僕の一番古い記憶。
幼稚園に入る前…なので、たぶん3歳。(2年制幼稚園に通っていた)
幼稚園に行く、ということのうれしさと不安で、庭で洗濯物を干す母を、部屋の中で見ながら話しかける。
幼稚園楽しみ。行ったら友達たくさんできるかな…。
幼稚園に入ってからの記憶。
家の近所の側溝が妙に気になる。
その中に、自分の靴が落ちている気がするのだ。
側溝のふたに開いた穴から中を覗くが、靴など落ちていない。
場所が違うのかも、と、その周辺を良く覗いていたが、どこにも無い。
そもそも、側溝のふたの穴(昔はよくあったコンクリ製のふたで、外すための持ち手として両脇が欠けていて、並んだ状態ではそこが穴となっている)から靴など入るわけが無いのだ。
自分の靴を脱いで穴に当ててみる。ぜんぜん入らない。
なぜこの穴から中に靴が落ちた、と思っているのだろう?
しかしどうも気になるし、穴の中に落ちている靴を覗いていたことがある気もするのだ。
幼稚園の間気になっていたように思う。小学校に上がるころには、きっと夢だったのだと思うようになった。
さて、大人になって子どもができて、いろいろなことに気づいた。
幼稚園の頃の記憶、自分の中では「つじつまが合わない」ために夢だと思っていた。
一番古い記憶は幼稚園に入る直前のものだと、子供が生まれるまで信じていた。
でも、子供を観察していたら、合わないと思っていたつじつまが、次々に合い始める。
他の記憶として、自分が走るたびに母親に「何もなくても転ぶんだから気をつけなさい」といわれた思いがある。そして、実際良く転んだ記憶もある。
これ、2歳くらいの記憶だ、と気づいた。
歩けるようになる1歳過ぎでは、まだ走れない。でも、2歳くらいで走るようになった子供は、バランスを崩して何も無いときに転ぶ。
1歳半くらいの子供の靴は、とても小さいし柔らかい。
そう、「側溝の穴」に押し込めるほどに。
そして、この頃のこどもは、「ぽっとん遊び」が好きだ。
小さな穴に、何かを入れて落とす遊び。
赤ちゃん向けおもちゃにも、それを作りこんだものが非常に多いし、小さな穴が空いた箱と紙くずでもあればそれで十分。しばらく遊び続けている。
また、1歳半くらいのこどもは、「目の前のこと」には敏感だが、先のことに思いが及ぶほど頭がよくない。
「靴が入っている」はずと思っていた側溝は、ただ入っているはずではなく、「自分で押し込んだ」気がしていた。
たしか、靴が穴に引っかかって脱げてしまったのだ。
穴に入りかけた靴を見て、自分で押し込んだら中に落ちて取れなくなった。
「自分のもの」が「手の届かないところ」にある。どうにかしないといけない、という気がした。ずっと穴を覗き込んでいた。
これが強い記憶となって、自分で外に出て遊んでもよくなった幼稚園の頃、「側溝が気になる」状態になっていたのだ。
何度も覗き込み、探しても見つからなかった。
だから「夢だったのだろう」と思ったのだが、なんのことはない、どぶ掃除の際にでも捨てられただけの話だろう。
大人になると、いろいろなことがわかるので「つじつまが合わない」と思っていたことが間違いだったと気づく。
そして、「自分の一番古い記憶」は更新された。どうやら1歳半の記憶だ。
ちなみに、妻の一番古い記憶は6ヶ月くらい、と推定される。
天井に写る、レースのカーテン越し(?)のゆらめく光を眺めていた覚えがあるそうだ。
風がそよぎ、レースがゆれると光も動く。周囲には音は全く無い。
ずいぶん不思議だな、と感じて見ていた記憶があるそうだ。
ただ、不思議だから眺め続けていただけでなく、ほかに何もやることがなかった、という思いも残っているらしい。
上を向いているしかない。寝返りをうてるようになる前の記憶だ。
音が無いのは、おそらくまだ言葉を理解していなかったからだろう。
カーテンが風でそよいでいたのなら、窓は開いている。
周囲に本当に音がなかったわけではなく、その音が理解できないから記憶に残らなかった、という推察。
妻が保育園の他の子の保護者と雑談していて、この子達は、大きくなって保育園のときを思い出すのかなぁ、という話になったそうだ。
しかし、自分が保育園・幼稚園時代のことを全く覚えていない、という人が多く、だから自分の子供も忘れてしまうのだろう、という話の流れになったらしい。
そこで、妻が「6ヶ月くらいと思われる記憶がある」と言ったら、かなり驚かれたらしい。
妻の「6ヶ月」というのも、自分の「1歳半」というのも、自分の子や、保育園の他の子たちの行動を見ていての推察だけどね。
さて、自分の子供たちはいったい、どのくらい小さかったときのことを覚えているのか。
8歳の長男は、5歳くらいのときまで「2歳の誕生日にプレゼントを買ってもらって、とてもうれしかった」記憶があったようで、時々その話をしていた。
しかし、8歳の今では、その記憶自体を忘れてしまったようだ。
もしかしたら、忘れたと思っていても、子供ができて行動を観察していたら思い出す、というようなことがあるかもしれない。
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