EDVAC,EDSAC & The Baby
目次
ウイリアムス管メモリ
テレビのブラウン管というのは、電子ビームを磁場によってカーブさせ、蛍光面に当てる事で絵を描いています。
テレビならばこのビームを、左上から横方向に、右端まで行ったら少し下がって左へ、という風に、面を被い尽くすように動かします。しかし、なにも磁場をそのように動かさなくてはならない、という決まりはありません。
ここで、この磁場をメモリの持つアドレスに応じて決定するようにすると、アドレスを指定した時に常に同じ点を描く事になります。(図中緑色のコイルがアドレスを決定することになります)
このとき、蛍光面の手前に絶縁シート(図中赤色)を置き、さらに蛍光面との間に、金属の網の様な物を置いてやります。(図中省略。出力は金属網に接続されている形になります)
ビームは電子の流れですから、こうしてやればシートに電価がたまります。電価がたまっているところにさらに電価を与えれば、電価は追いだされて金網に当たります。
金網に当たった電価は、金網に接続された線に電圧を与え、「シートから電価が追いだされた」ことを知る事が出来ます。よって、ビームの強さと当てる時間により、電価を書き込むことも、読み取ることも自由に出来るのです。
(この方法では読み出しによってメモリの内容が破壊されるため、その後で同じ内容を書き込む必要があります。これも、水銀遅延管やABCマシンと同じ考え方です。)
以前は日本語ページもあったのですが、現在無くなったようです。残念
すべては歴史の闇の中へ
3回にわたり、世界で最初のコンピューターを追ってきました。登場したコンピューターは、ENIAC、ABCマシン、EDVAC、EDSAC、そして Baby Mark-I。
さて、どれが本当の「最初」なのでしょうか?
難しい問題です。私は少なくとも ENIACや ABCは最初では無いと考えます。EDVACが発想の面では最初なのですが、稼動したのは EDSAC が最初と言うことになっています。しかし、メモリが少なくて実用で無かったとはいえ、Baby Mark-I はそれよりも早いのです。
結局、コンピューターと言うのは誰かが急にひらめいたものでは無く、同じものをめざしてみんなが少しづつ工夫を積み重ねたものだ、と言うことだけは言えます。
ノイマン型、といわれる現代のコンピューターも、本当はノイマンが作ったわけではないのです。
ノイマン以外の人が個々に着想を思い付き、ノイマンの業績はそれをまとめて数学的な裏づけを行った、と言うことだけなのです。
関連話題
この記事を書いたずっと後で、Wirlwind I コンピューターを知りました。
「現代の」コンピューターの形を最初に備えたマシンです。キーボードも、ディスプレイも、ポインティングデバイスも、RAM(ランダムアクセスメモリ)も、このコンピューターが初搭載するか、初実用化したものです。
最初のコンピューターに興味がある方は、「最初の現代的コンピューター」もぜひお読みください。
参考文献 | |||
誰がどうやってコンピューターを作ったのか? | 星野力 | 1995 | 共立出版 |
トロンへの道程 | NHK取材班 | 1988 | 角川書店 |
ENIAC 世界最初のコンピューター開発秘話 | スコット・マッカートニー著/日暮雅通訳 | 2001 | パーソナルメディア |