2013年10月13日の日記です


町口浩康さんの誕生日(1960)  2013-10-13 11:08:32  コンピュータ 今日は何の日

今日は町口浩康さんの誕生日(1960年)。

グラディウスのゲームデザイナーです。


詳しく存じませんが、ヒット作はこのシリーズのみ。

もっと言えば、シリーズは後になるほどマニア化するため、多くの人にとっては「初代」のみが記憶されているでしょう。


でも、この一本はゲーム史に輝く金字塔です。これ1本だけで、十分すぎる良い仕事だと思います。




グラディウスは語りつくされている感があるため、僕が新たに付け加えるようなことはありません。

概略だけを示しておきましょう。


1981年、コナミは「スクランブル」というゲームを発表します。


1981年に発売されたテレビゲームと言えば、ドンキーコングやギャラガ、フロッガーなど。いずれも画面固定、1ボタンのゲームです。

この当時に、スクランブルは横スクロールのシューティングゲームで、2つのボタンで空中と地上の攻撃を使い分ける、と言う内容で大ヒットしました。


大ヒットすれば模倣する、というのがゲーム業界の常。

ナムコは、「スクロールして、地上と空中を2ボタンで攻撃」という部分を真似して、1983年にゼビウスを発表します。

キャラクターごとに7色しか使えなかった色を、ほとんど灰色のグラデーションで使い切り、立体的な陰影を表現する、という思い切ったグラフィックと、「たかがシューティングゲーム」なのに深遠なストーリーを感じさせることが評判となり、大ヒットとなります。


これを受け、コナミでは「ゼビウスを超えるゲームを作る」プロジェクトが始まります。

(ちなみに、ゼビウスがスクランブルを模倣して作られた、と言う打ち明け話はもっと後になって出てきたもの。当時はコナミの人は知りません)


各種ゲームを調査した結果、ゲームのベースはやはりスクランブルとなり、「スクランブル2」の作成が開始されます。これが発売時には「グラディウス」と言う名前になります。


ところで、スクランブルにはあったのに、ゼビウスではなくなっているものがあります。

まぁ、違うゲームなので細かなことを言えばいくらでもあるのですが(笑)、「多彩な面構成」はゼビウスに引き継がれなかったもの。


ゼビウスは、面が進むことで難易度は上がりましたが、基本的には同じことの繰り返しでした。

しかし、スクランブルは、次々と面構成が変わるゲームでした。


山岳地帯に作られたミサイル防衛網を抜け、洞窟をくぐり、ビルの合間を抜け、最深部の要塞を破壊する…ドラマティックな展開ですが、単純にそれだけではなく、面の構成方法が全然違うため、攻略法も変わってくるのです。


グラディウスでも、このような多彩な面構成は残されています。




グラディウスの発表は 1985年5月ですが、「開発期間は1年くらい」あったそうです。

この間の 1984年7月には、ナムコが「ドルアーガの塔」を発表しています。


ドルアーガの塔は、「パワーアップ」の概念を導入したゲームでした。


これ以前にも、パックマンのパワー餌やポパイのほうれん草、ドンキーコングのハンマーなど、「パワーアップして立場逆転」の要素は存在しましたが、いずれも一定時間のみの要素でした。

継続的に主人公がパワーアップし、複数のパワーアップを重ねていける、というのはドルアーガの塔が最初ではないかと思います。


グラディウスでも、独自のパワーアップシステムを取り入れました。

当時他にも「ゼビウス風ゲーム+パワーアップ」と言う作品は発売されています(Bウィングなど)。


しかし、グラディウスが優れていたのは、先に書いた「多彩な面構成」とパワーアップを見事に融合させていることです。

どちらか片方しか選べないレーザー/ダブルのどちらを使うか、いつバリアを使うか(状況によっては、背景の障害物にバリアがぶつかり、あっという間になくなってしまう)、オプションをどのように配置するか、などなど。

スクランブルでも面構成に合わせた攻略は必要でしたが、その一部として「パワーアップ」の選択が綺麗に組み合わされているのです。


さらに、ゼビウスはランダム性の入っているゲームでしたが、グラディウスは完全にパターンゲームでした。

敵の出現位置などを覚えてしまえば、出現と同時に倒せる、と言うことになります。


これにより、グラディウスはシューティングゲームでありながら、パズルのような試行錯誤を必要とするゲームとなっていました。


グラディウスがパズルである、というエピソードの一端として、発売から数年後にゲーメスト誌で連載された「グラディウス4周目以降の復活パターン」を挙げておきます。


グラディウスでは死んでしまうとパワーアップが失われますが、その状態から完全パワーアップまで「復活」させるための手順を、詰将棋のように解説した連載でした。


#ゲーメストが現在手元にないため、発売からどれくらいたっていたか、正式タイトルがこれであっているか不明。知っている方は教えてください。




バブルシステムにも少しふれておきましょうか。

グラディウスは、バブルシステムと呼ばれる基板で供給されました。


このシステムには、磁気バブルメモリが採用されています。

このメモリ、一時期は「将来の有望メモリ」だったのですが、今ではすっかり消えてしまいました。


まぁ、簡単に言えばカセットテープやディスクと同じような、磁気記録メディアです。

磁気メディアでは、磁気記録された媒体を動かすことで、周囲に電場を発生し、読み取りを行うのが普通です。しかし、媒体を動かさなくてはならないと言うことは、モーターなどの可動部品を使うことになります。

