2015年02月09日の日記です


バイトでやった CD-I の仕事  2015-02-09 11:22:30  業界記

1992年、大学3年の時には、「アトリエドゥーブル」という会社でアルバイトしていました。こちらも短期だけどね。

今は解散してしまい、存在しない会社。


この会社、横浜のマンションの一室…というか、3室でやってた。

1室はメイン開発室。1室は、先の会社の例と同じで、ライバル会社からの請負を扱う「別室」。もう1室は会議室を兼ねた社長室でした。


実は、さらにもう1室あるけど、これは社長の自宅。

すぐ近くだから、時々社長の奥さんが社長室に現れたりする。

(奥さんが来ると、社長は仕事場に顔を出すなと怒るのだけど)


非常にアットホームな、良い雰囲気の会社でした。


アルバイトで最初に頼まれた仕事は、CD-I 用のゲーム 「Mystic Midway:Rest in Pieces」の日本語化作業。


CD-I って、フィリップスが作った「マルチメディア端末」ね。

事実上はゲーム機だったのだけど、CD-ROM を搭載した機械としてはかなり初期の物。


ドゥーブルでは、すでに CD-I のタイトルをいくつか作っていて、「東京私立校受験ガイド リセエンヌ グラフィックス」とか、「斉藤由貴 Anniversary」とか、かなり売れたそうです。

特に、「斉藤由貴 Anniversary」は、この時点での「日本で最も売れた CD-I タイトル」だったはず。

たしか、300枚くらいと聞いたような…


#受験ガイドは、主に女子高の制服を集めた図鑑データベースです。


 当時はまだバブル崩壊直後で、まだ残り香のあったころ。

 特に私立高校の間で「新しい制服を作る」のが流行していました。

 著名デザイナーに依頼したかわいい制服など、それを目当てで受験する女子中学生が多かったためです。


 そして、選ぶ側の女子中学生にも、かわいい制服を一覧できる図鑑などに需要があったのです。

 書籍も流行っていたけど、CD-I ソフトは主に私立中学・進学塾相手に売れたのだとか。



さて、「Mystic Midway:Rest in Pieces」日本語版の話。

日本語版には「ひとり墓ッ地でキモだめし」というサブタイトルがついていましたが。


日本語版と言っても、プログラムなど一切いじりません。

先に書いたように、一番売れて 300枚、なんて世界なので、細かな作業していたら割に合わない。


アメリカでそこそこ売れたゲームの権利を買ってきて、簡単に改造するだけです。


CD-I は「マルチメディア機」だったので、良く喋りました。

この音声ファイルを全部日本語に差し替える、というのが目標。


すでに、声優さんに喋って貰った音声データはありました。

DAT (デジタル・オーディオ・テープ)に入っていて、秒数も元の物に合わせてある。

元ファイルのファイル名と、バイト数の表もある。


MacII を使って DAT から音声を取り込み(この時点では 48KHz のデータ)、CD-I で使う 44.1KHz にコンバートします。

そして、元ファイルと1バイトたりとも違わないように、正確にファイルを切り出します。


Mac には 5inch MO を接続してありました。


当時はハードディスクはまだ高価なもので、パソコンに内蔵しているのは 40M ~80M 程度。

外付けでも結構高価な 120M があり、サーバー用などならやっと 250M くらい…という時代。


でも、CD-ROM ゲームを作るのですから、650M の記憶域が必要です。

5inch MO は、650M を記録できました。もっとも、これはメディアを両面使った場合の話で、片面は半分。


#CD-R はまだ普及していません。規格ができたのは 1990年だけど、普及は 1995年ごろから。


そして、この MO ドライブ自体が非常に高価。

ドゥーブルには当然こんな高価な機材は無く、ドライブごと借りていました。


「両面で」650M なのに、普通に開発していたのだから、容量は半分程度しか使っていなかったのではないかな…


#もしかしたら、ヘッドが両面にあって、裏返さずに両面のデータを読めたのかもしれません。




先に作りだした「日本語化」ファイルを、MO 上で元ファイルと同じ名前で保存します。

完成したら、テストプレイ。

…どうやって遊んだのだろう。記憶にない。


開発用の特殊な CD-I 本体とかで、MO ドライブを CD-ROM に見立てて起動したりできたのかもしれません。

ここら辺、どうやっていたのか全然覚えていない。


ただ、テストプレイをやっていた記憶だけはあります。



しばらく遊んでみて問題なさそうなので、日本語化完了。


全てのデータを MO に入れて、ドライブとメディアを一緒に発注元に送り返します。

MO ってリムーバブルメディアだけど、常にドライブとメディアをセットで移動している状態。

先に書いたように、ドライブが高価だったからね。



ちなみに、ゲーム内容は「射的」です。

画面下で左右にしか動かない銃を動かして、画面内を左右にしか動かないターゲットを撃つの。


玉数制限もありますし、一定時間たってもゲーム終了します。

一定点数取れば次の面に進めるのだけど、点数が達してなければゲームオーバー。


このゲーム、一応「アメリカではヒットした」ということで日本語版が作られたわけですが…

なんでこんなゲームがヒットしたんだろう (^^;


#まぁ、つまらないわけではなくて、それなりに良くまとまってはいた気がします。

 でも、5千円払って買うゲームではないよね、という感じ。


2021.8.30 追記


このページを英語翻訳して紹介している海外のページを発見したのだが、そのページには貴重な実物写真が多数入っている。


Mystic Midwayの日本語版のジャケット写真もあるし、リセエンヌグラフィックや、斉藤由貴のアニバーサリーの写真もある。


日本にいてもお目にかからない日本版のソフトまで集めているという、海外コレクターおそるべし。




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