腕時計型端末
Apple が腕時計型端末出すそうですよ。発売は来年で、日本での発売は未定。
こんなチャンスでもないと紹介のタイミングが無いので、Ruputer を紹介しておこうと思います。
目次
前史
まず、セイコーにはいくつかの関連会社があります。
紆余曲折も有りすべてを語ると長いのですが…ここでは、1984年を話の起点としましょう。
この時のセイコーグループは時計を作り、販売する服部セイコー、電子部品を作るセイコー電子工業(現在のセイコーインスツルメンツ)、プリンタなどを作る諏訪精工舎(現在のセイコーエプソン…当時も、EPSONブランドを使用)でした。
これ、関連会社だけど別の会社。お行儀よく作業分担なんかしていません。
潰しあうようなこともしないけど、お互いが良いライバル関係。
特に、セイコー電子工業はもともと世界初の「クオーツ時計」を生み出した会社です。
電子部品を作るとは言っても、クオーツ時計も作れば、電子部品を活かしてコンピューター関連商品も作る。
そして、諏訪精工舎だってプリンタだけをやっているわけではなく、コンピューター周辺機器一般も作っていました。
そして、この頃の電卓はどんどん小さくなっており、どこまで小さくできるか、がちょっとした競争でした。
すでに腕時計に組み込んだ電卓は当たり前。次は、腕時計のスペースでどれだけの機能を作れるかの勝負になっています。
セイコー以外では、カシオ計算機が 1984年にゲーム電卓内臓の腕時計を発売しています。
ゲーム電卓は 1980年に発売された電卓で、電卓の8セグ(小数点付数字表示)8桁を使って、デジタルインベーダーと名付けられたゲームを遊ぶことができました。
そして、わずか4年で、同じ機能を腕時計に組み込んできたのです。
しかし、セイコーは一日の長があります。
同じ 1984年、腕時計サイズに「コンピューター」を組み込んだ機械を、セイコー電子工業と諏訪精工舎が相次いで、計3機種も発売するのです。
腕コン
まずは、セイコー電子工業から発売された「腕コン」UC-2000。1月発売。
4bit CPU とメモリを内蔵した腕時計です。
本体の他に別売りのキーボード、キーボード機能も内蔵した「コントローラー」、パソコンと接続する「インターフェイスアダプタ」のいずれかが必要です。
本体は横に10文字、縦に4行の表示が可能で、キーボードで作成、またはパソコンから送信したメモを閲覧できます。
メモの内容は何でもよいわけですが…まぁ、電話帳とかスケジュールとか、そういったものを入力して使うことが想定されていました。
コントローラーを接続した時だけは、腕コン本体は「表示部」になり、コントローラーに内蔵の Z80 でプログラムを動作させることができました。
BASIC もあるので…まぁ、ポケコンだと思うのがただしいでしょう。
コントローラーには、当時のポケコンでは多かったレシートのようなプリンタも内蔵していました。
電卓などの機能もあったそうなのですが、僕自身は当時この機械の存在は知っていてもいじったことは無いため、どのようになっていたのか不明です。
ボタンは4つしかないんだよね。電卓として使うだけでもキーボードが必要だったのではないかな…
「コントローラー」と接続した場合に自由なプログラムを実行することはできますが、コンピューターと呼ぶにはちょっと名前負け。
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冒頭の写真は、こちらの掲示板(ドイツ語)から引用させてもらいました。もっと多くの画像があります。
国内でも、時計屋さんが多くの画像を公開しています。
また、当時のパンフレットをスキャン・保管している人がいました。
腕ターミナル
諏訪精工舎から発売された「腕ターミナル」RC-1000。7月発売。
やはり 4bit CPU とメモリを内蔵した腕時計ですが、表示は12文字2行。
こちらは、パソコンの存在が前提です。「腕ターミナル」にデータを送信し、閲覧できます。
メモ機能は、やはり電話帳などを想定していたようですが、なんでも入れられます。
2行目の部分に特定のフォーマットで「時刻」などを入れることで、指定した時刻にアラームを鳴らすことも出来ました。
このアラーム機能は、日時指定付のものと、曜日指定付の2種類があります。
都市の名前と「時差」を記述することで、特定の都市の時刻を表示できる機能もあります。
しかし、「ターミナル」の名にふさわしく、自由なプログラムを実行する機能はありません。
大型コンピューターが普通で、パソコンなどまだ少なかった時代、大型コンピューターには数台の「ターミナル」が接続されて、複数人数が同時に使うことができました。
詳細は省きますが、ターミナルには計算機能はありません。ただ入力と表示を受け持つだけです。
ここでは、パソコンに接続してデータを送り込み、表示を行う「だけ」の機能を持つもの、として「腕ターミナル」と名付けられているのです。
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冒頭の写真は、腕コンと同じくドイツの掲示板から引用させてもらいました。腕時計好きが集まるところみたい。
腕時計サイズにコンピューター機能を実現する、という難題にどう対処したか、論文として発表されたものがあります。データ構造などわかりやすく解説されています。
リストコンピューター
そして、塩尻工業株式会社によって作られ、諏訪精工舎から発売された「リストコンピューター」RC-20。11月発売。
Z80 互換品と 4bit CPU の2つを搭載。どうも、4bit で事足りるときは Z80 は休ませ、電池寿命を延ばしていたようです。
表示は7文字4行。
ここまでの2機種が「データビュワー」に過ぎなかったのに対し、リストコンピューターは名前の通り「コンピューター」です。
Z80 の機械語でプログラムを組めば、自由に実行させることもできます。
また、4bit CPU だけで時計機能は当然として、メモ・カレンダー・スケジューラー・世界時計・電卓の機能を使えました。
特筆すべきは、画面が「タッチパネル」になっていたことでしょう。画面の表示を直接タッチすることで操作可能でした。
ただ…こうした製品が好きな人は、前に発売された2機種を買ってしまったようですし、自分で Z80 の機械語をプログラムできないと性能が引き出せない、というのもハードルが高い。
つまりは、あまり売れなかったようです。
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冒頭の写真は、こちらのサイト(英語)から引用。
また、当時のパンフレットを保存・公開しているページがありました。