今日は PC-6001 が発売された日(1981)。
今でも好きな人が多い名機ですね。
以前に PC-6001 の開発話を少し書いたけど、概要からもう一度。
NEC は、全く新しい半導体である「CPU」の販売促進のために、技術者向けのトレーニングキット TK-80 を発売します。
技術者向けに少し売れればよい、と言うつもりだったのが予想外の大ヒット。
しかし、名前の通りトレーニング用で、ハンダ付けから自分で行わなくてはならなかったため、購入したけど使えない、という人もたくさんいました。
完成品 TK-80 も発売されましたが、買ってすぐ使えるパソコンとして PC-8001 が作られます。
NEC の子会社の新日本電気では、PC-8001 の人気を見て、互換機を試作します。
回路設計を見直すことで PC-8001 よりも高性能で安いという自信作でした。
ところが、親会社である NEC から、PC-8001 の事業を割り当てられます。
(もともと「CPUの販売促進」を行う部署が作っていたので、完成品である PC-8001 は本来の仕事ではなかった)
これで、試作中の互換機の立場が宙ぶらりんに。
NEC に試作機を見せて販売許可を取ろうとしますが、NEC は許可を出しません。
そこで、PC-8001 の人気に水を差さないように、より安価なホビーマシンとしてつくりかえられます。
さらに安く作れるように性能を落とし、搭載予定だった PC-8001 互換の BASIC も破棄され、オリジナル BASIC となりました。
代わりに、家庭でのホビーとして使いやすいようにカートリッジスロットが設けられます。
時間がかかるカセットテープからのロード時間なしにソフトを楽しめましたし、RAM を入れることで BASIC で利用できる領域を拡張もできました。
当時「カートリッジスロット」は、 PC を家庭に普及させるための切り札として考えられていました。
IBM も、PC-Jr. でカートリッジスロットを設けていますし、後に MSX がカートリッジスロットを重視した設計にするもの無縁ではありません。
また、音楽演奏機能がつけられます。
カートリッジスロットや音楽演奏機能は、PC-8001 にはない機能でした。
#BASIC での音楽演奏は PC-6001 が世界初、という説もありましたが、現在では違うことが確認されています。
でも、普及数から考えて、後に影響を及ぼした機能としては最初期のものです。
専用のディスプレイではなく、家庭用テレビに接続できる仕組みとなりました。
キーボードも、タイプライターのようなものではなく、ソフトごとに各キーの意味を教えるシートを載せられるようなタイプに変わります。
こうして、PC-8001 とは全く違うマシンとなり、PC-6001 が発売されます。
安価であることから普及し、何よりも漫画「ゲームセンターあらし」で人気のあった すがやみつる が「こんにちわマイコン」を描いたことで子供たちのあこがれのマシンだったように思います。
たしか、小学生の時学校で使っていた集金袋(ただの封筒?)の裏に、PC-6001 の広告が載っていたように思います。
それを見るたびに「パピコン欲しい」と思っていたような…
PC-6001 は、PC-8001 と明確な差別化を行うため、機能を低く抑えることで作り上げられたマシンです。
でも、あらたな「シリーズ」となったことで、高機能化の道をたどります。
PC-6001mkII ではキーボードも通常のタイプとなり、ディスプレイも RGB 接続できるようになります。
(PC-6001 には、テレビ出力の色滲みを利用して、白黒画面で擬似的にカラー出力するテクニックがありました。これは PC-6001mkII では白黒表示となってしまいます)
当時、RGB ディスプレイと言えば8色表示が普通でした。
RGB とは光の三原色 Red Green Blue のこと。この「ある」「なし」の組み合わせは8色ですから、RGB で8色なのは当然なのです。
ところが、PC-6001mkII の専用ディスプレイでは、ここに「色相ずらし」を加えました。
通常の RGB 3つの信号線に加え、「色相をずらす」という追加の信号線があるのです。
黒は色相をずらしても黒なので2倍にはならず、15色を表示することができます。
#詳細はこの記事の最後に。
漢字 ROM も搭載されました。ただし、JIS漢字コードには準拠しておらず、独自のコードで 1024文字のみ、主に小学校で習う教育漢字です。
そして、おそらく最大の目玉機能が「しゃべる」ことです。
音声合成LSI を搭載しており、ローマ字として与えられた言葉を話します。
この音声が…なんとも味のあるもので。当時の思い出補正を持たない子供が今聞いたら、笑い出すでしょうね。
でも、当時はものすごいと思ったのです。
音声合成 LSI は「発声」だけを担当していて、その発生データは CPU で作り出しているようです。
この時、データは VRAM の「裏画面」に作り出されます。
そして、この処理は結構重いため、発声開始時に少し間が空きます。
…この間が独特の感じを出していて好き!
