20年前に発表された「手相うらない ちょっとみせて」という業務用ゲーム機の話。
#写真は、画面上に貼られたジャンル一覧の紙の一部。
クリックで大きくなります。(相変わらず一部ですが)
ロケテスト用に作られた仮のもので画質が悪いです。
販売時にはもっときれいな印刷だったはず。
ある程度出来上がった段階で、一度ロケテストが敢行されました。
作ろうとしている方向性が「正しい」かどうかを確認することになったのです。
この時点で、占いの主要部分は全部出来上がっていたように思います。
でも、アドバタイズ(誰もゲームをやっていない時の宣伝画面)とか、細かな詰めが無かったのではなかったかな。
明るい雰囲気で、占いだからカップル向けだろう…というので池袋 GIGO がロケテスト場所に選ばれました。
#占いのジャンルの中に相性占いがありました。
たしか、1人用が300円、2人用が500円。
「2人用が高くても、きっと彼女が遊びたがって、彼氏が全額払うから大丈夫」という読みだったはず。
#ロケテストの意義について、近いうちに説明しておきたいとも思いますが、当時はロケテストは「絶対に秘密で行う」のが普通でした。
この時、お客さんの反応を見るために遠巻きに見ていたら、オムロンの営業の方と会いました。
営業の方も気になって見に来ていたのです。
お昼おごりますよ、と言われて近くのレストランへ。
新人のペーペーを接待しても、なにも見返りになるようなことしてあげられませんよ…と思いながら、申し訳ないので「好きなものを頼んでください」と言われても比較的安いものを。
この時は知恵がなかったのですが、今考えると「協力会社の人と昼ご飯を食べた」という名目があれば、会食費全体が接待費として会社持ちなのですね。
営業の方が一人でご飯食べても自分持ちなので、昼食代を浮かすために僕を誘っただけでした。もっといいもの食べればよかった(笑)
ちなみに、僕は「ご馳走になって申し訳ない」と思っていたので、営業の人には開発の状況など、出来るだけ情報提供しました。
ちゃんと仕事上の会食としての要件は満たしてますので、営業の人が会社の金で昼飯食べただけ、ということではありません。
ここ、キッチリ主張しとかないと、当時の営業の人に迷惑かかっちゃうからね。
ロケテストの結果はおおむね良好。
ただ、プリントアウトの待ち時間が長すぎて、「待たされる」感が出ていたのが問題でした。
内部的には、手相データを貰ったらすぐに結果を計算し、印刷を開始していました。
でも、当時のページプリンタでは印刷に1分くらいかかってしまっていたのね。
画面上で結果の概略などを説明しているアニメがあるのですが、これが25秒~40秒程度。
当初予定では30秒程度で印刷が終わるはずで、その時間に合わせてアニメを作っていたのです。
結果、20秒~30秒程度の待ち時間が発生します。
何もしないで待っている時間としては、かなり長く感じる。
そこで、25秒程度で「手相に関するクイズ・雑学」などを出すことになりました。
占いなのに唐突にクイズを出されるのはゲームとしてまとまりのない印象なのだけど、最初から「ごった煮のような雰囲気」でまとめていたので、それほど致命的ではありませんでした。
急遽仕様変更になるけど、メモリとか大丈夫? と聞かれました。
画面周りは僕の管理でしたから。
この時点でグラフィック格納用のメモリには十分な余裕がありました。
そこで「大丈夫です」と答えたのですが、メモリがあいていたのは、絵を描いているデザイナーの先輩が上手だったから、でした。
データをうまく使いまわして、メモリを節約する癖がついていたのね。
デザイナーが3人追加になります。うち2人は同期の新人。
どんどん絵を描いたら、あっという間にパンク。新人は、データ節約テクニックとか知りませんから。
結局、せっかく大量に描いてもらった絵は多くがお蔵入りに。
僕の見通しが甘かったせいでもあり、せっかく描いたのにすみません。
#この頃冬休みに入る直前で、忘年会が行われました。
「せっかく描いたのにひどいよ」と同期のデザイナーに責められながら、しこたま飲まされました。
で、最初に書いた通りAOUエクスポで初お披露目となります。
これが大評判で、たしか4台くらい置いておいたのですが、遊んでみたい人が大勢並び、隣の会社のブースまで列が伸びてしまいました。
隣の会社がどこだったか忘れたけど、迷惑かけて後で営業宛てにクレーム来てたみたい。
実はこの日もまだバグ修正などが行われていて、出来上がった ROM を会場に運び、一瞬機械を止めて裏で交換したりもしていました。
大学祭の時にも発表しながら夜に改良してたりしたので、社会人になってもあまり変わらんなぁ、と思った覚えが。
(でも、そういう「ライブ感」は好きです)
会場に行ったついでに、敵情視察。
他の会社を廻り、類似ゲームなどを確認する、というのは、ゲーム製作者としての大切な仕事でもあります。
この年の AOU ではあまり占いなどは出ておらず、一番「類似」だったのは、シール作成機の「プリント倶楽部」。
まったく注目されておらず、誰も遊んでいませんでした。
…会社で報告書に「類似ジャンルと言っても全く違うタイプだし、競合相手ではないだろう」というような記述をしたと思うのですが、ご存知の通り、これは後に社会現象になるほどのゲームになりました。
ただ、ブームに火が付くのは半年以上後のこと。
手相占いは大評判で、占いゲーム機としては異例なほどの注文が入りました。
元々は、System32 の在庫を処分する、という名目で作られていたのだそうです。
しかし、在庫だけでは足りず、System32 に増産がかかってしまいました。
ある程度売れたら、今度はプリンタが足りなくなってしまいました。
コストの問題もあり、エプソンの2世代前のプリンタを使っていたのですが、エプソン側に在庫が無くなってしまったのです。
1世代前のプリンタが互換品だ、というので、少し高いのですがそちらを搭載する形で生産されました。
こちらのプリンタの方が印刷が速く、「印刷時間待ち」のクイズなどを始めるころには印刷が終わります。
(最初からこれを搭載していれば何の問題もなかったわけだ)
しかしやがて、これの在庫すらなくなります。
現行機種を使えば生産を続けられたのですが、互換品ではなくプログラムを大幅修正しないと動かない、と判ります。
昔のプリンタは、プリンタ内に文字フォントを持っていました。
しかし、Windows 時代になると、Windows のフォントを使って「画像として」文字を表示するようになったので、プリンタ搭載フォントは不要になりました。
しかし、System32 は残念ながら Windows ではないのです。
プリンタ側にフォントを持っていることを前提としてプログラムを作っていました。
まだ注文が入っていたのですが、これで生産終了。
プリンタ問題がなければ、もう少し販売されたのでしょうね。
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