「どうぶつの森+」で、「ワリオの森」を手に入れた。
念のために説明しておくと、ゲームキューブ用ゲーム「どうぶつの森+」では、ゲーム中のアイテムとして「ファミコン」がある。
公式には全部で17種類(実際はもっと)のファミコンがあることになっており、それらはすべて実際に遊べる。そして、そのうち一つが「ワリオの森」だ。
比較的古いタイトルが多くどれも名前くらいは知っていたのだが、ワリオの森は知らなかったため遊んでみたいと思っていた。
しかし、遊んでみたところなぜこのゲームをわざわざ入れたのか良くわからない。
落ち物パズルゲームなのだが、ルールがかなり破綻している。
落ち物パズルは一時期仕事で研究したこともあるので、どこらへんがよくないのか書いておこう。
1994年発売のゲームをいまさら批判しようというつもりも無いし、今後落ち物パズルを作る人も多いとは思えないので参考にもならないと思うが。
まず、落ち物パズルの元祖といえばテトリスである。
このゲーム、落ちてくるブロックの種類は7種類だった。実際には1種類のブロックを4つくっつけた形で、その形が7種類あった。
形を組み合わせ、横1列にブロックを並べるとその列が消える。連鎖要素は無い。
落ちてくるブロックは 90度単位で回転でき、4種類の状態がある。
続いてコラムス。このゲームは6種類の色を3つ縦に組み合わせたものが落ちてきて、同じ色を縦・横・斜めのいずれかに3つ並べて消す。
6種類の色を3つ組み合わせたものが落ちてくるので、テトリスと同じように考えると組み合わせは216種類にもなる。ただし、3つの並びを変更できるので、実質は72種類。
これはブロックの数が多すぎるのだが、「並べて消す」というルールはテトリスよりも柔軟であり、「消すと重力にしたがって上のものが落ち、連鎖する可能性がある」ということもあって、ぎりぎりなんとかなるバランスになっている。
さらに、時々「魔法石(または魔宝石)」というものが出てきて、プレイヤーの好きな色のブロックをすべて消すことができる。このリカバーにより、ゲームは良いバランスで成立するようになっている。
ぷよぷよは、テトリス&コラムスの真似である、と公言していただけあってよく似ている。色が6種類でそれを2つ組み合わせたものが落ちてくる。2つなので、組み合わせた形は1種類だ。
このとき、落ちてくるブロックは36種類となる。
さらにブロックはテトリスのように回すことができ、横に並べた状態で接地するとコラムスのように重力にしたがって切れて落ちる。
これはコラムスよりも状況を把握しやすい。しかも、コラムスと違い「並べる」のではなく、「くっつける」だけで消えるため、結構消すのが簡単になっている。
ただし、簡単すぎてはゲームがつまらなくなるため、消すのに必要な最低ブロック数はコラムスの3個より増えて4つとなっている。これでもゲームとしては簡単すぎるのだが、「対戦」という要素を取り入れ、ランダムに「おじゃま」ブロックを降らせるようにしている。
お邪魔ブロックは消え方のルールが異なり、普通のブロックが消えたときに隣接していると消える、という形になっている。ルールは複雑化しているが、許される範囲だろう。
この3つが落ち物パズルの代表的なものだ。
では、「ワリオの森」を見てみよう。
まずは基本ルールから
・消されるブロックと消すブロックがあり、少なくとも1つ以上の消すブロックを含んで同色を3つ並べると消える
(消すブロックだけ3つでも消えるが、消されるブロック3つでは消えない)
・ブロックを操作するのではなく、フィールド内にいるキャラクターを操作してブロックを並べかえる
・ブロックは一つづつ落ちてくる。落ちてくるのは、6種類の色それぞれの、消すブロック、消されるブロックである。つまり12種類のブロックが落ちてくる。
ただし、フィールド上に無い色は落ちてこないため、ゲーム後半には落ちてくる色が減る。
・消されるブロックをすべて消すと面クリア(消すブロックは残っていても良い。ここらへんはドクターマリオと同じシステムと考えてよい)
というものだ。
さらに細かなルールもあり
