広重が荒井で描いたのは、渡し舟がそろそろ岸に着こうかという風景でした。
いったいこれはどこの風景なのだろう…と歩いていると、船着き場を発見。これが目的の風景かどうかは分からないのですが、とりあえず撮ったのが上の写真です。
問題は、この船着場が江戸時代からあったのかどうか。あったとすれば絵の地点はここで間違いないのでしょうが…
周辺を歩き回ったのですが、東海道の遺構であることを示すようなものはどこにもありません。5分ほど探し、あきらめて進むことにします。
先に進むとすぐ、荒井の関所跡がありました。特に興味は無いのですが、舞阪の脇本陣に続き、せっかくなので見て行くことにします。
しかし、見て行くことにしてよかった。ここで、広重の絵の地点が解りました。
広重の絵の右側、まさに着こうとする岸壁こそが「荒井関所」だったのだそうです。
荒井は関所内に船着き場があり、関所を迂回するルートがありません。そのため、箱根とならぶ重要な関所になっていたようです。
ということで、復元された船着き場から、復元された関所を撮影。なにぶん敷地が狭いので、広重の絵よりも関所に近づき過ぎているのはご愛嬌。
関所のついでに、関所に併設された資料館、さらにすぐ近くにある本陣後も見学します。
こんなに観光旅行するつもりはなかったのに、ここらへんは興味深い遺跡が多いです。
さて、一通り見学もすんで再び出発。時間はすでに13時で、暑くなって来ました。
「アイスが食べたい」と言い続ける妻。そんなとき、ちょうど目の前の小さな商店に「アイス3割り引き」の張り紙が。それだ!
カップアイス2個(147円)を買い、歩きながら食べます。お互いのアイスを味見なんかしたりして歩いていると、ちょうどバス停のベンチにすわっていたおばあさんに「二人でアイス食べて、仲良いなぁ」と冷やかされます。
冷やかされたことはちょっと恥ずかしかったのですが、見ず知らずの人でも声をかけてくる、田舎っぽい空気はほのぼのしていて好きです。
アイスを食べながら歩いていると、一里塚発見。しかし、これを過ぎるとまた、何も無い道が続きます。というか、昼ごはんにしたいのに食べれるようなところもない。
腹を減らせて歩くこと30分。疲れと暑さと空腹で、元気が無くなって無口になっていました。
そんな時、道端になにやら掲示が。どうやら、ここらへんが立場跡になるようです。
ここの立場跡の掲示に、こんなことが書かれていました。
立場では旅人を見ると湯茶をすすめたので、ある殿様が
「立場立場と 水飲め飲めと 鮒や金魚じゃあるまいに」
という戯歌を詠んだという話が残っている。
なんか知らんが、この戯歌の「鮒や金魚」という言い回しが妻と僕の間で大ウケ。この話で少し盛り上がって会話が弾み始めました。
なにか話しながら歩いているほうが、無口で歩くより楽しく歩けます。
戯歌のことから話は広がり、江戸時代の文芸のことなど取り留めの無い話題をしながら歩けば、白須賀宿はすぐそこです。