今日はベンジャミン・トロット(Benjamin Trott)の誕生日(1977)。
誰? って反応で正常。名前はあまり有名ではありません。
では、シックス・アパート社は?
…これでも思い出せなければ、ムーバブル・タイプ(Movable Type)は覚えてますでしょうか?
残念ながら、覚えているかどうかではなく、最初から「知らない」人も多いかもね。
「ブログ」という言葉をブームにしたソフトウェアがムーバブル・タイプで、それを作った会社がシックスアパート。
ソフトを作り、会社を創業したのがベンジャミン・トロットです。
一時期「ブログと言えばムーバブル・タイプ」であり、これ以外の方法で WEB ページを作るなんて時代遅れ!
と言う感じになっていましたが、現在は同じ地位にワードプレス(Word Press)が収まっています。
ブログっていうのは、本来 WEB LOG の意味でした。
インターネットの「海」を進んだ記録を残す航海日誌(LOG)。
つまるところ、自分が面白いと思ったページの URL を、短文の感想と共に紹介する、日本的に言えばWEBニュースサイトの形式。
でも、URL を示すものでなくても、日々の作業日誌(LOG)などを記して、プログラムや工作の作業状況を公開するようなページも WEB LOG と呼ばれるようになりました。
で、この頃から「WEB に限らないのだから」と、BLOG 、という言い方に変遷していきます。
日本だとほとんど BLOG = 日記、と捉えられている感じがするのですが、日記は DIARY であって、LOG ではありません。
英語ページとかみてると、BLOG は大抵テーマを絞り込んでいます。
テーマを絞って、有用な情報を残そうとするものが、日誌 = LOG なのです。
ムーバブル・タイプ以前は、大抵の人が HTML を直書きしていました。
でも、BLOG という形式があまりに一般化したから、一部の人は自分用に BLOG を自動的に生成するソフトを作りはじめます。
この中で、高機能なものを作って販売しよう、としたのがベンジャミン・トロットであり、その製品がムーバブル・タイプでした。
特に目玉だった機能の一つが「トラック・バック」。
HTML は単方向リンクとして設計されていますが、Xanadu 的な「双方向リンク」を実現する試みでした。
ムーバブル・タイプで作られた記事に対し、ムーバーブル・タイプで「関連話題」を展開しようとした際に、トラック・バックが使えます。
後から書かれた関連記事が元の記事にリンクを作れるのは当然ですが、先に存在していた記事の方にも、「後から書かれた関連記事がある」ことを、機械的に挿入できます。
機械的に行われるため、元記事の作者の手を煩わせることはありません。
従来の HTML では、関連話題を書いても、元の記事からリンクしてもらうためには、作者さんに連絡し、リンクを貰うなどの手間が必要でした。
ましてや「批判記事」「反論記事」などでは、リンクを貰うことは絶望的です。
トラック・バックは、こうした問題を解消する画期的アイディアでした。
シックス・アパートは、トラック・バックを作るためのプロトコルなども公開し、他のブログシステムにも広く実装を呼びかけました。
そのため、ムーバブル・タイプ以外でもトラック・バックが使えるようになっていきます。
ムーバブル・タイプは、プラグイン構造によって機能をカスタマイズできるように作ってありました。
多くのユーザーがプラグインを作りました。この中に、RSS Feed も多数ありました。
当時、RSS という仕組みはすでに存在していました。
念のために書いておくと、更新された記事などを通知するための仕組みです。
しかし、HTML を手書きで作っていた時代には、RSS もまた、手書きで作る必要がありました。
そのためあまり活用されているとは言えない状況でした。
ムーバブル・タイプの RSS プラグインは、こうした状況を変えるものでした。
HTML は、ユーザーが書いたテキストを元に自動生成されます。そして、それと同じように RSS も自動生成します。
もう、手間をかけて整合性を確認しながら手書きする必要はないのです。
トラックバックと RSS は、ムーバブル・タイプを真似した後追いのブログシステムにも実装されていきます。
しかしそれはまた、「類似のシステムだらけ」になっていくことも意味します。
そして、類似システムだらけの中では、利用ユーザーが多いムーバブル・タイプを使うのが一番良い方法でした。
トラブルがあっても、大抵は誰かが解決方法を見つけ、情報公開しています。
プラグインもたくさんあり、その使い方ノウハウも多くの人が書いています。
最初に書いた、「ブログと言えばムーバブル・タイプ」と呼ばれた時期は、こうした過程の後に作られました。
この状況は数年続きました。
今では、ワードプレスがとってかわり、シックスアパート社も合併され、無くなっています。
(ブランドとしてのシックス・アパートはまだ残っています)
トラックバックも、機械的であるがゆえに SPAM に使われるようになってしまって、今では嫌われている状況…
(トラックバックの機能を持っていても使わない、という設定にする人が多いです)
ワードプレスは現状一番使われているブログソフトですが、これもユーザー数が多いから使われ、どんどんユーザー数が増える、という状況になっています。
えーと、僕はムーバブル・タイプが流行する前に自分で「自分向けのコンテンツ・マネジメント・システム」を作って使っていたので、ムーバブル・タイプを使ったことは無いです。
ワードプレスも使ってないけど、知人が使っていてよく相談を受けます。
「寄らば大樹の陰」で使い始めてみたけど、余りに使いにくいので困っている…と。
dis るつもりはありませんが、多くの開発者が寄ってたかって開発した結果、機能は確かに多いのだけど、すべてがちぐはぐで使いにくい感じ。
あることをするのには方法がいくつもあるのに、類似する別のことをする方法は存在しなかったり…
(用意されていない、のではなく、全くできない。最初からそのような使い方が想定されていない。
実現したい人が多いようで、実現ノウハウのページも多数あるのですが、ソフト本体を書き変えるのでバージョンアップの度にやり直さないといけない…)
「HTML でしか結果を返さないので、HTML を元にタグを削る正規表現を書いて生データを得る」なんてバッドノウハウがゴロゴロあります。
…でも、寄らば大樹の陰は事実なんだよね。
他のブログシステムで同じような状況になったら、バッドノウハウすら見つからないのだから。
バッドノウハウでも、ノウハウがネット上で探せるだけありがたいというか…
企業向けのシステムなのでブログっていうのとはちょっと違うのですが、アサヒネットが mo'n brand っていうCMS (コンテンツマネジメントシステム)を作ってるですよ。
筒井康隆さんも、これを使って笑犬楼大通りってブログ書いてる。
(ブログと言うか、エッセイと言ったほうが良いのか)
企業向けなので、各支店が記事を書いても、本店側で許可しないと公開できないとか、地味だけどいろんな仕組みがある。
小売店なんかの支店がいっぱいあるような企業向けを想定していたのだけど、キャバクラで女の子が一人づつブログ持っていて、書いたことは店が必ずチェックする、なんて使い方もされているらしい。
そういう企業はサーバー管理なんてできない(能力の問題ではなく、それは本業ではないのでやりたくない)のが普通だから、クラウド貸しで、初期設定まで込みです。
ドメイン取得からサイトデザインまで全部やってくれて、あとは記事を書くだけ、ってところまで設定してくれる。
値段も、企業向けとしては安い。(小売店チェーン狙いだからね)
余りこういう機能を持った CMS って無いようで、人気があるそうです。
…だから何とは言えない。
一応言ってもよい許可は得ているけど、広く公開していいのかは聞いてないから。
まぁ、使ってあげてください。
使ってもらっても僕に一銭も入りませんが、嬉しくはあります。
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