週末、子供と出かけた際にマクドナルドに入った。
「おもちゃは買わないよ」と約束して入ったのだが、手持ちのクーポンやらセットの情報やら総合して考えると、ハッピーセットを混ぜて買うのが安いと判明。大人の都合でおもちゃをもらう。
ドラえもんの、どこでもドアの形をした赤青3D眼鏡。赤青印刷されたカードが4枚ついている(裏表に絵がある)。
週末限定のカードももらった。こちらは同時配布のおもちゃの宣伝で、4種類のおもちゃで遊べる「絵」が書かれている。
…このカードを見て思った。すごく科学的だ。
ドラえもんの「秘密道具」らしさを出すために、科学トリックを上手に取り込んである。
1つは、3D眼鏡用の絵。
まぁ、これは多くの人がわかるだろう。青と赤で少しずれた絵が描いてある。右目と左目に赤と青のフィルタをつけると、視差が生じて立体に見える。
1つは、赤のランダムドットノイズに青の線で絵を描いた絵。
そのままでは絵が見えにくいが、赤いライトを当てることで赤いノイズを見えなくすると、青い線の絵がくっきりと浮かび上がる。
(実のところ、3D眼鏡の赤をフィルタとして使っても、絵が浮き出る)
1つは、水に濡れると絵が出てくる印刷。絵が書かれた上から特殊インクをかぶせてあり、この特殊インクが水で透明になる。乾くと元に戻る。
1つは導電性インクを使った印刷。見た目には同じ「黒」の印刷でも、導電性インクを使った部分とそうでない部分があり、電気が流れるかどうかでクイズの答えがわかるようになっている。
マクドナルドのおもちゃは、言っては悪いが「子供だまし」がかなり多い。
今回もらったおもちゃだって、作りはかなり安っぽい。
でも、こうした「科学おもちゃ」であれば、適切な科学解説をつけることで価値はずっと高まるはずだ。
ドラえもんの版権元は小学館なのだから、小学館の学習雑誌スタッフに頼んで解説を書いてもらい、ホームページで公開するだけでも評価が高まるだろう。
でも、ホームページを確認してもそのような情報はなかった。
子供のおもちゃが「お勉強」になってしまうと嫌われる、という側面もあって慎重なのかもしれないが、嫌な子は情報を読まずに捨てればよい、と言うだけのこと。
遊びの中で仕入れる経験こそ、本当に身につくのだから、大人は子供の疑問に答えなくてはならない。
必要なのは科学知識ではなく、「なんでこうなるんだろう?」という、カガクのココロだ。
マクドナルドの話だけではない。
近年、あとちょっとで非常に良い科学解説になるのに、と残念に思うことが多い。
「飛び出せ科学くん」という番組があるのだが、深夜に放映している時は正しく「科学番組」だった。
でも、ゴールデンタイムになってからは、すっかり似非科学番組。
ゴールデンタイムだから内容を平易にしたのかもしれないが、平易であっても「科学番組」であれば、正しい解説が付けられるはず。起こっている現象に対する説明が明らかに間違えている、と言うのはいただけない。
(この番組の中では、明らかに間違った説明が非常に多い)
同様のことが「所さんの目がテン」にも言える。日曜朝にやっていた頃はいい科学番組だったのに、土用の夕方になってから、似非科学が増えた。
どちらも「時間帯が変わったから、視聴者層に合わせた」とかではない。
なぜなら、どちらの番組も、時々非常に鋭く科学的なことがあるからだ。
これはつまり、「製作スタッフの質が落ちた」のである。
毎週行われる番組は、製作スタッフが幾つかの班に別れ、1つの班は1ヶ月くらいかかって製作準備をしている。
以前はどの班にもそれなりの「カガクのココロ」を持った人が入っていたのだが、今ではそうした人が減った結果、正しく科学的な番組を作れる班と、似非科学になってしまう班に分かれてしまっているのだ。
#ところで「目がテン」に登場した話題は、半年程度たって科学くんにも登場することが多い。
安易な盗作と言うわけではなさそうで、おそらく、企画製作を行う会社が、「科学番組」を作るのが得意な下請プロダクションで、両方の番組で同じ会社なのだろう。
一方、科学番組を標榜しているわけではない「鉄腕DASH」などは、非常に良い科学番組となっている。
NHK の「大科学実験」も良質な番組だ。
キャッチフレーズの「やってみなくちゃわからない」の言葉通り、やってみたら案外つまらなかった、という回も多いが、それでも仮説を立て、実験し、検証するという科学らしさはでている。
地上波放送ではないが、海外番組の「怪しい伝説」も良い。
これは科学番組ではないし、出演者も科学の知識はそれほど無いため間違った前提に立って実験を行うことも多いのだが、仮説・実験・検証というカガクのココロは備わっている。
…最近、人気にあやかったのか「怪しい伝説・日本版」というのも作っていたが、こちらはいただけなかった。
科学プロデューサーに面白い化学実験をやってもらっているにもかかわらず、番組内での取り上げ方にカガクのココロが感じられない。
どうも、「目がテン」や「科学くん」と同じ現象が起こっているようだ。
つまり、スタッフにカガクのココロを持った人が存在しないのに、科学番組を作ろうとしている。
急に話題はそれる。
1960年代の MIT(マサチューセッツ工科大学)の学生たちの間で、チャイナタウンで中華料理を食べるのが流行した時期があったそうだ。
メニューは中国人向けと、アメリカ人向けがあった。内容はだいたい同じだが、書いてある言語が違う。また、中国人向けメニューには、アメリカ人好みではない味の料理も載っていた。
彼らは中国語の辞書を持参し、あえて中国人向けメニューを使い、漢字の意味を調べながら注文し、出てくるものを楽しんだ。
そして、中国料理の「料理名」が非常にシステマティックにできており、組み合わせられた漢字が、素材や料理法を記していることに徐々に気づいていった。
そして、ある年のエイプリルフール、彼らは「実験」を行う。
メニューに書いてないものでも、素材と料理法を適切に組み合わせてあれば、料理が出てくるはずだと考えたのだ。
彼らは、メモに「甘酢苦瓜」と書いて、これが作れるかと聞きながら店主に渡した。
店主は「作ることはできるけど、不味くて食べられない。ダメだよ」と突っ返した。
作ることができる、というのは、彼らの考えた「素材と料理法」の組み合わせが間違ってはいないことを意味する。
ならば、完成形が想像通りか確かめたい。
彼らは「中国系移民は知らないかもしれないが、アメリカ人は4月1日には毎年これを食べている」と言い切って、とにかく作ってもらうように頼んだ。
できた料理は、不味くて食べられなかった。
でも、彼らが思っていた通りの素材が、思っていた通りの料理法で作られてきた。
彼らは、漢字と言う未知の記号を面白がり、注文を通してよく観察し、仮説を立てたうえで、メニューにない料理を注文する、という「実験」をした。
そして、でてきた料理が想像通りである事を検証した。仮説は正しかったのだ。
馬鹿馬鹿しいとお思いの方もいるかもしれないが、それがどんなことであれ、興味を持ったら仮説を立てて実験して検証する。
これが「カガクのココロ」である。
(参考資料「ハッカーズ」)
科学は特別なものじゃない。
知識すら必要ではない。
「面白い」「なんでこうなるんだろう?」と感じること。
自分なりの仮説を立てること。
その仮説にしたがって実験を行い、検証すること。
カガクのココロを持ったものにとっては、チャイナタウンのレストランだって面白い実験対象だ。
日常はカガクの機会にあふれているが、多くの人は気づいていない。
このことが非常にもったいない。
この話、2年半後の追記があります。
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