浜松  2003/7/17 13:20  「舞阪」まで 10.8Km

天龍川越えは今も昔も東海道の難所です。

ここを越えれば、名実ともに東海道の旅も半ば。地名も「中津原」で、ここが中央であることを表しています。


昔の川越船がついたのは、今の橋よりもちょっと下流の辺り。そこまで歩きますが、これがまた交通量が多いのに歩道のない道で大変。旧東海道は神社のすぐわきを通るようですが…神社はあるのに、道がありません。

天龍川後の旧東海道標識交通量が多い狭い道でうろうろするのは怖いのですが、そこらへんを捜し回ると、ありました。草むらに隠れて小さな階段があります。どうやらこれが探していた道。

先に進むと、ちゃんと「旧東海道」の標識がありました。


ここからは、とくになにもなく黙々と歩くのみ…なのですが、ここでちょっとトラブルが。

ちょっと下の話になるので、そういう話が嫌いな人は読み飛ばしてください。


恥ずかしくてこの時点では妻にも言えなかったのですが、どうやら股擦れを起こしたようです。

これは冬には考えていなかったことで、つまり汗で肌がへばり付き易くなって、歩く間に睾丸と股が擦れて擦過傷になっているということ。ジーンズが通気性が悪くて蒸れるのも問題でした。

いや、本当に痛いんですよ…日常生活で30kmも歩くことはないので経験したことはありませんでしたけど。昔の人が「旅は股擦れ 余は情けねぇ」と言うのも分かります。


男性の下着は、大きく分ければブリーフとトランクスがあります。(ふんどしとかビキニってのもありますけど)

考案は両方とも1930年代で、当時はブリーフの方が人気があったようです。

しかし、睾丸が体外にあるのは精子を作る細胞が熱に弱いため。生殖器をしっかり包み込むブリーフでは生殖機能に問題が出る可能性がある、という学説が発表されます。

このことから、今度はトランクスが人気を集めます。トランクスはブリーフほどしっかり包み込むことはせず、睾丸の温度が上昇しないのだそうです。


下着メーカーのグンゼが2000年に行った調査によれば、日本では、成人男性の6割程度がトランクスを使用しているそうです。特に若い世代ではその比率が高いとか。


これは日本だけの現象のようで、海外ではブリーフのほうが人気という話も聞きます。

で、僕も日本人の例に漏れずトランクスを使用していたのですが… 「しっかり包み込まない」ことが問題となって股擦れを起こした訳です。

そこで東海道歩きをする人に忠告。夏場に30km以上歩こうと思ったら、悪いことは言わないからブリーフをはきなさい。今はボクサーブリーフってやつもあるようなので、次回から僕もそうします(^^;

っていうか、30kmも歩く人が珍しいとは思いますが。


閑話休題

16時ごろ、ちょっと調べたい物があるので寄り道します。旧東海道からわずかに…200mくらい外れたところにある、普傅院へ。

探しているのは「ざざんざの松(颯々松)」と呼ばれる松です。事前に調べたところによれば、浜松市内のどこかにはあるようで…

ほとんどの情報ソースが「民家にある」と書いていて、その民家がどこにあるのかは記していませんでした。しかし、一件だけ「普伝院内にある」としている物があり、念のため調べたいのです。


ざざんざの松の前には、その松がざざんざの松であることを記した碑があるんだそうです。境内の松を調べますが、どうもそれらしいものはありません。

もしかしたら「普伝院内」というのは、ここらへん一体を示す地名かも知れません。それらしい松が無いかと周囲を探すのですが、それでも見つかりません。

安間一里塚捜し歩くうち、松は見当たらないのですが、一里塚を発見しました (^^; 金網の向こうの目立たない場所で、しかも曲がって立っている…探してなかったら見落としていたかも。

この一里塚の前で考え込みます。やはり、1件しか無い情報というのは、その情報が間違っていたのか…


周囲にだれか話を聞けそうな人はいないか…と思っていると、農作業帰りらしいおばぁちゃんが、三輪自転車で通りかかります。

「すみません、ちょっとおたずねしたいのですが… ここらへんに、ざざんざの松ってありませんか?」

ざざんざの松、がよく分からなかったようで聞き返されます。もう一度、はっきりと「ざざんざ」と言うと笑われました。「そんな変な名前の松は聞いたこと無いねぇ」とのこと。

