もう2ヶ月ほど前に読んだ本だが、いまさら記録しておく。
自宅で仕事をしていると、通勤時間も無いので本を読む暇もなかなか無い。
その中でも、それなりに本は読んでいるのだが、わざわざ人様にお勧めしようというような本にはなかなかめぐり合えない。
しかし、これは非常に面白かった。オススメ。
(大体、買ったのは1年も前だ。いまさら感はある)
一級の生物学者が、本のタイトルどおり「生物」と「無生物」の違いについて講義してくれる教養書である。
…と、いうつもりで読み始めた。
教養書である、というのはある意味正しい。生物に興味がある人なら素直に楽しめるだろうし、そうでない人でも「生きているとはどういうことか」というのは興味のあるテーマだろう。
この本は、この大問題の歴史を追いかけながら、作者なりの結論を教えてくれる。
しかし、ただの教養書には終わらない。
非常に良質な、青春小説としても読める。
なぜなら、作者なりの結論は、作者のアメリカでの研究生活に根ざしているからだ。
読者にそこのところを理解してもらうため、大学での研究生活の楽しさ、マンハッタンでの生活のわくわく感などを伝えるべく、研究生時代の回想をずいぶんと織り交ぜている。
これが、アメリカ文化の俯瞰にもなっていて、非常に楽しい。
「生きているとはどういうことか」の歴史もまた、研究生時代の回想と絡んでいる。
筆者の研究していた大学では、歴史上の偉人も研究をしていたためだ。
この本のすごいところは、これだけで終わらないところである。
本は終盤、良質なミステリー小説の様相を見せ始める。
「生きているとはどういうことか」という問題の思想史を追い、生物について発展してきた学問体系を読者に覚えてもらったところで、「現在の研究者たちの興味」に話は移っていくのだ。
「生物の仕組み」についての、重要な仮説。この仮説を検証するための研究レースが始まる。
レースに参加するものは、他の研究者より先に真実にたどり着かなくてはならない。
一番乗りは長く歴史に名を残すが、2番手はまったく忘れ去られる。
ここでも、過去の「研究レース」についての裏話、人間ドラマがちりばめられ、非常に楽しく読むことが出来る。
そして、それらの裏話は、研究レースの熾烈さを読者に追体験させることにもなる。
研究レースって、研究だけすれば良いんじゃないんだ。
どろどろした人間関係、渦巻く陰謀。疑心暗鬼の中で突き進まなくてはならない。
さて、筆者は研究レースに勝てるのか?
はらはらしながら読み進めることになる。…はらはらする教養書なんて、はじめてだ。
最後に、研究レースが終着すれば話は大団円…と思いたいのだが、ここにも大きなどんでん返しがある。
事実は小説より奇なり。フィクションなら「めでたし」になりそうな最後の場面で、もうひと悶着あるのだ。
ここら辺は、詳しく書くと読者の楽しみを奪うことになるので書かない。是非読んでいただきたい。
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