ちょっと昔話。OldGoodComputer ミニ。
僕は、Mac の OS としては System6 が一番好きだった。
知っている人がほとんどいない古いものだが、知っている人には「それなりに」賛同してもらえる。
Mac は、よく「Window システムの元祖」的に言われる。
まぁ、それはそうなのだが、Mac の Window というのは、最初はそんなにたいしたものではなかった。
だって、マルチタスクじゃないんだから。
Window が出ている、と言っても、1つのアプリケーションだけだ。
アプリケーションが複数の Window を開くことはあるかもしれないが、画面が Window だらけでごちゃごちゃ、と言うような事態にはならなかった。
マルチウィンドウシステムを初心者にいじらせると、間違えて「現在使用しているのとは違う」アプリの Window をクリックしてアクティブにしてしまい、見ていたウィンドウが裏に回って消えたことで混乱する、ということになりやすい。
System6 では、このようなことは起こらなかった。
だってマルチタスクじゃないんだから。
これが、僕が System6 が好きな理由だ。
Mac が目指した「文房具としてのコンピューター」、初心者でも気軽に使えるものだった。
…蛇足ながら付け加えておけば、System6 はマルチタスクではなかったが、マルチジョブに「できた」。
デフォルトでは、本当にシングルタスク、シングルジョブである。
でも、Multi Finder を使うと、複数のアプリケーションを同時に起動できた。(マルチジョブ)
マルチジョブ状態でも、動作しているプログラムは1本だけ(シングルタスク)で、ユーザーがタスクを切り替えると、別のプログラムが動き始めた。
実は、CPU が非力な時代はこちらのほうが効率がよかった。
System7 以降は、OS が一定のタイミングででタスクを自動的に切り替えていく「マルチタスク」になった。
同時に、先にあげた「アクティブウィンドウ以外をクリックして混乱」という現象が起きるようになり、初心者向けではない「パソコン」になってしまった。
さて。
Jobs は、Mac を「文房具」として設計した。
オフィスのデスクに置かれた、新しい文房具。コンピューターを知らない人でも気楽に使える。
その後、Sculley によって Jobs は Apple から追放。
Sculley が Mac を「再設計」させる過程で、より普通の PC になった。
Windows は、最初から Mac を真似ていた。
…というと語弊があるか。Gates だって alto の存在は知っていた。
でも、Windows は Alto を真似したものではなく、Mac を真似したものだ。
そして、System7 と同じ失敗をしていた。
おそらく、Gates はこの失敗を理解していた。
でも、どうすればうまくできるのかはわかっていなかったように思う。
Jobs が Apple に復帰してからは、多くの人が知っているだろう。
iPhone で、GUI を「一新」した。
iPhone の GUI は、 System6 と非常によく似ている。
画面は、1つのアプリケーションが占有する。間違って別のウィンドウをアクティブにしてしまう心配は無い。
iPhone 以前、Gates は、スマートフォン向けにも Windows を提供していた。
Windows といっても、PC との互換性は無いものだが、小さな画面で、タッチパネルで操作するには…ずいぶんと使いづらいものだった。
しかし、iPhone 以降、スマートフォン向け Windows は GUI が一新され、iPhone 風になった。
そして、普通の PC 向けの Windows も、次の Windows8 で同じ GUI に統一されることになった。
つまり、ここに来てやっと、自分が「一番使いやすかった」と思っている、System6 に、時代が追いついてきたことになる。
いや、追いついてきたのではなく、ぐるっと一周回ってきたのかな。
ただ同じ地点に着たのではなく、螺旋階段のように上のステップに移っているが。
今度は、ちゃんとしたマルチタスクだ。
ところで、System6 には、デスクアクセサリ( D/A )という仕組みがあった。
シングルタスクの System6 で、「ちょっとだけ」違う仕事をさせるための、小さなプログラムのことだ。
D/A は、アプリの起動中でもいつでも呼び出せた。
標準では電卓とか、時計とか、スケジュール帳とか、メモ帳とかが用意されていたけど、サードパーティ製の高機能な D/A なんかもあった。
D/Aは、いつでも呼び出せるようにするため、特殊な形式でプログラムする必要があった。
でも、System7 になってからは、マルチタスクになったため D/A は無くなった。
同等機能のプログラムが「アプリケーション」として用意されていたので、問題は無かったけど。
今は、画面が広いので、こうした「ちょっとしたツール」は、デスクトップガジェットとして表示しっぱなし、と言うものが多い。
ガジェットも、普通のプログラムとは仕組みが違う、という点では D/A と似ている。
ガジェットは、HTML と Javascript でできている。つまり、小さな WEB ページみたいなものなのだ。
(ガジェット、という仕組みを最初に提唱したのは Mac OS X だが、その元は「OS と WEB ブラウザの融合」を図った WinXP + IE に行き着く。
さらに、XP + IE で OS と WEB ブラウザが融合したのは、WEB ブラウザは将来 OS になる、という Netscape の野望を逆から攻めるためだ)
D/A の「いつでも動かせる」と言う仕組みは、マルチタスクと言う形に進化し、D/A は発展的に消滅した。
同じことが、今起ころうとしている。
Windows8 では、HTML + Javascript で、「普通の」アプリケーションを作ることができる。
ガジェットだけが特別な時代は終わり、発展的に消滅するのだ。
でも、これはちょっと話が違う。
「常に画面の隅にあって便利」というものが、「画面はアプリケーションが占有」というコンセプトにしたがって、1つの画面に広げられてしまうのだ。
ちょっと時間を確認するために、画面を切り替えて時計を探さなくてはならない。
ちょっと天気を確認するために、画面を切り替えて天気予報を探さなくてはならない。
すでにマイクロソフトは、ガジェットの「消滅」に向けて準備をしている。
公式に用意されていたガジェットライブラリのページはすでに閉鎖されており、再インストールなどで「今まで使っていた便利なガジェット」を失うと、もう入手することが出来ない、と言う可能性がある。
(そういう問い合わせが、Q&A ページに多数掲載されている。
ガジェット作者のページで配布されている場合なども、人気があるがジェットほどマイクロソフトのライブラリページを紹介するリンクが多いため、公式ページが埋もれてしまって探せない、という悲劇が起きている)
さて、ガジェットは本当に「発展的に消滅」できるのだろうか?
それとも、誰かが「Windows8 で無理やりガジェット表示」するようなハックアプリを作ることになるのだろうか?
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