・消されるブロックが3つ並んだとき、その線の延長上にある消すブロックは、消されるブロックになってしまう
・5つ以上並べて消したときは、ランダムな色の「動かせないブロック」が出る
動かせないブロックは移動できないが、消すブロックと同じ役割を果たし、何かと3つ並べて消したときには、画面上の同じ色の消されるブロックをすべて消す(消すブロックは消さない)
・消されるブロックには通常の消し方が出来ないものもある
斜めでないと消えないブロック、消えるのではなく別の色に変わるブロック、消そうとすると一定時間の点滅を始め、点滅中にもう一度消して初めて消えるブロックなど
フィールドのキャラクターの基本動作は
・1ブロックづつ左右に移動
・ブロックを早く落とす(これはキャラクターの操作ではないが)
・目の前のものをまとめて持ち上げる
・目の前のものを1つ抜き出して持ち上げる
・持っているものをまとめて置く
・持っているものをひとつだけ置く
・目の前のものを蹴る
となっている。
まとめて上げ下げは A ボタン、1個づつの上げ下げは B ボタンに割り振られている、と考えると、これを見る限りそれほど複雑ではない。
左右に移動するとき、ブロックで壁が作られている場合は壁を登っていく。
ただし、ブロックを持っているときは登ることが出来ない。
登っているとき、途中でボタンを押すと、適当な部分でブロックを持ち上げることができる。この場合、ブロックを持った状態に変化するため壁のぼりは続行できず、キャラクターはブロックを持った状態で下に落ちる。
キャラクターの向きは重要なのだが、移動はブロック単位で行われる。
そのため、移動に先駆けて「方向転換」が行われる。方向転換後もキーが押しつづけられているときだけ、キャラクターは移動を始める。
下を押すとブロックを早く落とすが、下を押しながらA または B を押すと、目の前のブロックをキックする。キックしたとき、向こうに何も無ければブロックは動き出し、段差があるところまで動きつづける。(上がる段差は上れず、落ちる段差は落ちて止まる)
向こう側にブロックがある場合、キックしても何も起こらない。
持ち上げる時の「目の前」とは、キャラクターの向いている向き側の横である。
ただし、横に何も無いときに限り、その一つ下のブロックとなる。
ブロックを置くときは、キャラクターの2ブロック上までの位置にブロックを置ける。
キャラクターは空中にある(落ちている最中の)ブロックでも持ち上げることができる。また、キャラクターがブロックを持って落ちているときは、ブロックは落下中ではなく「固定された」状態とみなされる。
固定した状態というのは、ブロックが並んだかどうかの判定が行われるということである。これを利用すると、一見消すことが出来ない部分のブロックを消すことができる。
さて、長い説明だったが、これがワリオの森の「基本ルール」である。
ここまでは知らないとゲームが遊べない。実は、これ以外にも細かなルールが山ほどある。
ここで、ブロックの種類とキャラクターの操作という2つの要素に分けて話を進める。
まずはブロックの種類だ。
ブロックは、見た目の上では6種類になっている。色が6色だからだ。
しかし、すでに書いたとおり、「消すブロック」と「消されるブロック」にわかれているため、実質は2倍の12種類となる。
さらに、消し方が特殊なものが3つある。面ごとに見ると、特定の色のブロックが特殊な消し方に変化する、という形を取るので落ちてくるブロックは12種類という状況は変わらないが、これによって実際のブロック数は24種類になっている。
これは1ブロックの数としてはあまりにも多い。
しかも、「消す」ブロックが出てこないことには身動きが取れない、という、最後の段階で運に頼らざるを得ない、悪いゲームバランスを作り出している。
実は、「消すブロックと消されるブロック」という作りは、「ばくばくアニマル」(セガ)でも使われていた。
また、作り手は少ない数のブロックのつもりでも、事実上やたらとブロックの数が多いというのは、「登竜門」(これも販売はセガ)がそうだった。このゲームは、ブロックの種類が16、落ちてくるときの組み合わせは256存在する。(2つ一組で落ちてきた)