残念。時間も無いしあきらめましょう。先に進むことにします。


結局ざざんざの松は見つかりませんでしたが、広重の描いた「浜松」の風景は、このざざんざの松原越しに見える浜松城です。

広重「浜松」現在の「浜松」



昔、ここらへん一体は曳馬の里と呼ばれ、海に面していて松原があったそうです。

ある時室町幕府の六代将軍、足利義教がこの松林で酒宴を開き、浜風にざわめく松の音を聞いて「浜松の音はざざんざ」と謡ったとか。


まぁ、話としては何てことないのですが、これが「浜松」という地名の発祥とされています。広重の絵も、それを意識して描かれているのです。

もちろん、ざざんざの松、というのはここらへん一体の松林につけられていた名前でした。

しかし、現在それらの松は当然枯れています。今の松は、新たに植えられたもの。写真に撮ったのは、そんな街路樹の一本です。


ただし、1本だけ当時の松の「子孫」と分かっているものあがあります。それが現在「ざざんざの松」と呼ばれているのです。


16時30分、コンビニを発見したのでお茶を補給します。

「ただのお茶は、おなかがタプタプするだけで乾きが癒えない」と妻が言うので、スポーツドリンクと麦茶を買いました。


僕は、どうもスポーツドリンクの甘いのが苦手です。とはいえ、スポーツドリンクの方が運動に適しているのも分かるのですが…

そこで、両方買えば何も問題は無いだろう、という作戦(笑) お手軽です。


この後は延々と歩き。もう大きな都市の近くなので、道も非常に分かりやすいし、歩きやすいです。

馬込一里塚17時20分、一里塚を発見します。この数分後には外木戸(宿の入り口に作られた扉)跡を越え、いよいよ浜松に入ります。


なんか遠くに高い建物が見えます。「とりあえず、あの辺りが目的地らしい」 目的地が見えていると、歩いていても気が楽になります。

「しかし… あのビルだけ浮いてるよね」と妻。

それは言ってはいけない (^^; 昔、前回泊めてもらった友人の家に遊びに来た時に、このビルができたばっかりだった覚えがあります。たしか、そのときこのビルは「新名所」だったような。

高いビルがたてば名所になってしまうあたりに、微妙な田舎を感じます。浜松が大都市とはいっても、結局はその程度。


このビルというのは、浜松アクトタワーですね。本当に、これ一本だけが街から突き出ています…


ビルに近づくと、道路舗装のアスファルトが急に変わります。

すでに足が疲れているせいもありますが、歩くと足に痛い。外の場所に比べて、明らかにアスファルトが固いのです。これだと多分、元気な時でも歩いていると疲れるはず。

自動車には固いアスファルトの方がいいでしょう。しかし、広い歩道をとっているのに、その歩道を歩いていて疲れるくらい固くするのはいかがなものでしょう?

高い建物を立てたり、道路を舗装し直したり、都市化をはかっているのはわかるのですが、方向がどうも間違っている気が…


疲れていると愚痴っぽくなります。浜松についたのだから、とっとと宿を探して休みましょう。

今回磐田で泊まる予定だったので磐田の宿は調べて来ましたが、浜松はチェックしていません。


公衆電話を見つけ、タウンページを調べます。

ホテル米久ホテル米久というのが、旧東海道沿いにあって手頃なようです。早速電話して、その場で予約。

宿までさらに歩くこと15分。18時にホテルにつき、この日の旅行はここで終了。



とりあえず、汗が気持ち悪いのでシャワーを浴びて、すぐに鰻屋へ繰り出します。

うなぎ料理 あつみ。浜名湖の鰻をうまく食わせる名店だそうで、鰻好きの人の人気投票でも「おいしい店」の2位に入っていました。


おいしい酒を飲みながら…実は僕、最近「半七捕物帳」読んでいます。

江戸末期を舞台とした、推理時代劇の元祖ですが、このなかで半七がやたらと鰻を食うんですね。

しかも、鰻が出てくるまでの間、酒を飲んで待っている。そういう食べ方に憧れがあって、ぜひやってみたいと思います。


酒を飲みながら待つ…というのは定番(?)な食べ方なのか、この店では一品料理も数多くそろっています。

頼んだのは日本酒に、かぶと焼きと、骨揚げ。それに、鰻重と白重を。


かぶと焼き(食いかけ…)うなぎのかぶと焼きなんていうのは初めて聞いたのですが、非常にうまいです。名前からして頭丸ごとかと思ったけど、頭のすぐうしろ、ひれのあたりを料理しているようです。味付けはタレなので、鰻重にも期待がかかります。


骨揚げ骨揚げも、もちろん美味。うなぎの中骨の唐揚げは「うなボーン」って名前で珍味として市販されてますけど、揚げたてのほうが当然ぱりぱりしています。この歯ごたえが良い料理。味はシンプルに塩味。


鰻重美味しい料理を食べながら、いけすにいるユーモラスな鰻たちを眺めている間に、メインがやってきました。

鰻重は、もちろん美味。どこがどう美味か…って、はっきりしたものはないのですが、仕事がきっちりしているんでしょうね。


白重白重は、たれを付けない白焼きを使った鰻重。山葵醤油をかけて食べるのだそうです。白焼き自体くったことが無いので、これははじめて食べる味で新鮮なおいしさがありました。

料理には、肝吸とデザートのメロンがついています。満腹しました。



食べ終わって、そろそろ帰ろうかと言う時に隣の席についた初老の紳士が、東海道のガイドブックを持っていました。

「東海道歩きですか?」と声を掛けると、東京から20km くらいづつ歩いているのだそうです。こんな所でお仲間に会うとは思いませんでした。

しばし歓談し、その方の頼んだ料理が来た所でお開きとしました。

今回の旅(1日目)のデータ

旅行日時2003/7/17 4:00〜18:00
歩いた時間9時間 (うち、休憩時間1時間くらい)
歩数(万歩計)約42200歩
歩いた距離およそ32km
交通費大船〜掛川 3260円×2
食費朝飯 おにぎり4個 493円
葛餅 525円
おにぎり2個 304円
お菓子(抹茶の里) 300円
ペットボトル茶2本 300円
昼食 冷やしラーメン 1029円
ペットボトル茶等2本 354円
夕食 うなぎ 6930円
宿泊費ホテル米久 12500円
そのほか東海道トランプ 1000円
お賽銭 20円
費用合計17775円

そういえば、浜松の中心部に「ザザシティ」という複合ショッピング施設がありました。この名前は「ざざんざの松」から来ているものでしょう。

ちょうどバーゲン期間中でしたが、その名も「ザザ・ザ・バーゲン」

翌日の話ですが、歩いていて「ダダ第2クリニック」という精神科医を見ました。「ザザザ」とか「ダダダ」とか、浜松はなんか強そうです (^^;

(ページ作成 2003-08-10)

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