可動部品は壊れやすく、メンテナンスが欠かせないため、いろいろと面倒も多いです。


そこでバブルメモリ。

詳細はややこしいので省きますが、磁気バブル現象と言うものを使用したもので、記録媒体を「変化する磁場」の中に置くと、磁場が変化するたびに「磁気記録」が一方向に移動します。


読み取りは移動先の端で行い、読み取った結果は逆の端に書き戻します。

こうすることで、可動部品がないのにカセットテープのようなシーケンシャル読み出しが可能となります。


パソコンでは、FM-8/11 や BUBCOM 80 で記録メディアとして使われています。

しかし、先に書いたようにカセットテープと同じような原理なので遅く、あまり普及しませんでした。


ならば、毎朝1回の起動時だけ使えればよい業務用に…とグラディウスにも採用されたのだと思いますが、これは「磁気記録メディア」であることを忘れてはなりません。

当然周囲の磁場に弱いのですが、ブラウン管は強い磁場を発生します。そして、業務用ゲーム機は、狭いスペースにブラウン管と基板を格納してあるのが普通です。


バブルメモリは壊れやすく、問題が多かったようで、グラディウスでは後に ROM 版も作られています。




グラディウスは、シューティング史に輝く金字塔ですが、シューティングを衰退させた戦犯でもあると思っています。


業務用ゲームでは、「長くプレイされないこと」はかなり重要です。

しかし、グラディウスの大ヒットで、類似したゲーム性のシューティングゲームが増えました。


グラディウスは先にあげたようにパターンゲームの側面を持っていたため、最初のうちこそ売り上げがよいのですが、徐々に一部の人が占有する形で売り上げが落ちていきます。


シリーズを重ねるうちに、難易度を上げるなど対応を図りましたが、今度はマニア以外には難しすぎて人気の出ないゲームになっていきます。


シューティングは一定の需要があるためにゲームセンターでは買ってくれますが、決して複数台を導入するようなものではなくなっていきます。


かわりに人気が出たのは、対戦格闘でした。

もちろん、面白かったからファンが増えた、というのはありますが、対戦格闘では「お客さん同士が潰しあってくれる」ために、プレイ時間が非常に短く、ゲームセンターで導入しやすいという側面もあったのです。


面白ければゲームが売れる、というのはある種の幻想です。

もちろん、回すために面白さは重要な要素ですが、ビジネスとしてうまく回らないものは、どんなに面白くても除外されていきます。

(それを跳ね除けるほど強烈な面白さを持つ作品、というのも時折存在しますが)


シューティングゲームは、グラディウスのヒットによって、残念ながらこのサイクルから外れていき、その空席に対戦格闘がうまくはまったのです。


バーチャファイター2など、ゲーム開始5秒でリングアウトに追い込む、と言うようなプレイスタイルもありましたからね。

100円入れて、15秒しか遊べなかったとしたら、普通のゲームなら2度と遊ばないでしょう。

しかし、対戦格闘では「くやしい」と言ってもう 100円入れてくれる。ゲームセンターにとっては夢のような商材でした。




インベーダーゲームの流行の後、ギャラクシアンなどの類似ゲームが出た後で、パックマンが出ます。

この後は「キャラクターがコミカルに動くゲーム」が流行し、「もうシューティングのアイディアは出尽くした」と言われました。


でも、上に挙げたスクランブル、ゼビウス、グラディウスでシューティングは再び見直され、対戦格闘のブームで「シューティングのアイディアは出尽くした」と言われました。


でも、その後もレイフォースのシリーズとか、レイディアントシルバーガンから斑鳩の流れとか、雷電系から首領蜂系の流れとか、大ヒットには届かなくても、新しいタイプのシューティングを作ろうとする人たちはいます。

まだまだアイディアが出尽くすなんてことはないのです。


シューティングはテレビゲームの中でもかなり古いゲームジャンルです。

つまりは、原始的に人間が面白いと思う感覚にかなうものなのです。


いつかまた、新しいタイプのシューティングが出てきて、「出尽くしたなんて言ったの誰だよ」と笑って言えると良いな、と思っています。



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