落ち物パズルは、純粋なパズルではなくアクション要素を含んでいる。
そのため、ゲーム中に存在する「記号」は、必要最低限まで数を減らしておかないと瞬時の判断が出来なくなる。
なにをもってひとまとまりの「記号」と考えるかはゲームの形にもよるが、テトリスなら落ちてくるブロックの形状7種類、コラムスやぷよぷよは単体ブロックの色6種類と考えていいだろう。(魔法石やおじゃまぷよのことを考えて、7種類としても良いかもしれない)
少なく見積もっても 12 種類というワリオの森はバランスを崩している。
今後、もしも(時代遅れの)落ち物パズルを作りたいと思っている人がいるのであれば注意したほうが良いだろう。
つづいてキャラクターの操作について書く。
落ち物パズルで、キャラクターを利用してブロックを組みかえる、というのは目新しいアイディアで、製作者も面白くなると思って作ったのだろう。
しかし、穴だらけ、矛盾だらけのシステムとなっている。
先に書いた基本ルールだけでもすでに穴がある。
「ブロックを持っているときは壁が登れない」
「2ブロック上の位置までブロックが下ろせる」
この2つを組み合わせただけでも、次の結論が出る。
「2ブロック以上の深い穴に、ブロックを持って落ちると動けなくなる」
「目の前のブロックをキックできる」という要素は、おそらくこの状況の回避のために取り入れられたルールだ。しかし、これも問題がある。
「向こうにブロックがあるときはキックできない」のだ。
かくして、ハマリという最悪の状況が発生する。
ちなみに自殺ボタンは無い。はまったら、ブロックが画面全部を覆い尽くしてキャラクターが死んでくれるのをじっと待つしかない。
キャラクターはブロック単位に動くにもかかわらず方向を持っている、というのも問題がある。
方向を間違えると致命的な事態をひき起こすことがままあるのだ。
(これは、キャラクターが「左右の向きがわかりにくい絵を使っている」ということにもよるので、本質的な問題ではないが)
このために方向転換ができるようになっているのだが、実はこれは別の問題を引き起こす。
アクションゲームであるはずなのに、方向転換のためにキャラクターが動き出すのに一瞬の間があるのだ。
他にも問題がある。
キャラクターが「持ち上げる」という形でブロックを移動することに問題がある。
たとえば、キャラクターがブロックを持ち上げようとした結果、持ち上げたブロックの上端が画面の一番上よりも上がってしまうとき、どうなるか?
結論を言えば、キャラクターはブロックを持ち上げることが出来ない。
具体的には、一番上まで積みあがった列をまとめて持ち上げることと、自分が一番上にいるときにブロックを持ち上げることができない。
「持ち上げて移動」が基本操作のゲームなのに、持ち上げられないという事態が発生することが問題である。画面の上端を突き破るという異常事態と持ち上げられないという異常事態を天秤にかけた結果こうなったのだろうが、そもそものシステムが悪かったのだろう。
ワリオの森は、「いろいろな要素を欲張りすぎた」ためにどうしようもない状況に陥っている。
失敗した料理を調味料でごまかそうとしたらもっとひどくなった、という感じだろうか。
もっとも、じゃぁつまらないのかというと、そうではないということも付け加えておく。
さすが任天堂というか、腐っても任天堂というか、無理やりにでもゲームの形に纏め上げて、それなりに遊べるものにはしてある。
しかし、遊べるからこそ、遊んでいる最中にあまりにも多く抱え込んでいる問題に気付きやすいというだけだ。
当時定価で買っていたら激怒したのだろうけど、「どうぶつの森+」のおまけだしなぁ、という感じである。
後日追記
穴に落ちて「はまり」状態になったときは、A+B同時押しで「上にワープ」することが出来ました。
これで、はまりの状態はなくなります。しかしややこしい操作が増えただけで、ルールとしては破綻したままのような気がするのですが…
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