DOSを覆い隠せ!

LX シリーズには3つの機種があります。

まず、1989 年発売の、95LX 。つづいて 92 年発売の、100LX。そして 94年発売の 200LX です。

名機と呼ばれる 200LX は、もちろんいきなり完成したものではありませんでした。


今回は LX シリーズが生まれた経緯と、そこでソフトがいかに重要視されていたかの話題です。

目次

LX の生い立ち

200LX の内蔵ソフト

App ManagerFilerDatabaseMemo1-2-3HP CalcPocketQuickencc:MailDataCommLapLink Remote


LX の生い立ち

Hewlett Packard (HP) は、昔から高機能電卓の分野で定評がありました。

独自の「逆ポーランド演算法(Reverse Polish Notation:RPN)」により、科学計算・金融計算などの複雑な計算を必要とする分野では、非常に高い需要を持っていたのです。


逆ポーランド演算とは、簡単に言えば必要な数値を先に入力してしまい、あとから計算の手順を教えるやり方です。

ここで重要なのは、「数値」と「手順」が分離されていることです。HPの電卓では、この手順を登録することもできました。よく使う計算は登録しておいて、気軽に使うことが出来るのです。これが複雑な計算を多用する分野で人気があった理由です。


手順と数値を分離しておき、数値さえ入れれば自動計算できる…

この考え方は、表計算ソフトでも同じでした。表計算ソフトはHPの電卓よりも後に登場したものですが、計算の途中などの情報も見やすく、さまざまな用途に使えるために大人気となります。

そこで、HPでも新しい電卓に表計算機能の搭載を考えるようになります。


表計算と言えば、当時は Lotus 1-2-3 でした。

しかし、Lotus 社は自社の表計算ソフトが十分に普及してしまい、売れ行きが頭うちになっていることに気付いていました。


Lotus 1-2-3 は IBM-PC の上で動くソフトウェアです。つまり、PC を持っていない人に売り込むことは出来ません。

ならばどうすれば良いか? PC が無くても、単体で動く 1-2-3 を作れば良いのです。

つまり、電卓や電子手帳のような、ハードと一体となったソフトウェアです。


Lotus はこのアイディアを、いくつかのハードウェアメーカーに打診したそうです。その中には日本の電子手帳メーカー(名前は明かされていないが、おそらくシャープかカシオ)も入っていたとか。

しかし、最終的には HP と思惑が一致し、HP がハードを、Lotus がソフトを作ることになります。

目指すのは、1-2-3 が簡単に移植出来るマシンで、1-2-3 を中心とした「電子手帳」の環境を作り上げること!


1-2-3 を簡単に移植出来るように、ハードウェアは PC 互換機で MS-DOS を動作させることになりました。

しかし、PC ではなく高級電卓・電子手帳として売るために、安くする必要もあります。乾電池で駆動できるように消費電力を抑える必要もありました。

それらの要件を満たせるように、ハードウェアとしては一昔前の規格であるXT互換機を、手のひらに載るサイズに作成することになります。これはHPの役割でした。


電子手帳のように使ってもらうためには、パソコンの難しいコマンドなどを知らなくても使えるようにする必要があります。

1-2-3 を動かすために MS-DOS が必要とはいっても、売り込みたいのは「PC を使ったことが無い人たち」なのです。

そこで、MS-DOS を「覆い隠して」使いやすくするビジュアルシェル環境を作成することになりました。この環境の作成は、Lotus の役割です。


電子手帳であれば必要に応じて、好きなソフトがすぐに起動する必要があります。これは MS-DOS には出来ないことなので、シェル環境の中で解決する必要があります。

そのためこの環境は単にビジュアルシェルだけでなく、メモリ管理などの API を含む OS となりました。


この「システムマネージャ」と呼ばれる OS の上では、メモ帳や電話帳ソフト、スケジューラ、簡易データベースなどが同時に起動出来ます。

また、通常の MS-DOS のアプリケーションも、システムマネージャの上では一つのタスクとして扱われます。つまり、MS-DOS アプリケーション使用中にそのアプリケーションを終了すること無く、スケジュールを確認したりできるのです。


ただし、MS-DOS アプリケーションの複数起動は出来ません。
 システムマネージャでは、すでに起動中のタスクを起動しようとすると起動済みのタスクに処理が移ります。しかし、MS-DOS が「一つのタスク」として扱われるために、DOS アプリを起動中に別の DOS アプリを起動しようとすると、すでに起動済みのDOSタスクに処理が移るだけです。

このように、小さな XT マシンと電子手帳的なソフトウェア、そしてその上で動く強力なアプリケーションによって、1989 年に 95LX は発売されます。95LX は、実際には画面周りの問題で XT 互換機ではありませんでした。

その後、92年発売の100LXでは「本当のXT 互換機」となり、94年発売の200LXでは、ハードウェアの洗練と内蔵ソフトの一部見直しが行われます。

100LXと200LXは、基本的にはそれほど変わっていません。それでも200LXだけが「名機」と呼ばれるのは、その精練度の違いなのです。


200LX の内蔵ソフト

実は筆者はLXシリーズを200LX以外使ったことがないので、200LXの内蔵ソフトしか紹介出来ません。

いや、200LX に限っても、数が多すぎて紹介出来ないのです。ここでは一部のアプリケーションの紹介に留めさせてもらいます。

App Manager

App Manager

いわゆるラウンチャです。200LX の標準状態では、この画面が作業の中心となります。

内蔵ソフトは専用のアプリケーションキーで呼び出すことも出来ますが、この画面からアイコンを選んで呼び出すことも出来ます。

もちろん、新たなアプリケーションの登録などもできます。というか、インストールしたソフトは、ここに登録しないと起動できません (^^;;


登録時には必ず、起動キーを割り当てる。しかし、使用できる起動キーには限りがあり、当然登録数にも限りがある。  これでは不便なので、ここに登録しなくても起動できるようにするソフトや、App Manager そのものの代替ソフトなどが開発され、フリーソフトとして配布されていた。

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(ページ作成 2003-02-01)

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