Mouse in Maze は、日本では「迷路のネズミ」とも訳されている。
世界最初のテレビゲームとも呼ばれる…とは以前も書いたけど、僕も実物で遊ぶまで半信半疑だった。
「ユーザーが作った迷路を、ネズミがゴールまでいく」というのがゲームだとは思えなかったのだ。
迷路を抜けるのを見ているだけなら、デモプログラムでしょ?
でも、遊んでみてわかった。これは明らかにゲームだ。
「迷路のネズミ」以前にも「テレビゲーム」は作られていて、そちらの方が古い、とされることもある。
そのことは否定しない。どれが最初だ、という論争は見解の相違も含むため不毛だから。
そして、「迷路のネズミ」に隠しキャラが入っていたのに驚いた。
こういう遊び心こそが、これが「ゲーム」である証拠だと思う。
でも、隠しキャラって、ゲームの歴史としては「ゼビウス以降」ということにされているよね。
「迷路のネズミ」以前には、ゲームのキャラクターは存在しない。ただの点とか記号だ。
はじめてキャラクターを作ったゲームで、すでに隠しキャラクターが作られていたというのは、すごいことだと思う。
「迷路のネズミ」にキャラクターを差し替えた別バージョンがあった、というのは「ハッカーズ」にも書いてあった。
「迷路のネズミ」のプログラムを見つけ、動作するようになった時、別バージョンの方も見てみたいと思った。
しかし、残念ながらどこにもプログラムはなかった。
長い時代を経る間に失われたのだろう…と残念に思っていたら、そうじゃなかった。
正確には、「別バージョン」ではなく、「隠しキャラ」だったのだ。
「迷路のネズミ」を遊ぶ際に、簡単な操作を行うことでチーズがマティーニグラスに変わる。
これは、VIP だけに許される…と説明に書いてあった。
そう、隠しキャラと言っても何のことはない、ちゃんと説明があったのだ。
ただ、あくまでも「隠し」扱いだったようで、「こんな操作すると何が起きるかな?」的に軽く触れているだけ。だから気づかなかった。
この操作、難しくはないが、TX-0 の操作を理解している必要はある。
当時から「ゲームのプログラムを読み込ませる操作だけ理解していて、ゲームを遊ぶ」人はいたらしい。
だから、VIP だけに許される、というのはちゃんと TX-0 を理解している人だけが見られる、と言う意味だ。
エミュレータで遊んでいると、少し動作がおかしいところがあるように感じた。
これが元からあるバグなのか、エミュレータのバグなのかわからないため、「迷路のネズミ」のプログラムを解析している。
非常に巨大なプログラムの上、当時のプログラムなのでスパゲティ具合が半端ではない。
どうもどこかの段階で元ソースは失われたらしく、パッチあてに次ぐパッチあてで機能が拡張されている。
空いている隙間メモリにプログラムを突っ込んで、ジャンプしまくって動かしている状態だ。
解析を拒んでいるとしか思えない。
でも、解析してわかってきたこともある。
ネズミは、単に迷路を進むだけではなく「体力」が設定されている。
歩きすぎて疲れると停止してしまう。続行不可能なわけで、ゲームオーバーだ。
遊んでいて停止してしまうのはバグだと思っていたけど、これはゲームを難しくする演出だったのだ。
ネズミがチーズを食べる(もしくはマティーニを飲む)と体力が回復する。
チーズはゴールなのだが、3つまで置けるのでうまく配置し、迷路を隅々まで探索させることが目的になる。
そして、無事ゴールしたらもう一度スタートする。
2回目は、ネズミが迷路を覚えているため、無駄な道は通らない。
1度目に時間がかかった迷路を、2回目はスマートに解く。
これが可能な迷路をうまく設計するのが、このゲームの楽しみだ。
#TX-0 実機では、迷路を記録しておく方法も用意されていた。(紙テープにパンチする)
今のところ、エミュレータでは紙テープパンチ機能がないため、保存はできない。
体力だけでなく、ネズミがあまり頭がよくないのもゲームを難しくしている。
ネズミがどのような行動をとるか、試行錯誤しながら人工知能のルーチンを理解する必要がある。
もう一つ、これはプログラムの都合上の制約があって、チーズを複数置くときは、それらが「最短経路」上になくてはならない。
2回目はスマートに解く、という都合上の制約なのだが、袋小路にチーズを置くことはできない。
これを明確にするためか、チーズを食べると、その時の進行方向に対して「前」と「後ろ」に見えない壁ができた状態になり、後戻りはできなくなる。
そのため、これもややこしいのだが「途中のチーズを食べたら、曲がらなくてはならない」という制約が生まれる。
なんか変な制約でバグっぽく感じる。
だからプログラムを解析していたのだけど、「学習の都合」だという気がしてきた。
というわけで、遊んでみたい方はTX-0 エミュレータで迷路のネズミを遊ぶことが出来ます。
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