がやっとだったのではないかな。
しかも、僕はテストプレーと言うのがそれほど上手ではなく、つい「普通に」遊んでしまうのですね。
上手な人は、高い難易度のゲームの中で、さらに変な「縛り」を付けてプレーする。
あえて敵を倒さずに逃げ回りつづけたりとかね。
そうするとバグが出る、ということもあるのです。
#ギャラガ1面で編隊左下の敵を1匹残して15分逃げ続ける、とか有名なバグですね。
ギャラガの場合、どういう理由かその後敵が一切弾を撃たなくなります。
そんなことも想定しながらバグが出ないか確認するわけです。
ただ、サードパーティゲームにそんなに労力を割いていたのは、この頃までなのね。
各部署に均等に売り上げノルマが割り振られたことと、ちょっとした事件があったことで「サードパーティのサポートに手間をかけるのは割に合わない」という考え方になったようです。
ダメ押しに、社内で新たな事務処理の部署を作るため、この頃サードパーティサポートを一手に引き受けていた社員がそちらに移動になってしまったのね。
#サードパーティのサポートは事務仕事も多く、経験があるため選ばれた模様。
事件の話は、またそのうち書ければ、と思っています。
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