個人的話題としては、小学校の時の友人(今でも時々一緒に飲む)が PC-6001mkII を持っていました。
白黒の(先に書いたように、PC-6001 用のゲームを遊ぶと白黒の場合があった)スペースハリアーの出来の高さに驚きました。
PC-6001 シリーズは(PC-8001 との兼ね合いもあり)CPU は遅いのですが、画面が低解像度なのでゲームの動きは悪くありませんでした。
特にスペースハリアーは全ての敵を「四角」で表現するという思い切った移植。
こうすることで自由な拡大縮小が可能でしたし、敵キャラクターを保持するメモリも不要なため、メモリ節約になったのです。
#他機種ユーザーからは「冷蔵庫が飛んでくる」と揶揄されていましたけど、見た目よりも動きとゲーム性を重視した好移植です。
高校に入った時、部室に PC-6001mkII があり、BASIC で何本か簡単なゲームを書いた覚えがあります。
でも、放課後に少しいじれるだけだったので、余り本格的なプログラムをするわけでもなく、主に早口言葉とかしゃべらせて(ゆっくりしゃべるのを)笑っていたかな。
上位機種として発売された PC-6601 になると、音階を付けて「歌う」ことができるようになります。
また、この後にもう1機種発売される「PC-6600 シリーズ」では、フロッピーディスクを内蔵していました。
…この FDD のアクセス方法が違うため、外付け FDD と内蔵 FDD で I/O レベルでの互換性がなかった、と、たった今 Wikipedia で知りました (^^;
でも、その程度しか違わない。
高校の時に一番仲の良かった友人(今でも時々遊ぶ)が、PC-6601 を持っていました。
合唱コンクールがあった際、課題曲の楽譜を配られたのですが「よくわかない」と PC-6601 に歌わせ、カセットテープに入れたものをウォークマンで聞いていました。
…いや、だから独特の間が。音声合成のデータを用意するのに独特の間が空くのは健在で、「歌う」と言ってもテンポのずれた、音痴な感じです。
僕が面白がって「PC-6001 の喋るマネ!」というマニアックな芸を身につけたのはこの頃。
一番の仲の良い友人にウケていたからね。大学入学後にパソコンサークルでやったら、ほんの一部にだけバカ受けで、知らない人にはウケなかったので封印しましたが (^^;
この後、さらにグラフィック解像度を PC-8001の後継機種である PC-8801 と同等に引き上げた PC-6001mkIISR と、それに FDD を内蔵し、テレビとの親和性を高めた PC-6601SR が発売されます。
#シャープが X1 でテレビとの親和性を高め、テレビとパソコンの融合もこの頃の流行だったのです。
しかし、この頃になると、時代は完全に PC-8801 シリーズです。PC-6601SR が、シリーズ最後の機種となります。
普及台数は知らないのですが、おそらく PC-6001mkII の時が一番売れたのでしょうね。
PC-6001 はグラフィック画面の解像度が低かったため、相対的に「少ない画面アクセスで画面が動かせる」ことになります。
このため、PC-8801 よりも高速に動作するゲームも作れました。
#MSX と同等の解像度で、MSX よりは CPU が速いのですが、MSX にはスプライトや PCG があったため速度で負けます。
でも、MSX が登場するまではホビーパソコンと言えば PC-6001 だったのです。
mkII になると解像度が少し上がりましたが、PC-6001 互換モードで動作させるゲームも以前として多く発売されていました。
当時は「市場を広げるため」だと思っていたのですが、今思うと、解像度が低いほうがアクションは作りやすかったのかもしれません。
PC-6001 というと武田鉄矢のイメージがあるのですが、これも実は mkII 以降のイメージキャラクター。
