1983年の映画に「ウォーゲーム」と言うのがある。
結構有名な映画だし、古典でもあるので見たことがある人も多いのではないかと思う。
僕は中学だったか高校だったかのときに、テレビで放映されたのを見た。
あらすじは先にリンクした Wikipedia を読んでもらうと良いが、自分の記憶では、映画の中に出てくるアメリカ軍の重要コンピューターシステムは、人工知能研究の黎明期のシステムが「拡張を繰り返して」大規模な用途に使われるようになったもの、だった。
このシステム上の軍事演習シミュレーターを、高校生ハッカーがゲームだと思って起動してしまう。
ソ連からの核攻撃のシミュレーション。急に稼働したそのシステムを「事実だ」と誤認した軍が動き始めてしまい、報復核攻撃を行おうとする。
急に展開された米軍の布陣に、ソ連も反応。世界は全面核戦争の危機に…というのが大まかなストーリー。
最終的には、人工知能研究に使われていた初期のころに散々遊んだ「三目ならべ」には勝者がいなかったことを思い出し、全面核戦争にも勝者はいない、とコンピューターが悟り、戦争は回避される。
実際には核ミサイルの発射のような重大事項を、よく確認もせずにコンピューターだけに任せたりはしないし、コンピューターが「悟る」と言うようなこともない。
全面核戦争、という話題にはリアリティがあった世の中だったが、コンピューターの描かれ方はいい加減だな、と思った。
ところが、最近 Whirlwind と TX-0 の研究をしていて、ふと気が付いた。
ウォーゲームに出てくるコンピューターのモデルって、この2台を混ぜ合わせたものだ。
Whirlwind(WWI) は、拡張されて SAGE という防衛システムの中核となった。
一方で、WWI はトランジスタによって小型化されて TX-0 となり、人工知能の研究に使われた。
(実際、三目ならべが作られた)
三目ならべは「ゲーム」として作られたのではなくて、人工知能研究の一環だった、というのがミソだ。
αβ刈りも必要ないほど簡単な探索だけど、相手の出方を伺いながら利益を最大限にするためのアルゴリズムを備えている。
#利益を最大限に…というのは、出来ることなら相手に勝つ、そうでなくても引き分けに持ち込んで負けない、と言う意味だ。
同じく、TX-0 で作られた人工知能である MOUSE は、迷路を学習して出口までの最短経路を探そうとするものだった。
ここに、「学習」というキーワードもあるわけだ。
ウォーゲームの作者は、ちゃんとこうしたコンピューターの技術を調査したうえで話を組み立てたのだろう。
三目ならべで人間の相手を出来る TX-0 は、防衛システムの中核を担う SAGE とほぼ同じものである。
TX-0 は三目ならべで、相手の出方を伺いながら「少なくとも引き分けに持ち込む」能力がある。
また、TX-0 は MOUSE で、試行を繰り返しながら学習を行うことが出来る。
これが、話の中で「核戦争シミュレーションを繰り返すことで、この戦いに勝者は居ないことを学ぶ」というコンピューターになったのだろう。
こんなのあり得ない、と当時の自分は笑ったが、それは自分の知識が足りなかったための認識不足だったことになる。
もちろん、コンピューターが自分で「悟る」ようなことは今でもないけれど、それ以外の部分は事実に基づく話だったのだ。
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