それだけ mkII の頃は普及したマシンだった、ということになります。
PC-6001 には、当時人気のあったゲーム「ハイドライドII」が予定されたのですが、発売されませんでした。
作成会社は「PC-6001 ではメモリが足りない」と言っていたのですが、MSX用には大容量カートリッジを使うことで発売されました。
ユーザーが「カートリッジスロットがあるのだから、MSX と同じようにできるはず」と言えば「MSX と違い、カートリッジスロットに I/O の仕組みがなく、大容量にできない」との回答。
…でも、PC-6001 でも大容量カートリッジ作れるようですね。
まぁ、これは今の技術で作れた、と言うだけの話で、当時の商業ベースとしては作れなかったのだろうけど。
#当時商業的にカートリッジを作るなら、NEC に頼まないといけなかったと思いますし、わざわざ専用に基板設計してまで作ることもできなかったでしょう。
と、PC-6001 シリーズの歴史を認識したところで、パピコンクリッカーをお勧めしておきます。
上の知識を仕入れてから遊ぶと、このゲームを作った作者さんの熱い思いがよくわかります。
さらに細かなネタは、パピクリのアイコン作成元で見るとよくわかるかな。
…で、だれかタイムアタックしようよ。
後日追記
記事公開当初、PC-6001mkII の色信号の記述が「RGB に加え輝度信号」となっていました。
これが誤りであると、P6に詳しい方から指摘と共に詳細を教えていただきました。
(すでに記事中の文面は訂正しています)
mkII の色信号、追加の 1bit は輝度を変化させる信号ではなく、色相をずらす信号だったそうです。
専用ディスプレイ内に回路が入っていて、RGB では出せない色を出力する「色相ずらし」回路が入っていたのだとか。
初代 P6 はテレビに接続するマシンでした。NTSC では色相をずらすことが簡単で、これによって表示色数を増やすことができます。
P6mkII でも、ビデオ出力は可能で、色相ずらしによって15色が実現されているようです。
そして、専用 RGB モニタでは、NTSC ではなく RGB にもかかわらず、モニタ内の回路によって擬似的な「色相ずらし」を実現しています。
本体を持っていなかったにも関わらず、P6mkII の資料はなぜか手元にあります。
この日記書く際に「15色である」ことは確認したのですが、色をちゃんと確認していませんでした。
色番号は1~16ですが、先に9から書くと
黒 赤 緑 黄 青 マゼンダ シアン 白
です。1 2 4 が RGB で組み合しただけ。それで1~8はというと
黒(透明) 橙 青緑 黄緑 青紫 赤紫 空色 灰色
…おぉ! 「輝度半分」じゃなかった。
僕自身が、RGB なのだから追加の 1bit で出来ることは輝度を変えることくらい…と思い込んでいました。
そして、色を調べたら 15色で黒はそのまま、白が灰色になっているのだけ確認して「やっぱ輝度信号」だと早合点していました。
お詫びして訂正いたします。
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申し訳ありませんが、現在意見投稿をできない状態にしています。 【あきよし】 コメントに1年間気づいてませんでした…申し訳ない。mkIISRで同等になったのが「PC-8001」ではなく、「8801」の間違いでした。文章のほうは修正済みです。指摘ありがとうございます。 (2015-11-10 10:09:47)【名無し】 mkIISRでPC-8001と同等になったのはテキストの表示文字数(80x25)だと思います。初代PC-6001のグラフィック解像度は最大で256x192x2色、mkIIの時点で160x200x15色のグラフィックが表示できたので、mkIISRより以前にグラフィックの解像度はPC-8001の160x100を超えていました。 (2014-11-11 01:22:12) |